北朝鮮の事実上の長距離弾道ミサイル発射で、米軍当局者は12日、打ち上げられた「人工衛星」とみられる物体が、地球上の軌道を周回しているとの認識を明らかにした。ただ衛星の詳しい高度や速度は「コメントできない」とした。
衛星を周回軌道に乗せることに成功したとすれば、ミサイルの射程が約1万キロ(韓国国防相)で米西海岸に到達する恐れがあることと合わせ、米国にとって安全保障上の重大な脅威となる。北朝鮮は人工衛星「光明星3号」の打ち上げが完全に成功し「極軌道を周回している」と発表しており、米軍が追認した形だ。
米軍は今後、戦略核兵器や偵察衛星の運用などを担う「戦略軍」(ネブラスカ州)が衛星の監視などを続ける。
米国の北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は、北朝鮮が12日午前に発射した「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルの搭載物が衛星軌道に到達したようだと発表した。事実ならば「米本土」を射程に入れるミサイル開発の可能性が出てくるなど一段と脅威は強まる。国連安全保障理事会は12日、北朝鮮ミサイル問題を協議するための緊急会合を開いた。日米韓は北朝鮮を強く非難、金融制裁の強化などを探り新たな決議採択をめざす。
北朝鮮は東倉里(トンチャンリ、北西部)の西海衛星発射場からミサイルを発射した後、官製メディアを通じて内外に向けて「衛星は予定の軌道に進入した」と成功をアピールした。
北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を繰り返し射程を延伸してきた。1998年の「テポドン1号」は日本列島を越えて約1600キロメートル飛行し太平洋に落下。2006年の「テポドン2号」は失敗したが、09年の「テポドン2号」改良型は3千キロ以上飛んだと見られる。
今年4月はさらに改良を加えて発射したが直後に落下していた。今回は、過去に蓄積したデータにイランなどとの技術協力なども踏まえて修正を進めたもようだ。
韓国の金寛鎮(キム・グァンジン)国防相は12日の国会答弁で、今回のミサイルについて「射程1万キロメートルと見られる長距離ミサイルの発射であることは間違いない」と言明。北朝鮮が米本土を直接攻撃できる能力を持つ兵器の開発をめざしているとの見方を示した。
6千キロとされるテポドン2号改良型の射程は米アラスカが入る。射程1万キロを超えれば米本土の一部も含まれる。ただ、金国防相は「核を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発したとは見ていない」とも指摘。ICBM搭載に不可欠な核弾頭の小型化などに至っていないとの見方を示した。
米ホワイトハウスは11日、「国連安保理決議への明確な違反で、地域の安全を脅かす極めて挑発的な行為」と非難する声明を発表。北朝鮮の長距離弾道ミサイルは米本土を射程に入れるICBMに直ちに結びつくわけではないが、安全保障上の脅威が高まったのは確実だ。
玄葉光一郎外相は12日、韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交通商相と電話で協議した。双方は「国連安保理の対応を含め、断固とした行動をとることが重要だ」との認識を共有。日米韓が緊密に連絡を取り合い、中ロを含む関係各国の協力を確保するために共に努力することで一致した。
玄葉外相は同日、英国のヘイグ外相、フランスのファビウス外相とも相次ぎ電話で協議し、北朝鮮への断固とした措置に向けて協調することを確認した。
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韓国の金国防相は「核を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発したとは見ていない」と指摘している。北朝鮮の長距離弾道ミサイルは米本土を射程に入れるICBMに直ちに結びつくわけではないが、安全保障上の脅威が高まったのは確実だ。とはいえ、ポンッと打ち上げて落とすという点で北朝鮮の長距離弾道ミサイルは「野球の始球式のボール」のようなものだろう。始球式ではキャッチャーミットまで届くだけで歓声があがる。バシッとミットを鳴らす豪速球ではないので、北朝鮮の脅威をアメリカは言われるほど感じてはいないだろう。