グランプリファイナルが始まりました。公式練習で選手から大不評を買った「融けるリンク」 氷の温度を下げることで硬さが生まれて改善され、無事に開催にこぎつけた。
女子ショートプログラム(SP)は、2選手を除き非常に質の高い演技の競演だった。浅田真央選手がトップ、2位にアシュリー・ワグナー選手、3位には鈴木明子選手、4位にキーラ・コルピ選手が入ったが、真央選手とアシュリーの差は約0.5、明子選手は約2点、コルピ選手約3.5という僅差で非常に面白い展開とになった。
フリーの出来が順位を決めることになる。
フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが7日(日本時間同日)、ロシアのソチで開幕した。GPファイナルには、シリーズ全6戦の上位6人が出場。2014年ソチ五輪の会場を舞台に優勝を争う。
女子シングルのショートプログラムでは、浅田真央(中京大)が66.96点で首位、鈴木明子(邦和スポーツランド)が65.00点で3位に入り、日本勢が好スタートを切った。2位はアシュリー・ワグナー(米国)で66.44点。
首位発進の浅田は最初のダブルアクセル、続く3回転フリップ−2回転ループを着氷。後半に入れた3回転ループも着氷し得点を重ねた。ステップシークエンスでは9人のジャッジの内、5人が評価3を付けるなど高評価を得た。
鈴木も3位と好スタート。最初のジャンプ、トゥーループでの3回転−3回転に着氷し9.20と高得点を得ると、続く3回転フリップも着氷。後半に入れたダブルアクセルも着氷し、首位浅田と2点差以内の位置に付けた。
以下は全順位。
1:浅田真央(日本)66.96
2:アシュリー・ワグナー(米国)66.44
3:鈴木明子(日本)65.00
4:キーラ・コルピ(フィンランド)63.42
5:エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)56.61
6:クリスティーナ・ガオ(米国)48.56
◇手堅く滑れた
アシュリー・ワグナー いつも百パーセントの自信で臨んでいる。3回転−3回転(ジャンプ)はないが、いい評価を得られると思っていたし、ミスのない手堅い滑りができた。
◇やるべきことできた
浅田真央 きょうは自分のやるべき要素がしっかりできた。あすのフリーも気持ちを抜かず、きょうみたいに滑ることが目標。(五輪会場での大会だが)今はファイナルに集中している。
◇攻めていこうと思った
鈴木明子 SPで全部ジャンプが成功してよかった。きょうはとにかく攻めていこうと思った。自分らしい演技ができてよかった。
滑る楽しさを、力強さに変えた演技で、浅田がSPでトップにつけた。大会前に痛めた腰の影響が懸念されたが、「今日は自分がやるべきエレメンツ(演技要素)がしっかりとできた」という言葉通り、ミスのない演技を見せた。
今季のこれまでの試合と同じく、看板のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を回避した構成で臨んだ。ダブルアクセル、3回転フリップ−2回転ループ、3回転ループの三つのジャンプはいずれも成功。腰をいたわって練習では積極的に取り組まなかったスピンも、三つとも最高のレベル4評価を得た。
11月の中国杯ではジャンプの回転不足が散見されたため、佐藤信夫コーチと「反動をあまり付けないジャンプ」に取り組んだ。真価が問われるのはジャンプが多いフリーだが、浅田は「キリッとしたジャンプが跳べている」と自信を深める。
「アイ・ガット・リズム」に乗せた今季の明るいSPは、振付師のローリー・ニコル氏が「浅田がいつもリンクに来て楽しく滑れるように」と願いを込めてつくったという。母の急逝という悲しい出来事により、出場がかなわなかった昨年のGPファイナルから1年。滑る喜びを取り戻した浅田が、4季ぶりのGP女王を狙う。
素晴らしい演技でした。ジャンプがすごく高く軽くなりましたし、全ての要素で減点ゼロ、スピン・ステップは全てレベル4。ステップは1.80という高い出来栄え(GOE)加点を得て、さらに9人のジャッジのうち5人がGOEで最高の+3をつけるという高い評価を得ました(残りの4人も+2をつけています)。
トップは浅田真央選手 Mao Asada 2012 GPF SP -I Got Rythm
浅田選手は試合前に「グランプリシリーズ(GPS)2戦で良い演技ができていたので今回も、と思ったけど、その気持ちが空回りしないように心がけた」と話していたが、その通りの演技ができたと思う。フリーは「NHK杯でのジャンプが2回転になるなどのミスを繰り返したくない」と強調していたが、これもその強い気持ちが空回りしたり、考えすぎて硬くなったりしないように、今日と同じ気持ちで思い切り演技してほしいと思う。
マスコミや連盟は4年ぶりの優勝をなどと煽り立てていますが、今の真央選手はまだ自分を組み立て直している途中です。順位よりも、今彼女が求める演技ができること、設定した目標をクリアし、真央選手本人が笑顔で終われる演技であってほしい。
2位 アシュリー・ワグナー選手 Ashley Wagner 2012 GPF SP -Red Violin
アシュリー・ワグナー いつも百パーセントの自信で臨んでいる。3回転−3回転(ジャンプ)はないが、いい評価を得られると思っていたし、ミスのない手堅い滑りができた。
浅田と鈴木の間に割って入ってSP2位となったのが、米国のワグナー。「いい位置でフリーを迎えられる」と満足した。「百パーセントの自信を持って臨めるように」と3回転の連続ジャンプは構成から外しているが、浅田と同様に減点のない演技につなげた。今季GPは2連勝。フリーと合計では今季最高をマークしている。「フリーでミスのない演技をした者が表彰台の中央に立てる」とファイナル初優勝に意欲を見せた。
ワグナー選手の安定感はさすがという感じ。ただ、今季GPは2連勝ということで、優勝を狙える位置ということで、ちょっと硬さがあった。シーズンで見られた絶対的な自信をみなぎらせたオーラが少し弱く、少し大事に行ってるような感じだった。それでも堂々たる演技だった。
コンビネーションジャンプは3トウループのコンボ(3T-3T)ではなく、3フリップ−2トウループ(3F-2T)にしてきた。3-3から3-2にはなりましたがトウループとフリップでは難易度はフリップの方が上ですし、2Tは両手を上げたリッポンスタイルで、確実に加点を狙っている。真央選手と0.5も点差、今の強いアシュリーを貫ければ、充分タイトルを手にできる状況です。
3位 鈴木明子選手 Akiko Suzuki 2012 GPF SP -Kill Bill
滑り出しから体の切れやスピードがあり、気迫に満ちていた。はじめの3T-3Tを決め、今シーズン、エッジエラーを取られていた3ルッツ(3Lz)から3Fに変更した単独ジャンプもきれいに決めた。これはいけると思ったら、そのあとのスピンがよれてしまい、レベルを落としてしまった。明子選手も回りながらちょっと笑っていました。でも表情が緩んだのはその一瞬だけで、その後はすぐにまた鋭い眼光に戻り、しっかりと演技をまとめた。
4位 キーラ・コルピ選手 Kiira Korpi 2012 GPF SP -The Girl With Flaxen Hair
ソチの軟らかめの氷にちょっと戸惑いを感じたのか、ジャンプは少し跳びにくそうに見えた。着氷で氷をつかむ感じに少し硬さがあり、あまりきれいなランディングではなかった。でもジャンプ自体は全て降り、大きなミスはなかった。音楽をよく感じ、プログラムに入り込んで見ることが出来た。
5位 エリザヴェータ・トゥクタミシェワ選手 Elizaveta Tuktamysheva 2012 GPF SP -Adios Nonino
怖いものなしだった昨季と一変した困難なシーズンを送っているのがトゥクタミシェワ選手。現在、怪我や体調不良とも戦っている。練習もおそらく思うようにできていないこともあるのか、SPを昨季のもの「アディオス・ノニーノに戻し、荒川さんの解説によればステップも少し難易度を落としているらしい。今は焦らないことが一番大切だろう。2週間後にはロシアンナショナルも控えている。今出来ることを出し切ることを積み重ねて、また万全の状態で滑る彼女を待ちたい。
6位 クリスティーナ・ガオ選手 Christina Gao 2012 GPF SP -Libertango
はじめの3T-3Tで転倒してしまい、そこから元気がなくなった。負傷欠場となったユリア・リプニツカヤ選手のピンチヒッターとして急遽出場が決まったこともあり、準備は大変だったろう。でも学業とスケートを両立することを決めたガッツのある選手だから、あきらめずにフリーでは素晴らしい演技を見せてくれると期待している
今回ちょっと目に付いたのは、上体の動きが硬いことだった。腕をしなやかに動かして滑っていても、胴体は揺るぎなくまっすぐ固まっていて腕だけが動いているような感じで、せっかくの腕の動きが上半身とリンクしていない。また、上下の動きも乏しい、突っ立って滑っているように見える。彼女は長身でて足が長く、スピンなどはとても美しくて演技に見栄えがするので、これはもったいない。もっと上半身を柔軟に動かしながら滑り、振付をこなせるようになると、格段に演技の印象が変わるはずだ。
フリーはかなりの激戦になりそうだ。SPはとてもレベルの高い戦いになったが、フリーでもそれを期待したい。