Quantcast
Channel: Boo-HeeのHoppingブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2229

死因・身元調査法、死因究明推進法が成立‐犯罪死を見逃さない

$
0
0

■社説:犯罪死見逃し 法整備機に抜本策を(毎日新聞 2012年08月22日) 

 犯罪死を見逃さないために、死因究明に対する警察の責任を明確にし、遺族の承諾なしに遺体を解剖できる権限を与える。また、死因究明施設の全国整備などを閣僚も入った推進会議で検討する−−。

 そういった内容を柱とする二つの新法(死因・身元調査法、死因究明推進法)が今国会で成立した。背景には、解剖や薬物検査が不十分だったため、死因が誤って判断され、後に殺人などとされた事例が相次いだことがある。警察庁によると、98年以降で45件に上る。

 大相撲時津風部屋で07年、当時17歳の力士が暴行され死亡した事件で警察は当初、遺体を解剖せず病死と判断した。さいたま地裁の裁判員裁判で木嶋佳苗被告が死刑判決を受けた首都圏連続不審死事件でも、被害者の男性1人を警察は自殺と判断し解剖しなかった。

 犯罪の認知は、容疑者特定の第一歩だ。捜査のレールにさえ乗らない犯罪の見逃しは、死者の人権擁護の観点からも避けねばならない。法制化を機に、制度の抜本改革に向けた取り組みを進めたい。

 なぜ、犯罪死を見落とすのか。死因調査に詳しい専門家が事件発生時に十分関与できていないためだ。

 遺体を見て事件性を判断する警察の検視官が昨年、現場に立ち会った割合は約36%だ。検視官の増員でここ数年上昇傾向だが、警察が目標とする50%には届かない。

 さらに深刻なのが、突っ込んだ死因究明に欠かせない解剖率の低さだ。警察が扱う死因不明の遺体は年間17万体以上に及ぶ。だが、実際に解剖まで行われるのは2万体に満たず、解剖率は約11%だ。40〜90%のヨーロッパ諸国より格段に低い。

 また、解剖の実施数に地域間格差があり、監察医制度のある東京など一部大都市に大きく偏っているのも問題だ。監察医制度は感染症予防などを目的に戦後できた。警察の要請で遺族の承諾なしに変死体の解剖ができる。犯罪死見逃しの8割以上が、監察医のいない地域で起きており、一定のチェック機能を果たす。

 今回の立法により、監察医のいない地域でも警察署長の判断で解剖ができるようになった。ただし、抜本的な解決には程遠い。解剖の担い手となる大学医学部の法医学者が絶対的に少ないのだ。

 年間数十〜100体を超える解剖を1人の解剖医がこなしている県も少なくない。法解剖医の育成や待遇の改善など財政面での支援を含めた対策がなければ、解剖医の負担増を招くだけだ。推進法によって内閣府に設置される推進会議で、死因究明の将来像をしっかり議論し、体制の足場作りをしてもらいたい。

==========

死因・身元調査法第四条
2 警察署長は、前項の規定による報告又は死体に関する法令に基づく届出に係る死体(犯罪行為により死亡したと認められる死体又は変死体(変死者又は変死の疑いがある死体をいう。次条第三項において同じ。)を除く。次項において同じ。)について、その死因及び身元を明らかにするため、外表の調査、死体の発見された場所の調査、関係者に対する質問等の必要な調査をしなければならない。
3 警察署長は、前項の規定による調査を実施するに当たっては、医師又は歯科医師に対し、立会い、死体の歯牙の調査その他必要な協力を求めることができる。

 これには次のような懸念を表明する人もいる。

『推進法では、診療関連死の扱い方は別途検討である。しかし、検討中である段階では、警察に異状死として届け出られたものについては、これまでどおり警察が取り扱う。しかし、死因・身元調査法の運営次第では、警察の対応方法が変わる可能性がある。これまで、診療関連死は、異状死として届出られた場合、多くは刑事訴訟法の手続きに乗せられ、裁判所の礼状をとって、司法解剖されてきた。しかし、新法施行後は、明らかな過誤事例は別として、刑事訴訟法の手続きに乗らず、死因を明らかにすることだけを目的に新解剖に付されるものも出てくる可能性がある。臨床医にとっても、犯罪として捜査されるわけではないので、これまでの司法解剖よりはましに感じるだろう。ただ、警察に調べられることはどうしても嫌ということであれば、それも避けたいところかもしれない。そうであるとすると、診療関連死の検討も急ぐべきだが、果たして短期間で結論に達するかといえば、難しいような予感もする。』




























Viewing all articles
Browse latest Browse all 2229

Trending Articles