オウム真理教の後継団体「アレフ」が6月中旬ごろ、教団の教義や修行方法を記した書籍を出版したことが14日、公安関係者への取材で分かった。松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、57)の著作を引用するなど、「麻原回帰」が鮮明な内容。インターネットで一般向けに販売しており、公安当局は「勧誘活動を本格化している」と警戒を強めている。
発行された書籍は「実践・チャクラとクンダリニー 覚醒・解脱へ導くヨーガの奥儀」。関係者によると、教団関連書籍の出版は、元オウム幹部でアレフから分裂した「ひかりの輪」の代表を務める上祐史浩氏(49)が、分裂前の2003年に出版した「心の解放と神秘の世界」以来9年ぶりという。
出版元は埼玉県八潮市の有限会社。公安調査庁によると、会社の登記上の役員は同庁が把握しているアレフの出家信者で、移転前の所在地も教団の関係先だったという。著者はペンネームとみられる。
書籍は、アレフでの修行で神秘体験を得られたとする体験談を紹介し、「グル」「イニシエーション」「解脱」といった用語を使って修行方法を説明する内容。
後半部分では、松本死刑囚の著作「生死を超える」や1986年末に開いた「丹沢セミナー」での同死刑囚の発言内容を約60ページにわたり引用している。
巻末にはアレフの各地の道場の所在地や連絡先、入会申し込みの資料請求方法なども記載している。
公安調査庁は今回の書籍出版の狙いについて「本を買った人にオルグ(勧誘)をかける活動の一環」とみる。
同庁によると、アレフの信者数はここ数年約1300人とほぼ横ばいだが、埼玉県蓮田市内の中古ビルに新たな拠点を設ける計画を進めるなど、教団の勢力を拡大しようとする動きが目立つという。
地下鉄サリン事件など一連のオウム関連事件の捜査にあたった警視庁の幹部は「アレフは松本死刑囚への信仰を捨てていない。再び過激な行動を繰り返す恐れもある」と警戒する。