東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた沿岸部の住民が内陸に集団移転するための土地の造成工事が、宮城県岩沼市で始まりました。復興庁によると、岩手、宮城、福島の3県では初めて。近く土地の造成工事に着手し、2013年11月に宅地を供給する。
造成工事が始まったのは、岩沼市などによると、岩沼市の海岸から3キロほど内陸に入った玉浦西地区で広さ約20ヘクタール。総事業費は約108億円で、農地を転用して348戸が移転する。災害公営住宅156戸も建設し、14年4月の入居を目指す。
この場所には津波で甚大な被害を受けた沿岸部からおよそ350世帯が集団移転する計画で、5日は、工事の安全を願って起工式が行われました。
起工式では平野復興大臣が「ことしは住宅再建などを重点的に進めたい。工事の開始は復興への希望にもなる。(住民には)移転はつらい決断だったと思うが、被災地全体に復興の希望を示した」などとあいさつしました。また住民の代表として中学3年猪股祐那さん(14)は「地域で何事も助け合ってきたことを引き継ぎたい」とあいさつ。集団移転せず市外に暮らす人に「私たちは固い絆で結ばれています」とメッセージを送った。
この地域は震災の津波で数十センチ浸水したため、地盤を2メートルほどかさ上げするなど来年7月までに造成工事を行ったうえで、再来年3月までに住民の移転を開始したいとしています。
集団移転を巡っては、住民の意見集約や土地の取得などに時間がかかることが多く、被災地の自治体で造成工事が始まるのは岩沼市が初めてです。
岩沼市の井口経明市長は、「第一歩は、うれしく思うが、移転にはさらに1年以上がかかる。1日も早い移転の実現のために一歩一歩進めていきたい」と話していました。