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ギリシャ再選挙で緊縮派が過半数 議会再選挙 ユーロ上昇は本当か

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 ギリシャで2012年6月17日に行われた再選挙は、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)による金融支援を受けることによる緊縮財政の継続を訴える新民主主義党(ND)が、緊縮策反対を主張していた急進左派連合を得票数で上回り、第1党となった。

 NDの勝利により、懸念されたギリシャのユーロ圏離脱は回避されるとみられる。しかしNDも議席の過半数には届いておらず、今後は連立政権を組むため他党と交渉していくことになる。



 欧州債務危機の端緒となったギリシャで17日、緊縮財政策の是非を問う議会選の再選挙が投開票された。旧与党で緊縮策を進めた新民主主義党(ND)は第1党となり、同じ旧与党の第3党との合計議席が議会定数の過半を占めることが確実になった。同国のユーロ離脱の危機はひとまず遠のいたが、国内の反緊縮感情は根強く混乱の芽は残る。欧州連合(EU)は調査団を派遣し、ギリシャと支援の要件緩和も視野に再交渉する構えだ。

 開票作業がほぼ終了した段階での内務省の獲得議席予想は、議会定数300のうちNDが129議席(得票率29.7%)。終盤まで第1党を競った反緊縮派の急先鋒(せんぽう)急進左派連合は71議席(同26.9%)にとどまった。不況の直撃を受けた都市部や失業率5割に達する若者の票を集め、NDとの得票率差は3ポイント程度だった。ただ比例代表制をとるギリシャ議会選は第1党に50議席が上積みされるため、獲得議席は差がついた。

 NDと共に緊縮策に携わった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)は33議席(同12.3%)で第3党。選挙後の政権は議会の過半を占めるND、PASOK両党を軸にした連立政権になる見通しだ。急進左派が政権を握ればユーロ離脱につながりかねないとの主張が地方や高齢者に浸透した結果とみられる。

 NDのサマラス党首は同日夜、アテネ市内で勝利宣言。「ギリシャ人は欧州とユーロ圏にとどまることを選んだ」と述べ、EUなどが緊縮策推進を支援の前提と位置付ける中で反緊縮派の勢力が政権をとり、ユーロ離脱を迫られる展開への懸念は後退したと強調した。急進左派のツィプラス党首は同日夜、サマラス氏に電話し敗北を認めた。

 パプリアス大統領は18日、サマラス氏に組閣を要請する見通し。これに先立ち、サマラス氏は17日夜の大勢判明後「救国内閣」の設立を目指す方針を表明した。

 NDはPASOKに加え、穏健な反緊縮派で17議席を獲得する「民主左派」やND造反議員で構成し、20議席を確保する「独立ギリシャ人」の取り込みを探る可能性もある。国内の大規模デモなどを抑えて緊縮策を進められる「安定政権」樹立には「170議席が必要」(地元紙記者)とも指摘されるためで、政権の安定度は中小政党をどこまで取り込めるかがカギを握る。

 PASOKのベニゼロス党首は急進左派も救国内閣に参加すべきだとの立場を示したが、同党のツィプラス氏は17日、野党として緊縮財政への反対を続けていく方針を打ち出した。PASOKが他党の参加にこだわり続ければ再び連立協議が難航する恐れもある。


 ギリシャ議会選の財政再建派勝利を受け、EUは新政権と再交渉に入る方針だ。ギリシャ側が徹底した構造改革を続けることを公約すれば、財政赤字の削減目標の達成時期を先送りするなどの条件緩和も視野に入れる。EUは6月中にも、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)と共同でアテネに調査団を派遣するとみられる。

 公共放送ZDFに出演したウェスターウェレ独外相が17日「(緊縮策の)時間軸については再考の余地がある」と語った。バローゾ欧州委員長とファンロンパイEU大統領は共同声明で「支援する準備がある」と表明。IMFも「対話の用意がある」とコメントした。




 6月17日の日曜日に行われたギリシャの2回目の議会選挙の結果は、サマラス氏率いる新民主主義党(ND)が第1党となり、前回に続き第3党となったベニゼロス氏率いる全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と合わせると過半数を握り、何とか政権が樹立できそうな情勢となった。

 5月6日に行われた第1回目の選挙では、ギリシャ国民は長年にわたる積もり積もった不満を爆発させたが、その後再選挙に至るまでの1ヶ月強の間に、現実的な決断を下さなければユーロ圏に残留できないかもしれないとの危機感により、投票行動を変えたということだろう。

 ギリシャは第2次世界大戦中にナチス・ドイツに侵攻され、1941−44年までナチス・ドイツ、イタリア、ブルガリアの3国により分割占領された。その後、内戦となり多くのギリシャ人が犠牲となった後、1967年4月にはクーデターにより軍事政権が誕生、ほんの38年前の1974年まで軍事政権は続いた。やや飛躍した解釈かもしれないが、比較的近い過去に「辛い歴史」を持つギリシャ人の危機回避本能がうまく働いたということなのだろうか。

 もっとも、ギリシャも、これで磐石とはいくまい。そもそも、欧州周辺国の国債市場の混乱は、2009年10月のギリシャ議会選挙で政権交代が実現し、パパンドレウ新政権(PASOK)が旧政権(ND)による財政赤字の隠蔽を明らかにしたところから始まっている。

 しかも、今回再び政権を握ることになったのは、そのNDだ。加えて、2009年10月の選挙で躍進したPASOKの得票率は、前回5月並みに止まり、ツィプラス氏が率いる反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)の得票率は、前々回に比べて大幅に伸びた前回5月の得票率に比べてもさらに伸びている。ギリシャの世論は、決して緊縮財政に対して賛成一色になったわけではない。

 新政権下で速やかに欧州連合(EU)および国際通貨基金(IMF)と今後の緊縮財政策の実行について交渉を進めなければ、ギリシャは7月中旬頃に資金繰りが尽きてしまうと見られている。選挙結果により、市場はいったん安心感を取り戻すかもしれないが、問題が解決したというよりは、取り返しのつかない事態に悪化するリスクを当面回避できたと言ったほうが良いだろう。

 また、ユーロ圏の問題の中心は、ギリシャではなく、すでにスペインに移っている。当然のことながら、ギリシャ選挙でNDが勝利したからといってスペイン問題に好影響を与えるわけではない。スペインが抱える問題は国内の金融機関の不良債権問題であり、これに政府が対処しようにも公的資金で対応する余裕がなくなってきている。

 スペインの10年国債利回りはすでに7%台まで上昇しており、さらに金利が上昇するようだとスペインまでもが市場で国債を発行することができなくなる可能性さえある。6月9日にユーログループの財務相は緊急会合を開き、スペインの銀行に対する支援策で合意したが、スペイン国債金利は逆に上昇基調を強めた。ギリシャもユーロ圏17カ国の中で経済規模が8番目に大きい国(GDPシェア=2.3%)だが、スペインは4番目に大きい国(同=11.4%)である。スペインが資金繰りに支障をきたすようになると、これまでのギリシャやアイルランド、ポルトガルのような対応では支えきれなくなる可能性が高い。

 このように、欧州情勢は解決には程遠い状況にある。だが、その一方で、為替市場ではしばらくユーロが買い戻される流れが続く可能性が高いのではないかと筆者は見ている。

 第一に、短期的な投機筋のユーロ・ショート・ポジションが積み上がっている可能性がある。シカゴIMM先物市場のデータによれば、同市場を通じた投機的なユーロ・ショート・ポジションは、過去最高の240億ユーロ(2.4兆円)に達している。長期的な投資を行う機関投資家がユーロ圏から逃げ出していることも間違いなくユーロ売りの一つの要因だが、一方で短期的なポジションが240億ユーロも積み上がっていることも事実である。

 恐らく市場参加者のほぼ全員がユーロ圏の問題は何ら解決していないと考えているだろうが、いったん利益を確定するためにユーロを買い戻す先が徐々に増え始めたら、ユーロは徐々に上昇を始め、それが結果的に大規模なユーロ・ショートの巻き戻しを誘発する可能性は十分にある。

 第二に、他の市場でも4―5月に発生した「リスクオフ」の流れを巻き戻す動きが見られ始めている。たとえば、4月初めのピークから2ヶ月で11%下落した米S&P500株価指数は先週金曜日に1ヶ月ぶりの高値を付けるところまで反発してきている。急激に低下を続け、一時は日本の10年国債利回りまであと34ベーシスポイント(bp)程度まで迫った独10年債利回りは、過去2週間で30bpほど反発している。つまり、リスク性資産から流出し、周辺国からドイツに向かっていた資金が、逆流を始めている兆しがある。ユーロから逃げてきた資金の一部が多少の逆流の動きを見せる可能性は十分にあるだろう。

 第三に、米ドル安がユーロを押し上げる可能性がある。JPモルガンは、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)でオペレーション・ツイストの延長と、超低金利政策が正当化される期間が2014年後半から2015年に延長されると予想している。こうした米連邦準備理事会(FRB)による追加緩和策を受けて、米ドルが軟調に推移する可能性がある。

 米ドル安がユーロ/ドルを押し上げれば、ユーロ・ショート・ポジションの手仕舞いが余儀なくされる可能性もある。ユーロ/ドル相場がポジションの巻き戻しで比較的大きく上昇する一方、ドル/円相場のドル安進行度合いは緩やかになると考えられることから、結果的にユーロ/円が押し上げられることになろう。

 ちなみに、今週はイベントが盛りだくさんである。19日までメキシコでG20サミットが行われ、20日にはFOMCの声明発表とバーナンキFRB議長の記者会見がある。21日にはユーロ圏財務相会合とスペイン国債入札、22日にはEU財務相会合、独仏伊西首脳会合が予定されている。欧州問題に前向きな動きや見通しが出たり、米国金利が低下するようなことがあれば、ユーロの買戻しが続く。今週は、そのきっかけとなりそうなイベントも多いのである。

























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