■どの町に住むかで100万円の差 行政サービス徹底活用
第30回 ファイナンシャルプランナー・花輪陽子
これからマイホーム購入や子育てを考えている人は、住む町を選ぶときに、行政サービスもチェックするという視点をもちたいものです。なぜなら、自治体によって待機児童数や水道代、図書館数や蔵書数、子育てや住宅取得の助成などが大きく異なるからです。
例えば、東京23区を見ると、千代田区や江戸川区などには子育て関係の助成制度がたくさんあります。千代田区に在住する場合、届け出をすることにより「次世代育成手当」を受けることができ、高校3年の間、子ども1人につき月5000円の支給があります。所得制限はありません。国の制度の児童手当は中学3年生までなので、その後の教育費の補助になります。また、千代田区には高校3年生まで医療費を助成する「高校生等医療費助成制度」もあります。医療費の助成は中学3年生までという区が多く、千代田区は際立っています。
江戸川区の場合、私立幼稚園に通う世帯に所得制限なしに入園料助成金として8万円、保育料補助金として月額2万6000円が支給されます。区内の私立幼稚園の保育料は月3万円程度なので、自己負担額は月4000円程度になります(給食費、送迎費、光熱費などは別途自己負担)。実際に住んでいる人の声を聞いたところ、保育料負担が軽減された分を貯金に回すことができ、助かったそうです。
隣の千葉県市川市の場合、世帯の所得に関係なく市から出る補助は年額3万5000円です。江戸川区と比べると3年間で最大91万円程度も負担額が変わります。また、江戸川区では「乳児養育手当(0歳児)」があり、満1歳未満の乳児を養育している人は、申請をすることで月額1万3000円(年15万6000円)の支給を受けることができます(こちらは所得制限あり)。つまり、子育て支援という面で考えると、100万円以上の差になるということです。どの地域に住むかによって、受けられる行政サービスがいかに異なるのかがわかると思います。
また、住居費の補助がある自治体も多いです。このコラムで以前に家賃補助のある自治体を紹介しましたが、新築建築に対する助成がある自治体もあります。
例えば、金沢市の場合、「まちなか住宅建築奨励金」があり、対象区域に基準を満たす戸建て住宅を住宅ローンで新築または購入する場合に最大400万円まで助成が出ます。新築建築や住宅リフォームに対する助成のある行政は全国でも多いので、お住まいの自治体にも類似制度がないか確認をしてみるとよいでしょう。
ここまで受けられるサービスというプラス面に着目してきましたが、刑法犯認知件数や交通事故発生件数などマイナス面を確認しておくことも大切です。
住民税に地域差はほぼなく、所得割10%(前年度の課税所得に対して市町村民税6%、道府県民税4%)、均等割4000円なのが一般的です。支払う税金が同じならば、受けられるサービスが多い自治体を選んでいきたいものです。情報収集は区市町村が出している広報誌、自治体のホームページ、自治体の施設にある貼り紙、各自治体の情報まとめサイトなどを活用しましょう。