証券業界といえば、男性社会というイメージが強いが、大和証券は女性が活躍する会社として有名だ。役員、部長、支店長など要職にある女性の数は業界でも突出している。なぜ大和は女性を積極的に登用するのか。推進役となった大和証券グループ本社の鈴木茂晴会長に聞いた。
――「日経ウーマン」誌の女性活用度部門のランキングで常に上位だ。
女性の活用なんていっている時点で、すでに男性目線だ。家に帰れば自分が妻に活用されているのにね(笑)。女性役員が何人出たとかいっているうちはまだまだ。力のある人を抜てきしたら、結果として女性が増えていたというのが本来の姿だろう。このままいけば将来、大和は部長や支店長、役員の半分は女性になるだろう。話題性や象徴的な意味合いで女性を抜てきしても意味はない。だから当社は2009年に初の女性役員を4人いっぺんに出したし、支店長は12人いる。これが1人では注目されてプレッシャーがかかるし、失敗するとやっぱり女性はだめだなんてことになる。
――なぜ女性が活躍できるのか。
この10年で証券会社の仕事が劇的に変わり、女性の強みを生かせる職場になったからだ。体育会的なノリで売りまくって手数料を稼ぐ社員が偉い時代は終わり、いかに顧客に信頼され、お金をたくさん預けてもらえるかが勝負になった。こういう仕事は瞬発力より持久力が大事で、女性の方が得意だ。証券会社の顧客の半分は女性だ。家計を握っているのが女性ということを考えれば、実質半分以上が女性だろう。なのに売り手は男性ばかりでは、おかしいだろう」
――実際に成果を上げる女性社員が増えている。
中にはブルドーザーみたいな仕事ぶりの女性もいるが、大事なのは、学歴や職歴、仕事のやり方も普通なのに、着実に成果を出し続ける女性をきちんと評価し、抜てきすることだ。そういう人事をしていれば、私も支店長になれるかも、と考える女性が増えてくる。女性を公平に評価し抜てきする会社というイメージが広がると、優秀な女子学生が大和で働きたいと集まってくる。ここ5年くらい、信じられないくらい優秀な女性が入っている。いずれは女性社長が出るだろうなと確信するくらいだ。
――女性が働きやすい環境も整備した。
働く女性は魅力的だ。だから結婚や出産、夫の転勤などで辞めてほしくない。いったん休んでも復帰しやすい人事制度をどんどん導入した。制度を作っても実行しなければ、ないのと同じだ。現場の女性からの要望は必ず聞く。支店の環境改善でも、まっ先に手を着けたのは女性用トイレだ。大和の女性役員は今のところ、結婚していないか、していても子供はいない。いずれ子育てをしながら役員の仕事もこなす女性が登場するだろう。いきいき働く女性が多い会社は、男性もよく働くものだ。厳しい時代だが、これからも伸びる会社は、女性の力を生かしている会社だと思う。