反大統領派と大統領支持派との間で対立が深まるエジプトで、軍は、日本時間の4日朝、憲法を一時停止し憲法裁判所の長官が暫定大統領に就任するとして、事実上、モルシ大統領を解任したと発表しました。
これに対して、大統領側は、軍によるクーデターだとしてこれを受け入れないよう国民に呼びかけ、事態が収拾するのか予断を許さない情勢です。
エジプトでは、経済や治安の悪化などに対する不満を背景に先月末からモルシ大統領の辞任を求めるデモが全土に拡大し、イスラム勢力を中心とする大統領支持派と衝突を繰り返して多数の死傷者が出ています。
エジプト軍は、国内のすべての政治勢力が対立を解消して国民の要求を満たさなければ介入する構えを見せていました。その期限としていた日本時間の4日午前0時を過ぎてから、首都カイロで軍の部隊が展開し始め、大統領支持派が集まっている複数の場所に装甲車が出て周辺の道路を封鎖するとともに国営テレビを管理下に置きました。
そして、日本時間の午前4時すぎからシシ国防相がテレビで演説し、事態打開のための独自の行程表を発表しました。この中で、シシ国防相は、モルシ大統領が国民の要求を満たさなかったと批判しました。そのうえで、憲法を一時停止して、大統領選挙を早期に実施するとともに、それまでの間、憲法裁判所の長官が暫定大統領に就任するとしており、事実上、モルシ大統領を解任したと発表しました。
モルシ大統領の所在は明らかになっていませんが、大統領府の公式のツイッターは、モルシ大統領の発言として「軍によるクーデターで、良識ある国民はこれを拒否するだろう」というメッセージを掲載し「エジプトを後退させるクーデターを受け入れずこれまでの憲法を堅持すべきだ」と国民に呼びかけました。大統領支持派も軍の発表に強く反発しており、これで事態が収拾するのか予断を許さない情勢です。
国営通信は、軍が示した行程表によって現地時間の4日午前10時(日本時間の4日午後5時)に憲法裁判所のマンスール長官が暫定大統領の宣誓就任式に臨むと伝えました。
軍の発表を受けて、カイロ中心部のタハリール広場では広場を埋め尽くした反大統領派の人々が喜びを爆発させました。広場からは花火が次々と打ち上げられ人々はエジプト国旗を降り、「モルシ大統領よ、さようなら」などと叫びながら歓喜の声を上げていました。広場には、軍の発表を受けてさらに家族連れなどが集まり始めていて周辺の道路まで人があふれる熱狂に包まれていました。
ロイター通信やAFP通信などによりますと、エジプトの治安当局は、3日、モルシ大統領と大統領を支持するイスラム組織、ムスリム同胞団の幹部に対し海外への渡航を禁止する措置をとり、航空機への搭乗を認めないよう国内の空港当局に通達を出したということです。
エジプトでは、おととし、30年にわたって独裁的な支配を強いてきたムバラク政権がアラブの春で崩壊しました。その後、行われた大統領選挙で、イスラム組織「ムスリム同胞団」を支持母体とするモルシ大統領が当選し、去年、大統領に就任しました。モルシ大統領は、当初、軍との関係を慎重に保ってきましたが、去年8月、タンタウィ国防相を解任するとともに予算などで軍の特権的な地位を定めた暫定憲法を停止し、実権を大統領に取り戻しました。
しかし、モルシ大統領が大統領の権限を大幅に強化する新しい憲法宣言を発表しイスラム色の強い憲法の制定に向けて動き始めると、国民の間からは反発の声が次第に強まっていきました。さらに、失業率はムバラク政権時代よりも悪化し、若者は5人に1人が職がないと言われる深刻な状況のなかで、国民の多くがモルシ大統領に期待した経済の再生は進みませんでした。
こうしたなか、ことし5月、若者らが、モルシ大統領の辞任を求める署名活動を始めたところ、これまでにエジプトの人口のおよそ4分の1に当たる2200万人分の署名が集まったとされています。このグループがモルシ大統領の就任からちょうど1年となる先月30日に合わせて退陣を求めるデモを呼びかけ、それをきっかけにエジプト全土に抗議活動が拡大しました。これに対し、ムスリム同胞団もモルシ大統領を支持するデモを呼びかけて対抗し、双方の対立による緊張が高まっていました。