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オバマ米政権の補助金虚しく 破綻相次ぐ米電気自動車ベンチャー

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 CO2(二酸化炭素)排出量を大幅に減らせると注目を集めた電気自動車だが、ここへきて倒産が相次ぐ。多くはオバマ米政権が、多額の補助金を提供してきたベンチャー企業だ。だが、クルマのCO2排出削減という点では、長期的にはEVへの期待は今後も変わらない。

 2013年5月は、EV(電気自動車)業界にとって明るくない1カ月となった。

■鳴り物入りで設立したEV企業が倒産

 まず、米国のEVメーカー、コーダ・オートモーティブが5月1日、倒産した。5月26日には、EV用の電池を丸ごと交換するという斬新なシステムの普及を目指して注目を集めてきたベタープレイスが、実質的な事業の展開先だったイスラエルで会社を清算する手続きを申請した。同社は2007年、この事業を立ち上げるため、10億ドル(約1000億円)近くを調達した。

 米政府から電池産業支援の補助金を受けた米EVメーカーのフィスカー・オートモーティブも、倒産の崖っぷちにいる。フィスカーは、同社に電池を供給していた米電池メーカー、A123システムズが昨年破綻して以来、自動車を生産していない(A123システムズも、米政府から補助金を受けていた)。

 一方、米クライスラーを子会社化したイタリアのフィアットの最高経営責任者(CEO)、セルジオ・マルキオーネ氏はこのほど、同社のEV「フィアット500e」を1台売るごとに1万ドル(約100万円)の損失が出ると発言した。

 500eの価格は3万2000ドル(約320万円)で、同じモデルのガソリン車に比べ2倍する。それでもフィアットはEVの販売に努めなければならない。米カリフォルニア州では、自動車メーカーは各社とも、同州における販売台数に応じて、ゼロ排気車(ZEV)を一定量、販売することが義務づけられているからだ。

 明るいニュースもある。カリフォルニア州に本社を構え、EVのスポーツカーを販売するテスラ・モーターズは2013年1〜3月期決算で、2003年の会社設立以来、初めて黒字を計上、政府から借り入れた4億5200万ドル(約452億円)を予定より早く返済した。

 だが全体としては、EVは苦戦していると言わざるを得ない。電池だけ搭載しているタイプでも、電池と電池が切れた場合のバックアップとしてエンジンも搭載しているタイプであっても状況は厳しい。国から補助金が出ても価格が高いうえ、電池だけで走行するタイプは走行距離も限られるからだ。

■バイオ燃料で性能向上するガソリン車

 ただ、一連の倒産で、EVに将来がないかと言えば、そうでもない。

 ベタープレイスの倒産は、経営のまずさが主な原因だったと思われる。同社は2009年に仏ルノーと提携し、2016年までにバッテリー交換式EVを10万台販売する計画を立てたが、実際に売れたのはわずか1300台。ベタープレイスは対応車両を生産するほかの自動車メーカーを見つけられず、同社の交換式電池を既に利用しているユーザーに十分な利便性を提供することができなかった。

 排ガス規制の強化に伴い、すべてのクルマの環境性能が高まっていることも、EVには逆風となっている。

 長期的には、CO2排出量が少なくコストの安い「バイオ燃料」の生産を進めることでガソリンエンジン及びディーゼルエンジンの環境性能を高めようとする動きと、自動車向け電池の軽量化と低コスト化を図ることで、その信頼性を高めようとするグループとのせめぎ合いとなりそうだ。

 今後の見通しとしては、出だしこそ遅れたものの、100%電気で走るクルマが未来のエコカーとなる公算が大きい。ただ、EVですべてを解決できるわけではない。

■それでも各国はEV推進に熱心

 このように環境車を巡る先行きが不透明な中で、政治家にとって都合のいい政策展開は、あらゆるクルマの排出規制を設定しておいて、どういった環境車が主流になっていくのか、そのリスクについては自動車業界に負わせるというものだ。

 欧州、米国、日本、そして最近では中国でもこの手法が取られたが、自動車メーカーからは不満が出ている。それでも各社とも、100年の歴史を持つ内燃エンジンの効率性をさらに高めることで燃費を向上させてきた。

 残念なことに、政治家たちはEVを、環境を重視した社会構築の手段としてではなく、目的そのものとして見ている。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相も5月下旬、2020年までにドイツにEV100万台を普及させたいとの構想を改めて強調した(昨年のドイツのEV販売台数は3000台にとどまった。メルケル首相は、ドイツ政府が5月27日にベルリンで開いたElectric Mobility Conferenceで同発言をした)。

 オバマ大統領は米議会から批判されたのを受け、EVメーカー及び電池メーカーへの資金貸し付けは停止しているが、EV購入に対する補助金については、最高額を現在の7500ドル(約75万円)から1万ドル(約100万円)に引き上げたいとの考えを捨てていない。

 中国政府は、EV1台当たり最大6万元(約98万円)を負担する補助金制度を再開する予定だ。

 だが、こういった補助金はほとんど意味がない。CO2排出量を削減したいのであれば、家の断熱工事資金を政府が一般家庭に提供するなどの方がよほど効果は高い。

 ベタープレイスは、莫大な資金を投じながら、その短い生涯において大きな成果を上げられなかった。だが米ゼネラル・エレクトリック(GE)や英金融大手のHSBCホールディングスといった強力な支援者がいながら失敗したベタープレイスの事例から、政府が「勝者を選ぶことの愚かさ」を学んでくれるなら、同社の倒産も無駄ではないと言えるのだろう。





















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