米国からシェールガスを含む安価なLNG輸入が認められ、原発停止で火力発電用の燃料コストが膨らんでいる日本にとっては貿易赤字の縮小のほか、電気料金の上昇を抑制する効果への期待が高まる。茂木敏充経済産業相は18日、都内で開かれた日アフリカ資源相会合後に行った会見で、「心から歓迎したい」と述べた。
東京電力福島第1原発事故以降、電力各社は火力発電をフル活用しており、LNGなどの燃料輸入の増加で平成24年度の貿易赤字は8兆円に達した。燃料費の増加で電力各社の収益は大幅に悪化。電気料金値上げも相次ぎ、安価なLNGの調達は喫緊の課題だった。
シェールガスの生産本格化で値下がりしている現在の米国の天然ガス価格は日本が輸入しているLNG価格の4分の1から5分の1程度。日本政策投資銀行は原油価格に連動した中東などの高いLNGの価格が米国産ガスの影響で下がることも織り込んだ場合、32年には日本のLNGの調達価格が約15%下がると試算しており、「収益改善や電気料金の上昇抑制につながる」(中部電力)との期待は大きい。
とはいえ、輸入が始まるのは4年先で、足元の調達価格が安くなることはない。輸入が始まる29年時点で米国内のガス価格が安いままという保証もない。
米国内に流通する天然ガス価格は今後、製造業の国内回帰やガス火力発電の増加による需要の拡大で上昇が見込まれている。
日本としては、米国からの輸入が実現することで、「調達先の多様化で価格交渉力は強化される」(国内の資源開発大手幹部)との見方もある。
だが、今後、米国内で第2弾、3弾の輸入プロジェクトが、順調に認められるかは未知数だ。中部電も「米国の市場価格などによって大きく変動しうるため、LNGの調達価格が下がるとは一概にいえない」(幹部)と冷静に受け止めている。