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従来型のマーケティングは死んだーピア・インフルエンス(仲間による影響)によるマーケティングへ!

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 従来のマーケティングはもはや機能しない、と説くリーの本記事に対して、HBR米国版のサイトでは600を超えるコメントが寄せられ、反響を呼んだ。新たなマーケティングのキーワードのひとつは「ピア」(peer)、つまり顧客のネットワークであるという。

 従来型のマーケティング――広告、PR(パブリック・リレーションズ)、ブランディング、企業広報など――は死んでしまった。従来型のマーケティング業務を行っている人々は、死んでしまった枠組みのなかで仕事をしていることに気づいていないかもしれない。だが、これは事実である。はっきりとした証拠があるのだ。

 第1に、買い手はもはやそれらに注目していない。いくつかの調査では、「買い手の意思決定の道筋」において、従来のマーケティング上のコミュニケーションは的外れになっていることが裏付けられた。買い手は製品やサービスに関する情報を自分のやり方で調べている。多くはインターネットを使い、クチコミやカスタマー・レビューなど、外部の情報源を参照する。

 第2に、CEOは我慢の限界にきている。2011年にロンドンのフォーネイズ・マーケティング・グループ(Fournaise Marketing Group)は、600人のCEOを対象に調査を行い、衝撃的な結果を発表した。73%が「CMO(最高マーケティング責任者)は事業を十分に成長させる能力と信頼性に欠ける」と答えた。また、72%が「事業の拡大にどう結びつくのか説明がないまま、予算を求められることにうんざりしている」とした。さらに、77%が「企業価値や財務指標と実質的に結びつかないブランド・エクイティについて話を聞くのは、もう限界だ」と答えた。

 第3に、ソーシャルメディアが日々浸透していく今日の環境では、従来型のマーケティングや営業はうまく機能しないだけでなく、意味をなさなくなっている。考えてみよう。企業は従業員や代理店、コンサルタント、パートナーなどを雇うが、その人たちは買い手の世界の人間ではなく、関心も買い手とは必ずしも一致していない。にもかかわらず、彼らに買い手を説得させ、一生懸命稼いだお金を使わせようとさせる。これはいかがなものだろう? 従来型のマーケティングの理屈をソーシャルメディアの世界に適用しても、うまくはいかない。フェイスブック上でのマーケティングに効果はあるのか、という論争も尽きることがない。

 この最後の点は幾分的外れかもしれない。なぜなら、従来型のマーケティングはどんな場所でもほぼ機能しないからだ。

 この破綻したモデルに代わるものについては、多くの推測が行われている。まるで、将来のマーケティング像は遠い彼方にぼんやりと垣間見えるだけ、といった感じの憶測だ。しかし実際には、新たなマーケティングモデルについては多くの詳細が判明している。すでにいくつかの企業で、実際に取り組みが行われているのだ。以下に重要なポイントを示そう。

●コミュニティ・マーケティングを再生する

 ソーシャルメディアによって、買い手は自身のコミュニティで実際に起こっている購買行動を重視する傾向を強めている。たとえばあなたが大きな買い物――新しい屋根、大画面テレビ、優秀な外科医といった製品やサービス――について検討しているとする。あなたは営業担当者に会いに行ったり、企業のウェブサイトを隅々まで読んだりはしないはずだ。その代わりに、隣人や友人、つまり仲間のネットワークに、どんな製品・サービスを使っているか尋ねるだろう。

 企業はソーシャルメディアへの取り組みを通して、こうしたコミュニティ重視型の購買行動を可能な限り再現するべきだ。一方で、フェイスブックなどのソーシャルメディア企業は、それを実現させる専門家となるべきである。そのためには、買い手の仲間(ピア)のネットワークを拡大することだ。仲間とはすなわち、製品やサービスの購買経験に基づいて、信頼性のある情報やアドバイスを提供できる人たちである。

 たとえば、ズベランス(Zuberance)という新しい会社は、得意客がソーシャルメディア上で企業を支援できる、簡単かつ楽しい仕組みを提供している。顧客アンケートで、回答者が自分を「プロモーター」(その製品・サービスを知人に推奨する意思が強い顧客)であると認めたら、その瞬間に推薦文やレビューを書けるフォームが現れる。顧客がそこに書き込むと、ズベランスは顧客が指定したソーシャルメディアに投稿し、顧客のネットワークは即時にその購買経験について知ることになる。

●影響力を持つ顧客を見つける

 多くの企業は、ウェブ上やソーシャルメディアですでに影響力を持っている人を探して利用することに多くの資源を費やしている。より優れたアプローチは、影響力を及ぼせる人を顧客のなかから見つけて育て、その人が喜んで発信したがるような内容を提供することだ。これには、顧客生涯価値(CLV)を超越した新たな顧客価値の指標が必要となる。顧客生涯価値は、購買だけに基づくものだ。購買金額以上の、顧客の潜在価値を測る方法は多数ある。たとえば、その顧客のネットワークはどれくらい大きいか、自社にとっての戦略的重要性はどの程度か、その顧客はどれほど良い評判を確立しているか、などである。

 マイクロソフトの「MVP顧客」(最も価値のある専門家)の1人は、フォロワーのあいだで「ミスター・エクセル」として知られている(同社のMVPについてはこちらのサイトを参照)。日によっては、彼のウェブサイトの訪問者数は、マイクロソフトのエクセルのページの訪問者数を超えることがある。これは彼の存在が同社にとっていかに重要かを示している。同社はミスター・エクセルの取り組みを、非公開の知識や新製品のプレビューなどを提供することで支えている。代わりにミスター・エクセルや他のMVPは、マイクロソフトが新たな市場に効率よく進出することを助けている。

●ソーシャル・キャピタルの構築を支援する

 コミュニティ中心の新たなマーケティングを実践している企業は、MVP顧客(チャンピオン顧客、ロックスターなどとも呼ばれる)への価値提案も見直している。従来型のマーケティングでは、カスタマー・アドボカシーを促進するために現金報酬、割引、または不適切な方法を用いる場合が多い。一方、新たなマーケティングでは、支援者や影響力を持つ顧客がソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を築くことを手助けする。彼らのネットワークを豊かにし、評判を高め、新たな知識にアクセスできるようにするのだ。これらは、彼らが強く望んでいるものだ。

 ナショナルインスツルメンツ(NI)は影響力のある顧客に対して、特にクリエイティブな方法を用いた。対象は、NIの取引先でITを担当するミドル・マネジャーたち。NIは充実した調査データや財務的実証データを彼らに提供し、NIのソリューションが戦略的メリットをもたらすことを彼らが経営陣に証明できるようにした。これにより、NIの存在は経営陣のあいだで確立された。そしてミドル・マネジャーたちは、経営陣に新しいアイデアを吹き込んだ戦略家であるとして高い評判を得ることができた。

●ソリューションに支援者を巻き込む

 これに関する最大の成功事例は、非営利の世界に見られるだろう。しばらく前に、10代の若者の喫煙者数が全米で警戒すべきレベルにまで達した。そこで、フロリダ州はこの問題の解決のために数十年続けてきた取り組みを見直した。10代の喫煙をやめさせようと説得するのは、とても難しい。マルコム・グラッドウェルがかつて、「解決できない」とした問題である。この問題をフロリダ州は、「ピア・インフルエンス」(peer influence:仲間による影響)が発揮されるコミュニティをつくることで解決した。生徒会のリーダー、スポーツ選手、「イケてる」若者など影響力のある10代の「顧客」のなかから、非喫煙者や絶煙希望者を探した。そして、メッセージを押し付けるのでなく、彼らに協力や助言を求めたのだ。

 この方法で、600人ほどのティーンエイジャーが集められ、喫煙問題を話し合うサミットが開かれた。彼らは、これまでの喫煙防止の取り組みがなぜ効果をあげなかったかを担当者に話した。健康への影響についての恐ろしい警告も、喫煙の習慣を「カッコ悪い」と大人たちが表現することも、彼らの心には響かなかったのだ。サミットでは、死亡した熟年層の顧客(死因の多くは肺がん)の穴埋めとして、タバコ会社の幹部が特に10代をターゲットとしていることを示す文書が公開された。10代の参加者たちは怒りに突き動かされ、新しいアプローチについてアイデアを出し合った。

 そして彼らは、SWAT(10代の喫煙に反対する学生の会)というグループを結成し、電車での講演ツアーやワークショップの開催、Tシャツ販売といった訴求力のある活動を行って、各地のコミュニティにメッセージを届けた。その結果、大手タバコ会社のロビー活動による卑劣な反撃にもかかわらず、フロリダ州での10代の喫煙率は1998〜2007年のあいだに半減した。10代の喫煙防止活動で、史上最も大きな成功となったのである。

 この事例を別の言い方で表現してみよう。フロリダ州は、巨大で資金豊富な競合から10代の顧客の半分を奪い、非喫煙という「商品」の「顧客」に変えたということになる。最大の購入動機となるピア・インフルエンスを活用して、これを成し遂げたのだ。

 あなたも同じことができる。従来型のマーケティングは役目を終えた。しかしピア・インフルエンスを基盤としたコミュニティ重視型の新たなマーケティングは、顧客との関係を強化し継続的な成長を目指すうえで、はるかに有望である。





















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