南シナ海の島々の領有権を巡って中国と対立するフィリピン政府は、双方の争いを国連海洋法条約に基づいて仲裁裁判所に持ち込むことを、中国政府に通告しました。これは、フィリピンのデルロサリオ外相が22日午後、記者会見で明らかにしました。
この中でデルロサリオ外相は、中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張しているが、これは国連海洋法条約違反に当たり、フィリピンの主権を侵害していると主張しました。そのうえで、双方の争いを平和的に解決するため、条約に基づいて仲裁裁判所に持ち込むことを、マニラ駐在の馬克卿大使を通じて、中国政府に通告したということです。これについて馬大使は、「この問題は、当事国どうしの話し合いで解決されるべきだ」という声明を発表し、条約に基づく手続きを拒否する、従来の中国政府の立場を改めて鮮明にしました。
両国の間では、去年、南シナ海のスカーボロー礁で、監視船どうしが2か月以上にわたって対じした末、フィリピン側の実効支配が崩された形になっています。フィリピン政府には、中国側が受け入れないことは承知のうえで、あえて国際法の枠組みでの解決を呼びかけ、国際社会の支持を集めたいというねらいがあります。
デルロサリオ外相は「フィリピンが中国との領海問題を平和的交渉で解決するための政治的、外交的手段はほぼ尽きた」と述べ、国連海洋法条約に基づいて国際仲裁裁判所で中国の主張に反論する意向を表明した。中国国営通信は同日、フィリピン政府の発表について報じたが、現時点で中国政府の反応は伝えていない。
南シナ海についてはベトナムやマレーシアも領有権を主張している。中国とフィリピンの間では昨年、問題の海域にある岩礁を巡って海軍同士がにらみあう事態が続き、一時的に緊張が高まった。フィリピンは数か月後、悪天候を理由に艦船を撤収させた。
中国は南シナ海の大半で領有権を主張しており、定期的な海洋パトロールでこの主張固めを狙っていると見られる。東シナ海にある小さな島をめぐっても、日本に対して同様の姿勢を取っている。