大阪市立桜宮高校でバスケットボール部の顧問の教師から体罰を受けていた男子生徒が自殺した問題で、大阪市の橋下市長は、今の桜宮高校の教員を全員、異動させる道筋をつけるよう、市の教育委員会に求めていることが、関係者への取材で分かりました。
今回の問題を受けて、大阪市の橋下市長は、桜宮高校のこの春の入学試験について、「桜宮高校の体育科の伝統は完全に間違っていた。これまでの伝統を断ち切る必要がある」として、普通科は予定どおり行うものの、体育科とスポーツ健康科学科の入学試験は中止すべきだという考えを示し、大阪市教育委員会も中止するかどうか検討を進めています。さらに橋下市長は、桜宮高校の普通科の入学試験を予定どおり行う場合でも、今の教員を全員、異動させる道筋をつけるよう、市の教育委員会に対して求めていることが関係者への取材で分かりました。
橋下市長は「お茶を濁すような人事は、だめだと思う。校長や教員の総入れ替えは最低条件で、人事権を適切に行使してほしい」と求めたということです。大阪市教育委員会は、NHKの取材に対し「現実的にその対応は非常に厳しい」としながらも、「教育委員会として何らかの答えを出さなければならず、対応を検討したい」と話しています。
大阪市立桜宮高校(同市都島区)2年の男子生徒(17)が自殺した問題で、橋下徹市長が同校体育科の入試中止を要請したことを巡り、大阪弁護士会所属の弁護士17人が18日、入試を予定通り実施するよう求める声明文を市教育委員会に提出した。記者会見には同校生徒の保護者3人も出席。「子どもの夢を奪わないで」と訴えた。
声明は「生徒の入学制限は何の解決にもならない」と主張。橋下市長が入試関連予算を執行しないと表明したことを「脅迫的」と批判した。
同科1年の男子生徒の父親(43)は「改革は当然だが、生まれ変わる桜宮高を志望する道すら断つのは問題」と指摘。同科3年の女子生徒の母親(52)は「娘は同校教諭にあこがれて教師を志している。『伝統を壊したら桜宮高でなくなる』と泣いていた」と訴えた。
市教委の長谷川恵一委員長ら教育委員3人は同日、同校を訪れ、入試中止に関して生徒や教員の意見を聴いた。市教委は21日に入試実施の可否を決定する。
橋下市長は18日、記者団に「長い人生では1年、2年、やりたいことがずれることもある。それを教えるのも教育」と持論を展開。「新しい教育方針も決まっていないのに、どう生徒を迎えるのか」と強調した。
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戦後教育の欠点は「紳士淑女は三つの畏怖を持つ」ということを教えていないことだとされている。三つのうちのひとつが「天命」である。天命とは、簡単にいってしまえば、その人自身ではどうしようもないこともあるということである。だから、橋下市長の「長い人生では1年、2年、やりたいことがずれることもある。それを教えるのも教育」というのは正しい認識だろう。ただ、そうした教育を、入試中止という形で教えることはないだろうとは思う。