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中小企業金融円滑化法が終了、貸しはがしの大義名分でアジア進出を推進 地銀・信金

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 1月11日に閣議決定された緊急経済対策に、国際協力銀行(JBIC)と民間銀行などが出資するファンドを創設して、中小企業の海外進出を支援する事業が盛り込まれた。しかし、現実には中小企業が海外進出をするにはリスクも多い。これまでの中国進出ブームにおける多くの失敗を顧みるまでもなく、冷静な判断が中小企業には求められる。

 ところが、その判断をゴーサインに追い込む状況が固められている。カギとなるのが、「中小企業金融円滑化法」(金融モラトリアム法)の期限切れである。この法律は、国民新党代表だった亀井静香議員の発案で2009年に施行され、中小規模の企業などの借り手から返済計画の変更(返済負担の軽減)を申し込まれた場合、銀行ができる限り要望に応じるよう義務付けられたもので、借り手の負担は大きく軽減されているものだ。もともとは2011年3月末までの時限立法だったのだが、期限が2回延長され、いよいよ今年の3月末をもって終了するが、同法による影響の大きさは、以下の通り大きなものだ。

「金融庁がまとめた12年3月末時点の『貸付条件の変更等の実施状況』によると、それがハンパな金額でないことが分かる。全国1521金融機関に対する申し込み件数(累計)は313万3742件で、条件変更が実行されたのは289万3387件。条件を見直した債権の合計は79兆7501億円に上る。すさまじい金額である。このほか、住宅ローンの返済条件を見直した個人が20万4260人で、見直し額は3兆1610億円である」(当サイト掲載記事『金融モラトリアム法の終了でペーパーカンパニーが乱立する?』<2012年10月26日付>)

 つぎ込まれた資金が巨額だけに、その副作用も甚大だ。この289万件以上の条件変更がなされた債権の一定割合が、金融モラトリアム法の期限が切れた後に不良債権化すれば、その倒産件数や金額規模はすさまじい水準になる。

 その期限切れが近くなった現在、不穏な動きを見せている勢力がある。

 中小企業に融資をしている、一部の地方銀行(地銀)や信用金庫(信金)だ。この不穏な動きの動機について、ある金融専門家はこう解説する。

「地銀も信金も金融モラトリアム法が期限切れになれば、融資先の倒産や不良債権化は避けがたく、担保価値の範囲内でも融資した資金の回収が危ぶまれる。さらに、現状は消費税の増税も決まっており、融資先企業の見通しも暗い。そこで、地銀や信金は、期限が切れて倒産する前に貸しはがしをして、早期に融資を回収しておきたい。しかし、露骨な貸しはがしには世論の目が光っているので、なんとかして貸しはがしの大義名分がほしい」

 そこで、それらの回収を急ぐ両者が目をつけたのが、融資先の中小企業の、中国などアジアへの進出を推進する手口なのだ。先の金融専門家によると、その手口はこうだ。
 
「例えば、自宅や工場合わせて時価2億円程度を担保にしている融資先の中小企業があったとしても、日本国内の融資案件には融資金額規制があるため、銀行は一定金額(例えば、土地は公示地価の6割)までしか融資はできない。そこで、銀行員がそうした企業を訪問し、追加融資を断りながら、次のようにささやくんですよ」

 それは、こんな内容だという。「国内はもう需要がないから、中国やアジアなど海外市場に進出し、売り上げが伸びる事業計画にしたほうがいいのではないですか? それなら銀行の審査も通りやすいですよ。今は中国に○○業界の部品をつくっている日系企業が集まった工業団地があって、そこは大手メーカーの中国市場担当の偉い人がつくった工業団地ですから安心でしょうし、進出をサポートしている専門のコンサルタントも知っていますから、よかったら個人的にご紹介しましょうか?」

 この進出の話の裏には、金融機関側にとって実においしい仕組みが用意されている。

 金融機関は、海外案件なら融資額の規制が適用されないから、追加で貸せるようになる。しかも今は、政府から中小企業の海外進出にはさまざまな補助金がある。追加融資分の保証は信用保証協会などの政府機関がしてくれるため、金融機関は倒産時のリスクをとらずに規制枠を超えて貸すことができ、貸し出しが増えれば利子収入も増え、業績も上がる。

 しかし、話はこれだけではない。このような多くの中小企業が送り出される先は、中国やアジア諸国の実態に詳しい人の間では、裏では穏やかではない呼称で呼ばれている場所が多いのだ。

金融専門家
 日本の会社が、それこそ100社以上も進出しているはずの工業団地などを紹介される。なのに、それにしてはオフィスの数が少ないとか、もしくは、異様に“完成して間もない感”があふれ、過去を調べようがないという工業団地。そこに、工場ごと移転するわけです。

 しかし、そうした工業団地は、表向きは投資会社などが経営母体となっているが、実際には中国などの地元政府系組織が、実質上の経営者になっている例が多い。彼らが欲しいのは、日本の中小企業が持つ自動車や家電などの製造技術なので、移転した中小企業は、こんな目に遭ってしまう。

・現地採用の技術者が、情報とノウハウをもって退職する。
・現地の合弁相手が技術を盗む。
・技術者個人が持つ職人芸が重要な商品の場合は、その技術者だけをヘッドハントされてしまう。

 こうして日本の技術は流出し続ける。そして早ければ移転後わずか3カ月程度で、近隣の中国などの地元企業が、その日本企業の製品とほとんど同じ製品を、現地の安い人件費を使って4〜5割ぐらい安い価格でつくって販売する。こうなってしまうと、進出した中小企業は、お手上げ状態に追い込まれてしまう。親会社が取引先を安い中国の会社に切り替えてしまい、買い手がいなくなるのだ。

 苦境に陥った中小企業は、中国で会社が立ち行かなくなり、日本に帰ろうにも、日本の財産はすでに地銀や信金の担保に押さえられている。中国から撤退しようにも、中国側からは違約金や工場の清掃費用など膨大な金額を請求され、それもままならなくなる。

 そこで、そのような中小企業の多くが1年も持たず消えていき、まじめな中小企業の経営者の中には、最後は自殺に至る例も多い。ゆえに陰では、歴史的な強制収容所の名称にちなんで「◯◯工業団地」と呼ばれている。

 こうして中国などの現地側は、進出した企業の技術も、工場への進出資金も、会社がつぶれた後の工場の設備も、うまくいけば技術者もタダ同然で手に入り、さらに親会社の作った商品の販売先とのコネクションまで確保できて、非常においしい。そして、これらカモとなる中小企業を見つけてきた“中小企業向けの中国進出コンサルタント”に、中国側から裏金が流れているケースもあるという。

 金融機関側は、こうして送り出した中小企業が倒産した場合は、もともとの融資分は担保から回収して現金化すれば、モラトリアム法の期限切れ前に回収できてリスクを減らせる。回収した現金で国債を買えば、日銀の「日本の国債を買い支えるように」という要請にも応えられ、日銀からの評価も上がる。

 特に信金においては、融資先企業はその見返りに信金に出資をしているケースが多く、信金は出資金に対して通常年間で4〜5%という高い金利を支払っている。融資先が破綻してくれれば、金利払いが不要となる場合もある。海外に行かせることで融資先が破綻してくれれば、貸しはがしもできる上に、ただ単に貸しはがすよりもメリットが増えるのだ。

 しかも、カモとなる中小企業を見つけたコンサルタントに、中国側が支払った裏金の一部を受け取っていると噂される信金の担当者などまでいる。これが事実ならば、担当者は業務実績とプライベートで二重においしい思いをしていることになる。

 中小企業の間では、いまだに地銀や信金の信用力が高く、そこから紹介されるコンサルタントや工業団地なら、たとえ実際には営業担当者個人からの紹介であろうと、信用のできる案件と受け止めるのが通常ではないだろうか?

 中国やASEAN諸国への中小企業進出に関する詐欺の手口は、実際には数多くある。主立ったものでは、現地の日本人経営者が日本企業を騙しにくる手口、「中国の公安部(警察に相当)に友達がいる」と嘘をついて報酬を得ている弁護士などが挙げられる。

 海外進出は、このようなリスクが多い現実を理解した上で、慎重に検討することが、企業防衛の絶対条件であることを肝に銘じておきたい。

























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