警視庁に誤認逮捕され、体調を崩しているのに薬を服用させてもらえなかったなどとして、埼玉県の無職男性(38)が東京都を相手取り、550万円の損害賠償を求めてさいたま地裁に提訴した。代理人の弁護士が19日に記者会見を開き、明らかにした。提訴は11月20日付。
訴状などによると、男性は2010年4月、当時住んでいた東京都内のアパートに火をつけ、住人2人を殺害したとして、同12月に殺人と現住建造物等放火容疑で逮捕された。男性は容疑を否認したが、11年1月には留置場内で警察官に暴行したとして公務執行妨害容疑で再逮捕され、鑑定留置を経て、同2月20日に処分保留で釈放。同8月、殺人容疑などについて不起訴となった。
会見した松山馨けい弁護士(埼玉弁護士会)らは、男性が火災の後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や鬱病にかかり、逮捕前には固形食を口にできない状態になっていたと指摘。取り調べ中に意識が朦朧とした際、医者に処方された薬の服用をさせてもらえず、勾留中も満足な点滴や流動食を与えられなかったとしている。公務執行妨害容疑での取り調べでは、黙秘権を告知されず、「ゴキブリ野郎」などと罵られ、顔を殴られたりしたと主張している。
福井県警坂井署は26日、同県坂井市春江町の路上で県内の男性(21)から現金7万円を脅し取ったとして同市内の土木作業員の少年(18)を恐喝容疑で誤認逮捕していたと発表した。福井地検は処分保留で釈放後、21日に不起訴処分としている。
発表によると、恐喝事件は3人組による犯行で、9月19日夜に発生。その後、犯行グループが被害男性に連絡を取った際に少年の携帯電話が使われ、被害男性も少年の犯行と証言したことから、坂井署は11月22日、少年を含む2人を逮捕した。
ところが、その4日後に出頭してきた解体作業員の少年(18)ら2人が犯行を認めた。誤認逮捕された少年は「現場には行っていない」と容疑を否認していた。ただ、少年は今月6日の釈放後、別の恐喝事件で逮捕(送検後、恐喝未遂の非行事実で家裁送致)されている。斉藤和博副署長は「少年は同様の恐喝事案に関わっており、関係者の記憶も混合していたが、慎重さが足りなかった」とした。