中国政府が1950年に作成した外交文書の中に「尖閣諸島は琉球の一部である」と認める記述があることが一部報道で伝えられ、尖閣諸島をみずからの固有の領土だとする中国の主張の一貫性を疑わせるものとして波紋が広がっています。
これは時事通信が、27日、文書のコピーを入手したとして伝えたもので、それによりますと、問題の外交文書は、1950年5月に中国政府が作成した「対日講和条約における領土部分の問題と主張に関する要綱草案」です。文書の中で、中国政府は、沖縄県の尖閣諸島について、現在中国が使っている釣魚島という名称を一切使わず「尖閣諸島」と明記しているということです。さらに、文書は尖閣諸島を現在の沖縄県に当たる「琉球の一部である」と認め、「尖閣諸島を台湾に組み込むべきかどうか検討の必要がある」といった記述もあるということです。
この報道について、中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)報道官は27日の定例会見で、「報道の状況がよく分からない」と述べる一方、「中国の島に対する主権は歴史的にも法的にも十分な証拠がある」と反論しました。中国政府は、これまで尖閣諸島について「台湾の一部であり、以前から釣魚島の名称を使っていた」と主張していますが、今回の報道は、そうした主張の一貫性を疑わせるものとして波紋が広がっています。
中国外務省の華春瑩副報道局長は27日の定例会見で、「尖閣諸島」と記した中国の外交文書が発見されたとの報道に関し、「状況は把握していないが、釣魚島が中国の固有の領土だという原則を強調したい」と反論した。尖閣諸島について、中国側が「日本領」と事実上認めていたことを示す資料としては、共産党機関紙「人民日報」が1953年1月8日の資料記事で「尖閣諸島」との呼び名を掲載。過去の中国の地図集も、尖閣諸島と中国の間に国境線が引かれている。
日中が領有権を争う尖閣諸島(中国名・釣魚島)に関連し、中国の学者がこのほど「日中両国による交互巡回体制の構築」を提案した。
産経新聞によると、中国・新華社系の新聞『参考消息』が今月15日に開いたフォーラムで、復旦大学国際問題研究院の沈丁立副院長は「飛行機を使って相手の飛行機を追い払えば、接触して武力衝突に発展する可能性がある。できれば時間と空間をずらした方がよい」と指摘した上で、「奇数日は日本、偶数日は中国という形で、交互に巡回してはどうか」と提案した。
中国は南京大虐殺75周年に当たる今月13日以降、4回にわたり航空機を尖閣諸島付近に投入し、日本は戦闘機を緊急発進させて対応した。沈副院長は「中日両国が釣魚島を管理する問題で『時空交錯』を実現すれば、北東アジア情勢の安定化に寄与する」と述べた。産経新聞は中国の外交関係者が沈氏の一連の発言について「共産党指導部の意向を受けた可能性が高いとみている」と伝えた。しかし、日本が提案を受け入れるのは難しいとみられている。外交筋は「国有化措置以前も尖閣諸島は日本が実効支配していた場所だ。中国は尖閣諸島を紛争地域化することに成功した上で、じわじわと領有権主張を強化しようとしている」と語った。一方、中国国家海洋局は27日、同局海監総隊に所属する航空機が最近、東シナ海のガス田「白樺」(中国名・春暁)の上空を飛行した際、日本の戦闘機に阻止されたとし、「日本が事態の悪化を望んでいることを示すもので、その結果に対する責任は日本が負わなければならない」と主張した。