北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイル発射実験を受けて12日に開かれた国連安全保障理事会(15カ国)の緊急協議で、米国や英国など6カ国が新たな制裁決議が必要と主張する一方、中国だけが明確に決議に反対した。北朝鮮に対する制裁強化に慎重な中国の姿勢が改めて浮き彫りになり、議論を主導する米中間の駆け引きが活発化する見通しとなった。
決議が必要との意思をはっきり示したのは米英の他、フランス、ドイツ、アゼルバイジャン、グアテマラ。ライス米国連大使は、過去の安保理決議に違反するミサイル発射が深刻な結果をもたらすことを北朝鮮に知らしめるため、「強い決議の採択」を求めた。
これに対し、中国の李保東(りほとう)国連大使は「朝鮮半島の緊張を高める行動はとるべきではない」と新たな制裁決議に反対。「(北朝鮮が前回ミサイルを発射した際の)4月と同じような安保理の対応」を要請した。安保理は4月、決議より拘束力が弱いとされる議長声明を採択。従来の制裁枠組みの中で禁輸品目や資産凍結の対象となる団体の追加が盛り込まれた。
中国としては、自制要求を無視した形でミサイル発射を強行した北朝鮮に何らかの対応が必要であると認める一方で、決議による新たな制裁の枠組みの導入には反対したことになる。中国が対北朝鮮制裁決議に賛成したのは、06年と09年に北朝鮮が核実験を実施した際の2度だけだ。
この日の協議では米中がそれぞれ交渉の出発点を示した形。ライス大使は協議後、安保理の対応として「いくつかの重要な要素がある」と発言。中国との交渉を踏まえながら、できるだけ早期に安保理に草案を示す意向とみられる。
ロシアなど他の安保理メンバーはこの日、決議への明確な意思表示はしなかった。決議採択には米英仏露中の常任理事国が拒否権を発動せずに、9カ国以上の賛成が必要。議長声明は全会一致で採択される。
◇国連安保理常任理事国と日韓の反応
米国 あからさまな国際的義務の違反にさらなる罰を与える(米カーニー大統領報道官)
ロシア 国連加盟国は決議を無視すべきではない(ラブロフ外相)
英国 決議違反。地域の安定を脅かす行為(フレーザー英外務次官が駐英北朝鮮大使に抗議)
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は12月12日、人工衛星「光明星3号2号機」の打ち上げに成功したと発表し、北米防空司令部(NORAD)も「なんらかの物体」が軌道に到達したことを確認した。
これで同国は、独自の衛星を軌道に打ち上げることに成功した11カ国からなる小さなグループの一員になった。(それまでの10カ国は打ち上げ順にソ連、アメリカ、フランス、日本、中国、英国、インド、イスラエル、イラン。なお、ロシアとウクライナも1992年にソ連から承継したシステムで衛星を打ち上げている)
こうしたロケット技術がすぐに大陸間弾道ミサイル(ICBM)の成功につながるわけではない。ICBMの打ち上げ軌道は、ロケットの打ち上げ軌道とは大きく異なる。ICBMは宇宙空間に入った後で、地球の裏側にある街を目標としながら大気圏に再突入する必要があるからだ。制御が難しいほか、再突入に耐えうる高度な素材等も必要になってくる。
戦略国際問題研究所(CSIS)・北朝鮮問題分析、ヴィクター・チャー
北朝鮮はこれまでも、イラクやパキスタンといった常連客にミサイルを販売してきた。具体的には、旧ソ連のスカッドや、それを改良したノドン(射程1,000km以上の準中距離弾道ミサイル)、そしてムスダン(推定射程距離3,200km〜5,000km)といったミサイルだ。北朝鮮は今回の技術を常連客に売ることができる。ICBMを核兵器と結合させるという観点からすると、北朝鮮は重要な境界を越えた。弾頭の小型化や、再突入体の開発といった技術的境界はまだあるものの、これは間違いなく大きな境界といえる。
北朝鮮は今回、12月22日までに打ち上げるとしていたが、直前になって第一ロケットに問題があると認めてこの枠を29日まで拡大したため、多くのアナリストが打ち上げはもっと遅れると判断していた。しかし実際には、1日遅れただけで打ち上げに成功した。
北朝鮮大学院大学・梁茂進(ヤン・ムジン)教授
技術的な問題は、即座に修正された軽微なものだったか、あるいは(領土に接近した場合は)ロケットを迎撃すると公言していた日本をだますためのカモフラージュだったかのいずれかだ。
ほかに北朝鮮は、激化する韓国との軍備競争に後れを取るまいとしている、韓国と日本で行われる12月の選挙の時期に合わせた、あるいは単に注目を集めたかった、などの説もある。
※北朝鮮はミサイル開発を外貨獲得の手段として用いており、スカッドとノドンをエジプト、シリア、リビア、イエメン、イラン、パキスタンなど多くの国に輸出している。今回のロケットでは、1段目にノドンBを4つ束ねて利用したとされ、この技術をICBMに転用できた場合、射程距離は13,000km以上に達し、全米が射程に入るという見方もある。