3冠馬対決は牝馬に軍配だ。競馬の祭典「第32回ジャパンC」が25日、東京競馬場で行われた。3番人気の3冠牝馬ジェンティルドンナが、昨年の3冠馬、1番人気のオルフェーヴルを激しい競り合いの末、鼻差破った。直線残り200メートル、ジェンティルドンナが直線でオルフェーヴルを外にはじき飛ばし、23分間の長い審議となったが、入線順通りに確定。3歳牝馬のジャパンC制覇は史上初。陣営は来年の海外遠征を明言した。
先頭でゴールを駆け抜けたジェンティルドンナの鞍上・岩田に笑顔はなかった。「自分が審議の対象になっているので…」。そう言い残して検量室へ。1、2位に入線したジェンティルドンナ、オルフェーヴルの関係者が次々と裁決室に呼ばれ、審議が続いた。
問題の場面はラスト200メートル。最内から伸びたジェンティルドンナは逃げたビートブラックが後退してきたため、外へと持ち出した。その瞬間、外にいたオルフェーヴルの馬体に接触し、相手を外側にはじき飛ばした。
岩田 オルフェの馬体をプッシュしてしまった。後味の悪いレースになって申し訳ない。自分がもっとうまくエスコートしてあげられれば。
勝利騎手は自身の騎乗ぶりを謝罪した。2頭は馬体を併せ、激しく競り合いながらゴールに飛び込んだ。ジェンティルが鼻差先着。オルフェ鞍上の池添は悔しそうに話した。
池添 頭差、首差なら仕方ないが、着差が着差。ちょっと納得がいかない。僕は真っすぐ走っているんだから。
23分間の長い審議の末、上位3頭の着順が確定。走行妨害には至らずとジャッジされた。管理する石坂師は「激しい競馬の結果だった。私は大丈夫だと思っていた」と振り返った。
微妙な場面こそあったが、3歳牝馬で初となるジャパンC制覇はまさに快挙だ。しかも現役最強馬をねじ伏せてのV。53キロも味方したとはいえ、残り50メートルでグッと首を伸ばしたド根性には凄みがあった。師は「激しい叩き合いになったが、ジェンティルなら大丈夫。あの娘(こ)は並んだら絶対に抜かせない」。
歴史を塗り替える挑戦は、秋華賞を勝ち、4頭目の牝馬3冠を達成したその日に決まった。京都・祇園での祝勝会。オーナーサイドの吉田勝己氏、俊介氏が勇気ある提案をした。「ジャパンCに行こう。競馬人気を盛り上げるには、3冠馬2頭がぶつかるくらいのインパクトが必要だ」。出れば勝てたはずのエリザベス女王杯を見送り、世界最強を決する一戦へ。前向きな心が快挙を呼んだ。
国際舞台で国内最強を証明したジェンティルドンナ。来年はウオッカ、ブエナビスタも達成できなかった、海外制覇への期待も膨らむ。早ければ来春、ドバイ遠征の可能性がある。吉田俊介氏は「今後のことは決まっていないが、ロンシャン(フランス)でも、オルフェーヴルと、また叩き合いが見てみたい」と、来秋の凱旋門賞挑戦を示唆した。大舞台でし烈に叩き合った同じ勝負服の牡牝3冠馬。因縁めいた2頭の激突は、遠くパリの地まで続くのかもしれない。
◆ジェンティルドンナ 父ディープインパクト 母ドナブリーニ(母の父ベルトリーニ)牝3歳 栗東・石坂厩舎所属 馬主・サンデーレーシング 生産者・北海道安平町ノーザンファーム 戦績9戦7勝 獲得賞金6億8953万8000円。