米中央情報局(CIA)のデービッド・ペトレアス(David Petraeus)長官(60)が辞任することになった不倫問題は、米連邦捜査局(FBI)が脅迫メールの捜査を進めていた過程で発覚したものだった。米メディアが11日、報じた。
駐留米軍司令官としてイラク戦争の形勢を好転させた「米国の英雄」ペトレアス氏が、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の再選からわずか3日後の9日にCIA長官を辞任したことで、米政府周辺に衝撃が広がっている。
ペトレアス氏の不倫相手は、同氏の伝記『All In: The Education of General David Petraeus(全てを語る:デービッド・ペトレアス大将の教育)』の共著者のポーラ・ブロードウェル(Paula Broadwell)さん(40)。元陸軍少佐のブロードウェルさんは、ペトレアス氏に前例がないほど近しく接触することが許されていた。ブロードウェルさんは既婚者で息子2人がいる。
11日付の米各紙の報道によると、FBIはブロードウェルさんから脅迫メールを送りつけられた女性からの要請を受けて刑事捜査を進め、その過程でペトレアス氏に行き当たったという。
メールを送りつけられたのは米国務省で米統合特殊作戦軍(Joint Special Operations Command)との渉外役を担当していた37歳の女性で、長年ペトレアス氏の友人だったとみられている。ブロードウェルさんはこの女性をペトレアス氏の愛人と思い込み、嫌がらせや脅迫のメールを送りつけていたとみられる。
米紙ニューヨーク・ポスト(New York Post)が報じた米政府関係者の話によると、ブロードウェルさんが37歳の女性に出した電子メールには「あなたが何をしたか知っているわ」、「身を引いて」、「私の男性から離れて」などと書かれていたという。
米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)によると、ブロードウェルさんからのメールに恐怖を覚えた女性は、数か月前に身辺の安全確保とメールの送信者の特定をFBIに求めた。
FBIが捜査したところ、ブロードウェルさんがペトレアス氏に宛てて書いた、性的な表現を含む多数のメールが見つかった。ペトレアス氏が個人的に使っていたグーグル(Google)の電子メールサービスGmailのアカウントが何物かにハッキングされていれば国家機密漏洩の恐れもあると一時は懸念されたが、2週間前にペトレアス氏から事情を聞いたFBI は、同氏に刑事責任はないと結論付けた。
ペトレアス氏の突然の辞任は、2期目を前にしたオバマ大統領の頭痛の種を増やす形になった。ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官、レオン・パネッタ(Leon Panetta)国防長官、ティモシー・ガイトナー(Timothy Geithner)財務長官らは続投しないとみられ、後任者を選ぶ必要に迫られているからだ。
ペトレアス氏の後任として、CIA出身でオバマ政権のテロリズム対策の顧問として国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に対する無人機攻撃で大きな役割を果たしたジョン・ブレナン(John Brennan)米大統領補佐官の名前が取り沙汰されている。
一方、今週末にはワシントンD.C.(Washington D.C.)でブロードウェルさんの40歳の誕生日を祝う盛大なパーティーが企画されていたが、現在、ブロードウェルさんの夫が招待客にキャンセルの通知メールを送っているという。