将棋の第二期リコー杯女流王座戦第三局が十日、藤枝市の藤枝明誠中学高校であり、加藤桃子・初代女流王座(17)=牧之原市出身=が挑戦者の本田小百合女流三段(34)を破って初防衛した。
第三局では序盤は本田女流三段にやや押されるも、中盤に加藤女流王座が逆転し、その後は手堅く寄せきった。三戦全勝でのタイトル防衛に「地元の静岡で勝ててすごくうれしいです」と満面の笑みを見せた。
同校は、二〇〇八年に亡くなった父康次(やすじ)さんが教師として勤めていた。「姿は見えないけど、今日は父がどこかで見守ってくれている感じがした。家に帰って報告したいです」と思い出の地での勝利に感慨深げだった。
日本将棋連盟によると、タイトル戦が学校で開催されるのは今回が初めて。同校棋道部を全国有数の強豪に育て上げた康次さんの功績や、全国高校将棋女子選抜大会の開催実績が評価されて会場に選ばれた。この日は将棋ファン百二十人が詰めかけ、大盤解説会や棋士との指導対局を楽しんだ。
◇加藤桃子(かとう・ももこ)
小学生の時からアマチュア大会で活躍し、注目された。2006年に奨励会に入会し、11年に1級となった。居飛車党で終盤の鋭さに定評がある。通算タイトル獲得は女流王座2期。安恵照剛(やすえ・てるたか)八段門下。牧之原市出身、17歳。
将棋の第2期リコー杯女流王座戦(特別協力・日本経済新聞社)の五番勝負第3局が10日、静岡県藤枝市の藤枝明誠中学校・高等学校で指され、午後5時45分、106手までで後手の加藤桃子女流王座(17)が挑戦者の本田小百合女流三段(34)を下し、3連勝で初防衛を果たした。
持ち時間各3時間のうち、残りは加藤女流王座が12分、本田女流三段が4分。
定刻の午前10時、立会人、神谷広志七段の合図で対局が始まった。序盤の駆け引きを経て戦型は角換わり腰掛け銀に。先手が早々に飛車先の歩を2五まで伸ばす、珍しい形になった。
加藤女流王座が一度は攻め掛かったが、うまくいかないと見て辛抱(52手目7四歩)。先手ペースだったが、本田女流三段が1五歩〜1四歩(53〜55手目)と攻めたのが甘かった。加藤女流王座が5五銀直(56手目)から強烈な攻めを披露。一気に先手陣を切り崩し、女流王座戦2連覇を達成した。
本局の対局場は、4年前に亡くなった加藤女流王座の父が勤めていた学校。父の康次氏は加藤女流王座と同じく奨励会で修業したことがあり、学校では棋道部顧問として藤枝明誠を強豪校に育てた。加藤女流王座は奨励会に入会するため小学6年生で上京する以前、休日に父に連れられて学校を訪れ、棋道部の練習にも参加していた。
思い出の地で初防衛を果たした加藤女流王座は「今日も、父がどこかで見守ってくれていると思っていた。先生方や生徒さん、地元の方々が応援してくれる中で3勝目をあげられて本当にうれしい」と喜びを語った。
本田女流三段は女流棋士生活21年目にして初めてタイトル戦の大舞台に登場したが、惜しくも初タイトルには手が届かなかった。