アイドルグループ・ももいろクローバーZの人気が止まらないようだ。彼女達のファンの中には、一般人のみではなく、芸能人のファンも多いそうだ。
昨今、俳優の賀来賢人さんやCMで話題の子役・しずくちゃんまでもが“ももクロファン”だと明かしている。
ドラマ「らんま1/2」や「クローバー」で主演する他に映画でも活躍するイケメン俳優、賀来賢人さん。そんな彼が自宅の様子をビデオで紹介した所、「ももクロカラーのキャンドルです! 『れに かなこお〜 しおり あやか ももか』」と楽曲「行くぜっ! 怪盗少女」のフレーズを披露したのだそうだ。
そして「第52回ACC CM FESTIVAL」でタレント賞を受賞した子役のしずくちゃんは、しずくちゃんは夏菜子さんの缶バッジをつけるほど彼女のファンであり、出演者で初めて夏菜子さん推しのファンがいたことに百田夏菜子さんも感激していた。
また、「おばたりんこちゃんの彼氏がももクロのDVDを持っているのでそれを観てます」と裏話を明かして周囲を笑わせたとの事だ。
さらに小説家や俳優として知られるリリー・フランキーさんやジャニーズアイドルの手越祐也さんや三宅健さんもファンなのだそうだ。
これによる2ちゃんねるの反応
「ごり押しっぷりはAKB越えてるな」
「何年か前のAKB上げの記事を思い出す。」
「AKBの次はこれだと思ってるんだろ。まあ間違いではないが」
「ポケモンの歌うたってるから子供にも人気あるらしい」
「ももクロはビジュアルやばい」
AKB48に続くアイドルグループではないか、などの声が寄せられているようだ。
芸能人、子役にまで人気のあるももいろクローバーZ。彼女達の人気がどこまで増えていくか、楽しみだ。
目標としていた紅白出場も手が届かんばかりに、快進撃中のアイドルグループ、「ももいろクローバーZ」。彼女たちのファン層は老若男女と幅広いが、その中でもユニークなのが、中年男性、それもこれまでアイドルに興味のなかったオヤジたちが、「人生が変わった」というほど熱狂している点だ。劇作家で、コピーライター、クリエイティブ・ディレクターでもある鈴木聡も、その一人。今月上旬には「ももクロ」にはまったオヤジたちの群像劇、その名も「おじクロ」という芝居を書き、演出する彼に、自身を含め、オヤジたちが今、なぜ「ももクロ」にはまるのか、そして何を求めているのかを聞いた。
鈴木聡(以下、鈴木):
きっかけは、何かに載っていた、ドランクドラゴンの塚地武雅さんの写真です。僕は芸人さんとして塚地さんが大好きなのだけど、その彼が、人間、ここまで楽しそうな顔ができるのか、というくらい幸せそうな顔をしていて、それがももクロのライブに来た時の写真でした。いったい、ももクロの何がそんなに人を夢中にさせるのだろうと興味を持って、ユーチューブのコメントやアマゾンのレビュー欄を覗いてみると、「感動した!」「号泣した!」「ももクロによって生きる勇気が出てきた!」と、非常に熱いコメントが並んでいる。それもいい年をしたおじさんたちが、「これまでアイドルには興味がなかったのに」というとまどいを交えながら語っていて、これはいったいどういうことなんだろう、とDVDを取り寄せてみたら…僕もはまってしまったんですね(笑)。 まずは、彼女たちのパフォーマンスにしびれてしまった。その「全力ぶり」というのが、他では見たことがないような迫力だったんですよ。しかもそれを、もんのすごく楽しそうにやっている。全力であることを楽しんでいるんですね。そして、メンバー5人中4人が高校生と言うこともあってか、どこか部活をやっているような、良い意味でのアマチュアスピリッツも漂う。突出した美人というわけでもないので、異性として見たり、彼女にしたいというより、高校野球の球児に対するような、「親戚の子」的親しみが湧いて、応援したくなってしまうんです。
「全力で生きろ、そして楽しもう!」――大人だからこそ痛感する、ももクロのメッセージ
自分自身、高校生の女の子のファンになっちゃうなんて意外でしたし、他のオヤジファンたちも「こんなはずではなかったのに」とおろおろしているようですが、僕が思うに、ももクロのオヤジファンというのは、彼女たちの中に、自分たちが失ってしまったものを見出しているのでしょう。「もう自分には戻ってこない青春」ですね。高校野球を見るときと同じです。そして、彼女たちの全力投球ぶりを見ているうち、実際は彼女たちは決してそんなことは言わないだろうけど、「おじさんたち、ちゃんと生きてる?」と問いかけられているような気さえして、反省したり、奮い立ってしまう。人生観が変わるんですね。 今は経済にしても何にしても、いろいろ厳しい時代で、希望を持ちにくい。けれども、ももクロのパフォーマンスには、ともかく自分が全力を尽くす、そして結果ではなく、全力を尽くすこと自体を楽しめばいいんだ、というメッセージがある。これは大人だからこそ、強く感じるのかもしれません。
――現代社会の在り方に対するアンチテーゼ、ということでしょうか?
鈴木:
競争があったり、それに勝たなくちゃいけないというムードに対してですね。ももクロは、グループ全体を応援する「箱オシ」のファンが多いんです。個々のメンバーがそれぞれにファンの数を競い合う感じではない。ライバル関係というより、一丸となって頑張る関係ですね。当人たちいわく、彼女たちは互いにではなく、「次々と試練を与えてくる大人(スタッフ)たち」と戦っている。彼女たちの歌は、転調につぐ転調で、僕らが気軽にはカラオケで歌えないほど難しいし、ダンスも本当にハード。ステージも次々と大きい会場で行っていて、常に無理難題をふっかけられているけど、彼女たちはそれらに、飛び切りの笑顔で飛び込んでいっている。その様が、大人たちの心に響いてるんです。
――AKB48とは本質的に違うのでしょうか。
鈴木:
相当違いますね。AKBにはAKBの面白さがあって、あのグループはある意味、現代社会の縮図としてとてもよくできている。きれいな女の子たちの競争関係があって、総選挙があってというのがファンの関心でもあるし、彼女たちのがんばりどころでもある。けれどももクロにとっては、誰がセンターをとるかみたいなことより、5人で目の前のファンに対して、いかに全力でパフォーマンスできるかが大事。僕から見れば、メジャーになって行こうなんていう野心もあまり感じられない。一応、紅白出場が目標とか言ったりはしているし、今年はそれがかないそうな雰囲気もあるにはあるけど、彼女の姿勢には、小劇場劇団の姿勢と相通じるものがあるんです。僕らは、気の合う仲間と自分たちの面白いと思うことを、自分たちのお客さんたちのためにやっていこうというスタンスがベースで、メジャーになることが第一の目的ではない。ももクロは小劇場のスピリッツを持ったアイドルだという気もします。
――スピリッツとは別に、例えば音楽面など分析した時、ももクロに特徴的な部分はあるのでしょうか?
鈴木:
時代性の反映、という部分はありますね。20年ほど前に比べて、今は「こんな生活をしたい」という夢がかなう可能性がとても低くなっているから、みんな大それた夢を抱きにくい。子どもたちも、傷つくことを恐れて、恋愛にも消極的だし、どうせ実現しないだろうと夢を見たがらない。僕らが学生のころなんて演劇やってたりして将来のことなんて全然考えていなかったけど、今の子供たちは非常に計画的に資格をとったりしている。大人たちも同じで、現実というものがものすごく重くなってきています。その反動なのでしょう、文化や娯楽といったものには、どんどん現実とは違う世界に連れていってくれるものが求められている。その最たるものが、映画の3Dですが、音楽もドラマも広告も、「じっくり考える前に、どこかに連れて行って現実を忘れさせるもの」が人気ですね。映画やドラマのシナリオは圧倒的に複雑な構造になってきているし、CMだってワンカット1秒ないような、おびただしい情報量になってきている。聴衆・観客の側はそれに慣れてしまっているから、ゆったりしたものだと物足りない。ももクロの音楽もまさにそう。この前、プロの音楽家がももクロの曲を聴いて「1曲の中に5曲分くらいのメロディや転調があるね」と言っていたけど、退屈させない工夫がものすごいんです。
――さきほど、ももクロに親しみを感じる理由の一つに、小劇場的なスピリッツを挙げておられましたが、鈴木さんはどんな芝居を目指しているのですか?
鈴木:
テレビや広告はマスメディアの宿命で、「今、何千万人の人に伝わること、何千万人が興味を持つこと」を追求しなければいけないけれど、演劇というのは自分でお客さんも、内容も決められる。その時、その時に僕の思っていることを一番早く表現できる、自由なメディアです。僕は学生時代から、演劇が一般の人から「浮世離れしている」「自分には関係ない」と思われがちで、特に働いている男性に、一度も劇場に足を運んだことがない…と言う人が多いのを残念に思っていました。僕の役割は、普通に働いている大人を説得できる演劇を作ること、演劇マニアではない人たちを劇場に連れてくることだと感じています。コメディとして笑えることはもちろん、心の機微にも触れて、現実の大人の人生に拮抗できるような、深みや苦みがある。だけども全然難しくない、しゃれたエンターテインメント…というと、ずいぶん高いですね、志(笑)。でも実際、うちの劇団は大人の男性客が多いです、特におひとり様が。公演には毎回、仕事帰りの男性サラリーマンたちが、当日券売りに並んでくれます。俳優陣にイケメンがいないっていうこともあってか、「舞台の上に俺がいる」と重ねてみてくれている人が多いみたいです。若いころにね、僕はこの世の中の仕組みが、つまらないと思っちゃったんですよ。なんでみんな競争するんだろう。競争なんて、経済成長なんてやめちゃえば? とさえ思う。でも、競争がなければ社会は成立しない。それならそれをいかに面白く見ていくか、というのが僕の考え方なんです。僕は悪人を書けないのが弱点だと言われているんですが(笑)、これは僕の性分で、どんなに嫌な人でも、弱いところとか、愛嬌のあるところがある筈だと思いながら描いてしまう。たとえば、ものすごく威張っている人が、しゃっくりが止まらなくなったら? そうすると、面白い方に転ぶじゃないですか。嫌な人でも、その時々の観点や付き合い方によって変わってくると思うんですよ。変な話だけど、そんなふうに考えるようになったきっかけは、小学生の頃、熱いお風呂に我慢して入っていて、水を飲んだらとびきり「おいしい」と思えたこと。ふと、「今、僕は砂漠の中を歩いてきて、のどがカラカラの状態でこの水を飲んだとする。するとこの水にはとてつもない、100万円くらいの価値がある。(世の中を見るカギは)これじゃないか」とひらめいたんです(笑)。そう考えれば、どんなにネガティブなことも面白がれるし、楽しくなる。「長屋の花見」の精神かな。僕は落語も好きなんだけど、落語の登場人物たちってみんな貧しくて、頭もよくない(笑)。客観的に見たら全然悲壮なのに、熊さん八つぁんたちは実に楽しそうに生きているじゃないですか。ラッパ屋の芝居も、出てくる人たちは全然さえない、普通の人たちだけど、目線を変えればちょっと風通しがよくなる、というところを見せたりできればと思っています。現実を忘れさせるんじゃなくて、現実が楽しくなる、楽な気持ちになる芝居を作ろうとしているのかな。
――そのラッパ屋が、今回は「ももクロ」をどう劇化するのでしょう?
鈴木:
周囲の人たちに僕が「ももクロ」の話をすると、その熱さにみんなどんどん引いていくんですよ。「疲れてるんじゃないの?」って(笑)。そんなことも体験しているので、そういう「いい年をして、何」という視線も大事に、熱く語り過ぎないようにしながら、おじさんたちがももクロのライブをするに至る経緯を、どういう気持ちでということをためていきながら描いていきます。おじさんたちがダンスに挑む意味を、ドラマチックに見せられれば。ももクロ同様、全力で、笑顔で取り組む。それを楽しむということがメッセージになれば、と思います。
――さきほど、ダンス稽古をちらっと拝見しましたが、40代、50代の役者さんたちがとても楽しそうに踊っていました。
鈴木:
エビぞりジャンプももちろん、します…たぶん(笑)。けれど、中年オヤジの肉体には、相当危険なダンスです。かなりの覚悟と決意で踊っています。まったく、ばかばかしいでしょう? でも、ちょっとすがすがしくもある。「このオヤジたち、ここまでやるんだ。俺も頑張ろう」と、元気になれると思います。応援歌、ですね。大人たちへの。
鈴木 聡(すずき さとし)
1959年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。サントリー「ワンフィンガー、ツーフィンガー」ホンダ「インテグラ、ノッテグラ」「こどもといっしょに、どこいこう」など代表作多数。1983年、サラリーマン新劇喇叭屋(現・ラッパ屋)を結成。現在はCMプランナーとしても活躍しつつ、演劇、映画、テレビドラマ、新作落語などを幅広く執筆。代表作にミュージカル「阿 OKUNI 国」、NHK連続テレビ小説「あすか」「瞳」など。「あしたのニュース」「八百屋のお告げ」で第41回紀伊國屋演劇賞個人賞、「をんな善哉」で第15回鶴屋南北戯曲賞を受賞
「ラッパ屋」という劇団をご存じだろうか。圧倒的に女性客に支えられている日本の演劇界において、彼らは「30代以上の男性サラリーマンたち」をコアな客層とする、稀有な劇団だ。主宰者の鈴木聡の、ごく普通の人々の日常を時にユーモラス、時に切なく描き出す作風と、口跡明瞭な俳優陣の確かな演技力が魅力で、サラリーマンはもちろん、広告業界や芸能界にも熱烈なファンが多い。(2010年の公演ちらしには、俳優の大泉洋、作家の角田光代ら各界からの「ラッパ屋愛」コメントが並んでいる)。そんな彼らが次に扱うテーマが、今、一番旬なアイドルともいえる「ももいろクローバーZ」。それぞれに事情を抱えたおじさんたちが、思いがけずももクロにはまり、紆余曲折を経て、最後にはももクロダンスを踊ってしまう…というコメディだ。作者の鈴木はもともとアイドルには興味がなかったが、ひょんなことからももクロに出会い、分析するうち、自身もすっかりのめりこんでしまったという。