巨人からドラフト1位指名を受けた東海大の菅野智之投手(23)が5日、他の指名選手とともに川崎市内のジャイアンツ球場と寮など球団施設を見学した。昨年のプロアマ交流戦で1度訪れていたが「その時と違って、自分もジャイアンツの一員になれたと実感が湧きました」と喜びをかみしめた。室内練習場ではさっそく“ブルペン入り”。プレートに足を置き、マウンドの感触を確かめた。「日本一のチームにふさわしい選手になりたい」と力強く宣言。いよいよ「巨人の菅野」が始動した。
強い決意がにじみ出ていた。2年越しで念願の巨人入りを果たしただけに、全てが感激の対象になった。練習施設を見ては「来年からここで目いっぱいやりたい」と意欲満々。見学を終えた菅野は、迷うことなく口にした。日本シリーズの感想を聞かれると「日本一のチームに入れて光栄ですし、日本一にふさわしい選手、そして人間になりたいと思います」。と声を弾ませ、目標の選手には沢村を挙げると「ああいう舞台でここ一番の投球ができるのはすごい。来年一緒に巨人でプレーできれば毎日勉強させてもらえる」と目を輝かせた。2年越しの目標を果たしたルーキーが、新たなステージへの一歩を踏み出した。
昨年8月31日、巨人とのプロアマ交流戦以来となるG球場の訪問。先発した菅野は大田、中井らと対戦し3回1失点と好投した。「あのときは東海大の選手。今回見学して、改めてジャイアンツの一員になれると実感が湧いてきました」。室内練習場では、藤田寮長から促されてブルペンに立つ場面も。マウンドの感触を確かめ「本当に施設が充実しているし、早くここで野球がしたい」と気持ちをはやらせた。
躍動する先輩たちの姿に胸を打たれた。日本シリーズは東海大の寮で全試合テレビ観戦。中でも1歳年上で同じドラフト1位の沢村の力投に強烈な印象を受けた。「ここ一番の大舞台でああいうピッチングができるというのは、やっぱり何かある。これからは同じグラウンドでプレーできるので、毎日勉強させてもらえると思う」。大学2年時の大学全日本合宿で知り合って以来、親交の深い剛腕からすべてを学ぶつもりだ。
もちろん、背番号19を与えられた意味も理解している。今年は浪人していたため、実戦感覚が問題視されているが、「今は不安より希望の方が強い。年間を通して活躍したい」と言い切り、開幕ローテーション入りを視野に入れた。
かつて19番を背負った上原はルーキーイヤーで20勝(4敗)を挙げ、沢村賞と新人王をダブル受賞。沢村も新人王を獲得した。2人の先輩のように周囲を認めさせる成績を残し、黄金ルーキーの系譜を継ぐ覚悟はできている。
巨人はもはや、憧れの対象ではなくなった。ドラフト直後はホッとしたというが「今は身が引き締まる思いです」と言う。トレーニングは継続して行っており、1年目から力を発揮すべく統一球を使った練習もメニューに取り組んでいる。
東京ドームでの練習に参加していた伯父でもある原監督は「彼はウサギと亀で言ったら亀で、本当にコツコツと努力するタイプ」と評した。オフの過ごし方も「けがをしない体作りが一番の目標。もう1度見つめ直していきたい」と準備に抜かりはない。じかに巨人に触れ「今は不安より希望の方が強いです」と、思いをさらに強くしていた。
昨年は日本ハムからのドラフト指名を拒否し、1年間の浪人生活を送った。ブランクを心配する声もあるが「今は不安より希望の方が大きい」とキッパリ。「いつかは、という思いでこの1年間やってきた。いつかは自分もああいう舞台で投げられるように頑張りたい」とプロでの飛躍を誓った。