日本人の遺伝的な系統はアイヌ(北海道)と琉球(沖縄県)が縄文人タイプで、本州・四国・九州は縄文人と弥生系渡来人との混血とみられることが、東京大などのゲノム(全遺伝情報)解析で分かった。約100年前に提唱された「アイヌ沖縄同系説」を裏付ける成果で、1日付の日本人類遺伝学会誌電子版に論文が掲載された。
日本人の成り立ちについてドイツ人医師のベルツは明治44年、身体的特徴の共通性からアイヌと琉球は同系統と指摘。人類学者の埴原(はにはら)氏は平成3年に「二重構造説」を提唱し、本州などでは弥生時代以降に中国や朝鮮半島からの渡来人と先住民の縄文人が混血したが、アイヌや琉球は遠いため混血が少なく、縄文型の系統が残ったとした。
今回の結果はこれらの仮説を高い精度で裏付けるもので、日本人の起源を探る上で貴重な成果という。仮説はこれまでもミトコンドリアDNAの分析結果などで支持されてきたが、はっきりしていなかった。
研究チームはアイヌ系36人、琉球系35人のゲノムを解析し、DNAの個人差を示す60万個の一塩基多型(SNP)を調べ、本州・四国・九州の計243人や韓国人などと比較した。その
結果、アイヌと琉球が遺伝的に最も近縁で、本州などは韓国と琉球の中間と判明。アイヌは個人差が大きく、北海道以北の別の民族との混血が起きたとみられることも分かった。
研究チームの斎藤成也総合研究大学院大教授(遺伝学)らは縄文人の骨からDNAを採取して解析中で、斎藤教授は「分岐や混血の年代を推定して日本人の変遷を明らかにしたい」と話している。
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アイヌ沖縄同系説を知ると逆上する沖縄の人がいる。その理由は、劣等感的優越心から来るアイヌ人蔑視の感情と縄文人という言葉への情緒的反発である。
そういう人は無視するに限るが、アイヌや琉球は遠いため混血が少なく、縄文型の系統が残ったとしている点で、誤解を招く恐れもある。それはアイヌ人は異民族と認められたが、沖縄人もそうではないかというものである。
沖縄県内には人間を動物的血統証ないしは遺伝情報で語ろうとする人々がいる。人間は文化的生き物であり、その系譜は文化史的思想的に捉えなければならない。従って、アイヌ人が異民族なら沖縄人も異民族だと主張する場合、それは文化史的思想的に説明しなけれならないはずである。
すると、アイヌ人の言語と宗教は、本土とは明らかに異なり、これを異民族とした国連も日本政府も正しいだろう。しかし沖縄人は本土と言語も宗教も同じである。文化的相違を唱える人もいるが、その文化とは風俗や慣習や行事などであって、その違いは情緒的反発の域をでないほどのものである。その意味で、沖縄人が異民族とするのはあやしい。