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日銀の金融政策に縛り? 政府と初の共同文書「デフレ脱却に向けた取り組みについて」

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 政府・日銀は30日の金融政策決定会合で「デフレ脱却に向けた取り組みについて」と題した共同文書をまとめた。両者が連名で声明を出すのは初めて。デフレからの早期脱却が「極めて重要な課題であるとの認識」を政府・日銀で共有していると強調。「一体となって(デフレ脱却という)課題の達成に最大限の努力」を行うと定めている。

 共同文書で日銀は消費者物価の前年度比上昇率1%を目指して「強力に金融緩和を推進する」との従来の表現を踏襲。政府側も「デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠」と構造改革への決意を示している。日銀も政府もこれまでの表現を繰り返しており、新味には欠ける。

 ただ、市場関係者は「文書を締結したこと自体が重い意味を持つ」とみている。日銀総裁と財務相が連名で物価や金融政策に関して文書を出すのは初めて。文書に縛られ、日銀は今後、政府が追加緩和を要求した場合に協力を余儀なくされるとの見方が多い。ある政府関係者は日銀が政府に協力することを誓約した「事実上のアコード(協定)だ」と解説する。

 アコードとは、1950年代に米財務省と米連邦準備理事会(FRB)が結んだ協定を指す。米財務省が戦費調達のため、金利を低く抑えるようFRBに求めていたのをやめ、FRBの独立性を保つきっかけとなった。

 アコードで政府からの独立性を得たFRBとは逆に、日銀にとっては政府の影響力が強まる形の今回の文書がアコードと呼ばれるのは皮肉な面もある。白川方明総裁は記者会見で共同文書について「政府と日本銀行が共有している認識を改めて明確に示すもの」と述べ、これまでと変わりは生じないと説明。政府側との微妙な認識のズレが浮き彫りになった。


 日銀の白川方明総裁は30日の金融政策決定会合後に記者会見し、金融緩和を決めた背景や新しい貸出制度などについて説明した。主なやりとりは以下の通り。

◎きょうの会合でまとめた展望リポートについて概略を説明してほしい。

 展望リポートについては、佐藤健裕、木内登英の両審議委員が反対意見を示した。2014年度にも消費者物価の前年比(上昇率)が1%に着実に近づくとの記述に反対し、コミットメント(必達目標)に関わる文言を変更すべきだと判断したためとしている。この詳細については、次回会合後に公表される議事要旨をみてほしい。景気の先行きは当面横ばい圏内にとどまるが、今回の金融緩和の措置も踏まえれば、国内需要は全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱するにつれ、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価の先行きについては、マクロ的な需給バランスの改善を反映し、消費者物価指数の前年比上昇率が徐々にプラスに転じる。14年度には中長期的な物価安定のめどである1%に着実に近づいていく。

◎日銀と政府による「デフレ脱却に向けた取組について」を公表した狙いは。

 政府と日銀はデフレから早期に脱却し、物価安定のもとで持続的な成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるという認識を共有してきた。今回はこの認識を改めて明確にする狙いがあった。この『共通理解』とも呼ぶべきものは、課題の克服に向けて政府と日銀が最大限の努力を行うことやそれぞれが果たすべき役割について明確にしている。これによって、それぞれが行う政策がより効果的になる。デフレから脱却し、経済が成長経路に復帰することは、幅広い主体による努力と金融面からの後押しがあいまって実現する。日銀は金融面での不均衡が蓄積していないことを確認したうえで、当面は消費者物価の前年比(上昇率)で1%を目指して、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れを通じて、強力に金融緩和を推進することを改めて示した。日銀としては、政府との十分な意思疎通をはかりながら、自らの判断と責任の下でその使命をしっかりはたしていきたい。一方、政府には、デフレを生み出しやすい経済構造を転換するという点から、思い切った規制緩和や成長力の強化に向けた取り組みを強力に推進することを強く期待したい。


◎「デフレ脱却に向けた取組について」という文書は政府と日銀によるアコード(政策協定)と考えていいのか。

 アコードの定義は定かではない。いわゆるアコードは、中銀の独立性の意識が高まる中で、米国が国債金利の上限維持規制を撤廃するために、1951年に米連邦準備理事会(FRB)と米財務省が示したものを指す。つまり、FRBが政府からの独立性を回復したというのがアコードである。今日示した文書は、デフレ脱却に向けた当面の取り組みについて、両者の共通している認識を改めて確認するものだ。


◎「貸出増加を支援するための資金供給」の制度の新設を決めた。

 金融機関の積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要を促すことが狙いだ。新しい枠組みでは、金融機関の希望に応じ低利で長期にわたって貸し出す。規模については、上限を設定せず無制限とする。執行部に対して、新たな枠組みについて具体的な検討を行い決定会合で報告するように指示した。金融機関の貸し出しを見ると、国内金融機関の貸出残高は、この1年間に15兆円増えた。こうした実績を踏まえると、新しい枠組みのもとで金融機関が資金供給を受けられる額は15兆円程度。既存の『成長基盤強化を支援する資金供給』の5兆5000億をあわせ、『貸出支援基金』の規模は20兆円程度になる。貸し出しがこれまで以上のペースで増えれば、その規模は20兆円を超えて、増えていくことになる。

◎貸出増加支援の枠組みは従来の成長基盤強化支援と似ている。

 両者は補完関係にあると考えている。わが国の金融環境の一層の活用を促すという点では共通している。貸出増加を支援するための資金供給は、貸し出しのネット(正味)の増加について、金融機関が希望する分だけ低利かつ長期の資金を総額無制限で供給する。確かに(成長基盤強化支援と)一部分重なる面はあるが、金融緩和の実体経済への波及をあらゆる視点から強める努力が必要だ。


■社説 追加金融緩和 いかにも中途半端だ 東京新聞

 日銀が二カ月続けて金融緩和を決めた。政府の財政出動が期待できない中で欧米並みの大胆な緩和が期待されたが、とても十分とはいえない。物価安定のインフレ目標を引き上げるべきだ。

 大胆に十五兆円以上かと期待された資産買い入れ基金の増額は、中途半端な十一兆円−。「アリバイづくりではないか」と思えてしまう対策である。

 日銀が異例の二カ月連続の追加緩和に踏み切ったのは、世界経済の減速に日中関係の悪化も加わり、景気と物価の先行き懸念が強まったためだ。政府の緊急経済対策に歩調を合わせ、強力な緩和策が待ち望まれていた。

 それなのに出てきたのは、国債などの資産買い入れ基金の小幅増額と、金融機関の貸し出し増加を促す新たな基金創設である。「日銀も対策は打ってます」というような姿勢では、デフレからの脱却はもちろん、景気の下支え効果も期待できない。

 日銀は同日、二〇一四年度までの物価見通しが0・8%上昇と、目標の1%には届かないと発表した。デフレはすでに十五年に及ぶが、この先も脱却への道筋が描けていないということだ。

 今回の追加緩和で、資産買い入れ基金は九十一兆円になった。国債に加え、比較的リスクの高い上場投資信託(ETF)などの購入枠拡大も決めた。基金は一〇年十月の創設以来、小出しに規模を拡大してきた。だが基金以外のところで資金を絞っているため、基金の拡大ほど緩和はされていない。

 これは欧米との比較でも明らかだ。リーマン・ショック後にどれだけマネーを供給したかをみると、欧州中央銀行(ECB)は約二倍に、米連邦準備制度理事会(FRB)は約三倍に増やしたが、日銀は横ばいに近い。短期間に強力な緩和を行った欧米との落差は顕著だ。やはり物価目標を現行の1%から、他国並みの2〜3%に引き上げるべきである。

 日銀と政府は、デフレからの早期脱却に向け「一体となって最大限の努力を行う」とする共同文書を発表した。両者が政策目標を共有するのは当然であり、今更との感はあるが歓迎したい。政府が経済政策に沿ってインフレ目標を日銀に働きかけ、日銀がその政策手段を決め実行していく。

 デフレの十五年は、政府が日銀の金融政策をそしり、日銀はアリバイづくりに終始した。そんな不毛な関係に終止符を打つことが第一歩になる。























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