識名トンネル工事虚偽契約問題の真相究明を図る県議会の調査特別委員会(百条委員会)では、問題の発端とみられる工事契約直後の工法変更に議論が集中している。工法変更の経緯や評価をめぐり県と業者の意見は真っ向から対立し、新たな波紋を呼んでいる。
県は2006年12月の工事契約からわずか3週間後、トンネル本体の着手前に工法変更を協議するとして、受注業者の大成建設共同企業体(JV)に工事中止を指示した。その後の施工技術検討委員会で工法変更が決定、新工法による工事が行われた。大成JVは、変更前の工法での積算に基づき、47・2%の低入札率で工事を落札していたため、工法変更は想定外として新工法採用で発生した追加費用に、当初の低い請負率を乗じた県の手続きに反発した。その結果、工事終了後に別件工事として随意契約することで合意した。この随意契約が虚偽契約として追及されている。
9月25日の第4回百条委で県は「工期は短く、工費も安くなる」と新工法を評価し、4400万円工費が抑制されたとする。一方、11日の第5回に出席した大成建設側は、新工法について「明らかに工事費が上がり、工期は延びる」と指摘したとし、実際に工費が約5億円かさんだと主張した。両者は正反対の見解を示している。
工法変更はどのように決定されたのか。県は「施工技術検討委員会の提言で変更を検討した」とし、大成側は「意見を言う立場になく、県の指示に従った」とするが、両者とも核心部分について曖昧な返答を繰り返し、具体的な説明はない。
契約直後の工法変更について、県土木建築部関係者でさえも「これまで聞いたことがない」と口をそろえる。異例な変更がなぜ可能だったのか、虚偽契約との関係はあるのか−が今後の焦点となる。
不可解な工法変更過程を明らかにするため、次回以降の百条委は、工事設計を請け負ったコンサルタントや、問題当時の土建部幹部や現場担当者を参考人として招致する。さらに12月から、出席拒否や証言拒否、うその証言に対して罰則が科される証人尋問が始まる。補助金適正化法違反と虚偽公文書作成・行使の疑いで県警が捜査を続ける中、百条委での真相究明は山場を迎える。