厳しい冷え込みが続く東日本大震災の被災地で、仮設住宅の貯水槽設備のポンプが動かなくなったり、水道管が凍結したりするケースが相次いでいる。
岩手県沿岸部では、給水車が出動する事態も起きた。凍結防止策が不十分で、平年以上の寒気に耐えられなかったようだ。
岩手県山田町の中山間地にある織笠第7仮設団地(72戸)では1月26日未明、突然27世帯が断水した。住民が町役場に連絡、業者が調べたところ、寒さで貯水槽のポンプが動かなくなったのが原因と判明した。
入居者の主婦(42)
復旧がいつになるか分からず、夕飯は親類の家まで行って食べた。
漁業の男性(61)
トイレの水が流せないので、車で近くの川まで行き、バケツ2杯の水をくんできた。
復旧までに半日かかった。
読売新聞の取材では、今月6日までに、釜石市、陸前高田市、山田町、田野畑村の岩手県4市町村の仮設住宅で、貯水槽設備の凍結などが原因で断水し、計5回、給水車が出動した。津波浸水区域を避けて高台に建てられたが、山林などに遮られてあまり日が当たらず、冷たい風が吹き付けるような場所が多い。県は、貯水槽に凍結防止ヒーターを設置するなどした。
貯水槽の凍結などによる断水は、宮城や福島の仮設住宅でも起きている。宮城県石巻市や気仙沼市、南三陸町でも給水車が出動。福島県二本松市と本宮市にある同県浪江町の仮設住宅では、町がペットボトルの水を配るなどした。福島県から仮設住宅の修繕を委託されているNPO法人には、1月末までに、水道管の凍結に関する相談が460件寄せられているという。
1月13日と30日に相次いで断水した岩手県釜石市の栗林第4仮設(111戸)では、貯水槽に水を送る水道管が凍った。直径15センチの本管で、地表に敷設されていた。給水車が出動し、市職員がポリ袋に10リットルの水を入れて配布した。
入居する男性(61)
『また凍結するのでは』と心配で、風呂に水をいつもためている。
入居者が水抜きをしても、配水管に水が残り、凍結する事例も起きている。
県建築住宅課
例年にない寒さで、想定していなかった不具合が起きている。今後も一つひとつ対応していくしかない。
釜石市では1月、計4日(平年1・4日)の真冬日と、氷点下9・8度の最低気温を記録した。今月9日の最低気温は同5・0度。厳しい寒さが被害拡大に追い打ちをかけている。
(2012年2月10日 読売新聞「「トイレ流せない」厳寒仮設、凍結・断水に悲鳴 : 社会」より)