東日本大震災からの復興の司令塔となる「復興庁」が10日、始動した。被災地が申請する復興交付金などを一括して受け付ける役割などを担う。復興特区の第1弾として宮城、岩手両県が申請した計画も認定され、被災地は「復旧」から「復興」を目指す段階に移る。ただ復興庁は権限不足との指摘もあり、省庁縦割りの壁を超えた復興の加速には課題も残る。
東京都港区のビルに入居した復興庁では同日昼過ぎ、野田佳彦首相らが同庁の看板を掛けた。首相は記者団に「被災地の期待にこたえなくてはいけないという、責任の重さをずっしりと感じた」と語った。
復興相に就任した平野達男氏は10日の閣議後の記者会見で「(被災地の)復旧・復興を早く進める。その先頭にたっていきたい」と抱負を述べた。復興政策を巡って省庁の縦割りの弊害が指摘されることについては「解消に努める」との考えを示した。藤村修官房長官も「ワンストップでの対応に全力を尽くす」と語った。
復興庁は東京に本庁、被災地に3つの復興局と支所、事務所を置く。陣容は被災地に設ける復興局なども含めて約250人。被災地の多岐にわたる要望にこたえるため、ほぼ全省庁から職員を集めた。省庁が執行する復興事業の予算を一括して計上して各省に配分。事業の進捗状況もチェックする。
復興政策を巡って復興庁と各省庁の意見が合わなかった場合、復興相はその省庁に勧告する権限を持つ。ただ勧告に強制力はなく、「復興庁は力不足」との見方もある。
政府は、被災地の復興の進み具合を監視する「復興推進委員会」も設置した。被災自治体の首長や有識者らがメンバーとなる。委員長には五百旗頭真・防衛大学校長を起用する方向だ。
復興庁発足について福島県の佐藤雄平知事は10日、記者団に対し「被災者からすると、もう少し早い発足ができたのではと思う」と苦言を呈した。一方で「縦割り行政から一元化に改まる。スピーディーに復興に全力を挙げてほしい」と述べた。
震災復興に向けては、復興特区の第1弾として、宮城県と岩手県が申請した計画が9日に認定された。宮城県の「民間投資促進特区」は県内の34市町村に進出した製造業の法人税を5年間減免するなどして産業集積を目指す。岩手県の「保健・医療・福祉特区」は医師の配置や薬局の面積などの基準を緩和し医療サービスを提供しやすくする。
岩手県の達増拓也知事は「特例措置を有効に活用し、住民の生活に必要不可欠な保健、医療、福祉サービスの再構築を迅速に進める」とコメント。宮城県の村井嘉浩知事は「商業や農業も税優遇を受けられるようにしたい」と新たな特区の申請にも意欲を示す。
(2012/2/10 日本経済新聞「復興庁、首相らが看板掛け 「責任の重さずっしり」」より) :