7日午前8時10分ごろ、福岡県久留米市山川町の建設会社「小林建設」のトイレ内で、手りゅう弾のようなものが見つかった。通報で駆け付けた県警の警察官が発見。爆発はしておらず、けが人はいない。県警は本物の手りゅう弾の可能性があるとみて、爆発物処理班を出動させ、回収作業を始めた。久留米署によると、午前7時25分ごろ、出勤してきた建設会社の従業員がトイレの窓ガラスが割られているのを見つけ、110番した。
1月26日木曜日午後。福岡市博多区の福岡商工会議所で、「暴力団排除の実務Q&A」なるセミナーが開催された。2011年10月までに全都道府県で導入された暴力団排除条例で、企業が暴力団など反社会的勢力(反社)との関係に頭を抱える中、総務担当者らを集めて質疑を通じ、互いに情報を共有し合おうという趣旨だ。
参加者は約80社・約100人。総務部門が5割を占めたほか、法務・コンプライアンス担当、お客様相談室担当、購買担当者なども目立った。業種的には建設会社やメーカー、サービス業がそれぞれ2割、ほかには小売業が1割ほど。
「通販で受けた注文で、当社としては契約を受諾したい。だが配送業者が、送付人または発送先が反社であることを理由に、配送業務を拒否している」「各都道府県にある暴力追放運動推進センターで得られる反社の情報はどこでも同じなのか」――。
参加者100人中、契約書に暴力団排除条項を導入している、と手を挙げたのは、たった1〜2人だったという。
昨年12月に刊行された『暴力団排除条例ガイドブック』(レクシスネクシス・ジャパン刊)を手に、それら具体的な質問に答えたのは、TMI総合法律事務所の弁護士や前警察庁刑事局組織犯罪対策部の担当者、さらに危機管理コンサルタントであるエス・ピー・ネットワーク社の3者。セミナーは東京で昨年12月、大阪でも今月に開かれ、いずれの会場もほぼ満員だった。
セミナーがとりわけ福岡県で注目されているのも無理はない。今月19日には、指定暴力団「五代目工藤会」に対し、福岡県警察本部が殺人未遂容疑で家宅捜索に入ったばかり。11年に全国で起こった発砲事件44件のうち、実に18件が福岡県と、最多を占めている。半月か1カ月に1回、起こっている計算だ。昨年3月には、西部ガス社長宅や九州電力会長宅に手榴弾が投げ込まれるなど、一般人も危害を受けている。また、スーパーゼネコンである清水建設が集中して狙われるなど、建設業関連の被害が多いのも見逃せない。
もちろん、それらすべてが、暴力団と結び付けられるわけではない。ただ被害を受けているのが、地元における建築・土木工事の発注者やゼネコン、その下請けということから類推すると、事業を巡る暴力団とのトラブル、と見るのが自然だろう。
実際に今月17日、福岡県警の薮正孝・暴力団対策部副部長名で発表した「市民・事業者の皆様へ(お願い)」と題したリリースによれば、「建設工事に関連し暴力団関係者等から不当な要求があったときは、県(県警)へ通報する義務が規定されています」と呼び掛けている。
この2月1日からは、改正された「福岡県暴力団排除条例」が施行される(福岡県での最初の施行は10年4月1日)。企業に対しては契約書の書面で、暴排条項を盛り込むことも義務付けられた。また暴力団に対しても、暴力団事務所の新規設置禁止の区域が拡大されたり、暴力団員が県公安委員会の標章の貼られたスナックや居酒屋に立ち入ることすら禁止された。警察は法的な面からも暴力団を追い詰めようと必死だ。
それでも現場の実務となると、対応に困る企業はまだまだ多い。暴排条例セミナーの盛況ぶりは、暴力団との関係遮断に苦悩する企業の現実を表している。
(2012年2月7日 共同通信「福岡で建設会社に手りゅう弾か トイレで発見、けが人なし」より)
(2012年01月27日掲載 東洋経済オンライン「日本一発砲件数の多い福岡県――「暴力団排除条例」対策セミナーに総務担当者が殺到する理由」より)
『今月17日、福岡県警の薮正孝・暴力団対策部副部長名で発表した「市民・事業者の皆様へ(お願い)」と題したリリースによれば、「建設工事に関連し暴力団関係者等から不当な要求があったときは、県(県警)へ通報する義務が規定されています」と呼び掛けている』が、それに応じなかった建設会社「小林建設」を、警察は守れなかった、とすべきするべきだなのだろうか。