法務省は、犯罪捜査に必要な盗聴を認める通信傍受法の適用範囲を拡大する検討を始めた。深刻な被害が出ている振り込め詐欺などの捜査にも使えるようにし、電話会社など通信事業者による立ち会いをなくす。捜査機関による改ざんなどを防ぐ方策も検討する。法制審議会(法相の諮問機関)の議論の結論を待ち、2015年の通常国会への改正案提出を目指す。
振り込め詐欺だけでなく、大規模窃盗団などの捜査では、実行犯から計画立案者までの犯罪組織全体の把握が難しい。被害を抑えるため、通信傍受の活用が必要と判断した。通信の自由やプライバシー保護などの疑問に答える「歯止め策」が、法改正への焦点になる。
現行法は電話や電子メールなどの傍受を認める犯罪を薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4分野に限定。改正で窃盗や強盗、詐欺、誘拐などに広げる。組織犯罪の疑いが濃厚なことが条件になる。裁判所の令状に基づく手続きは変わらない。
早朝や深夜の立ち会いが難しいとの指摘があるため、立会人を原則不要とする。傍受場所は通信事業者の施設に限らず、捜査機関の施設でも可能にする。乱用を防ぐため、傍受したすべての通信内容の裁判所への提出を義務付ける。通信内容は暗号化し、改ざんを技術的に難しくする方向。監視・検証する第三者機関の設置も浮上している。