米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)によると、5日午後4時ごろ、沖縄県宜野座村の米軍キャンプ・ハンセン内の山林に嘉手納基地所属の救難用ヘリコプターHH60が墜落、炎上した。防衛省に入った連絡では、乗員4人のうち3人が脱出し、1人が行方不明。3人のけがの有無も分かっていない。
現場は沖縄自動車道・宜野座インターの北約3キロ。役場がある村中心部まで約4キロ離れている。
沖縄県警は午後5時40分ごろ、墜落現場で機体がほぼ全焼しているのをヘリコプターから確認した。県民に負傷者が出たり、落下物があったりしたとの情報はないという。
嘉手納基地によると、現場は訓練区域内で、墜落したHH60は訓練中だった。米軍消防隊とレスキュー隊が事故に対応しているという。沖縄県によると、夜間は墜落に伴う火災の消火活動を中断しているという。
関係者によると、HH60は2機が救難救助訓練中で、1機が墜落し、落ちなかった1機が救助にあたったとの情報もある。
沖縄県はキャンプ・ハンセンに県基地対策課の職員を派遣。防衛省沖縄防衛局は5日午後5時半ごろ、嘉手納基地に事実関係の究明と再発防止を求めた。
事故現場は米軍施設内。日米地位協定に基づき、基地内には米軍の同意なく入れない。このため沖縄県警や地元消防などもハンセン内には入っていない。
キャンプ・ハンセンは名護市、宜野座村、恩納村、金武町にまたがる海兵隊基地で約5110ヘクタール。実弾射撃演習などが実施されている。
沖縄県基地対策課によると、米軍の航空機事故は1972年の本土復帰後から2012年末現在で計540件。04年8月、宜野湾市の沖縄国際大構内に米軍大型輸送ヘリが墜落し、今年5月には沖縄本島の東海上にF15戦闘機が墜落した。航空機墜落事故は復帰以降、今回の事故で45件目になる。
普天間飛行場ではオスプレイ12機の追加配備が3日に始まり、2機が陸揚げ先の山口県岩国市の米軍岩国基地から到着。当初は残りが5日にも普天間飛行場に飛来する予定だったが、移動はなく、飛行場周辺では5日も抗議集会が開かれていた。また沖縄県と県内27市町村でつくる「沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会」は5日、普天間飛行場へのオスプレイ配備中止を含む計画見直しを政府に要請することで一致していた。
沖縄県の仲井真弘多知事は事故について報道陣に対し「事実確認を今やっている最中。確認してからコメントしたい」と述べた。
◆海兵隊、オスプレイ追加配備を延期
在沖縄米海兵隊は5日夜、今回の事故による県民感情に配慮し、新型輸送機MV22オスプレイ12機の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への追加配備を延期すると発表した。
延期の期間については明言していないが、「オスプレイは優れた安全性能を持つ航空機で、近い将来配備を再開する」としている。
追加配備は計12機を計画しており、3日に2機が岩国基地(山口県岩国市)から到着。残り10機は5日以降に配備される予定だった。完了すれば、昨年10月に配備された12機と合わせ、24機態勢となる。
沖縄県は配備に反対しており、今回の事故で反発はさらに強まるとみられる。
◆ヘリ墜落 政府動揺 オスプレイ追加配備中
五日に沖縄県で起きた米軍ヘリの墜落事故。新型輸送機MV22オスプレイではないものの、墜落の事実は重く、県民の猛反発の中で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)に追加配備中のオスプレイが事故を起こす可能性も想起させ、日本政府はタイミングの悪さに動揺している。基地負担の軽減を求める県民の声は一段と強まっており、普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設問題に影を落とすのは必至だ。
小野寺五典防衛相は事故後、在日米軍司令部に原因究明と再発防止を要請。岸田文雄外相もルース駐日大使に同様の申し入れを行い、ルース氏は「真剣に受け止める」と応じた。安倍晋三首相は迅速な対応をするよう関係部局に指示した。
日本政府の矢継ぎ早の対応は、オスプレイ配備で沖縄を中心に在日米軍に対する国民感情が悪化している中で、事態を重く受け止めている危機感の裏返しでもある。防衛省幹部は「墜落したのがオスプレイだったら、もっと大変なことになっていた」と漏らす。
小野寺氏は記者団に「誠に遺憾だ。米側に原因究明、再発防止を強く求めていきたい」と強調したが「普天間移設への影響は」「ヘリの飛行中止を求めないのか」といった問いには「事故が起きたばかりなので」と歯切れが悪かった。
※HH60
戦地の負傷者を救助し、病院に搬送するための捜索救難ヘリコプター。専門家によると行動範囲が広く、少なくとも400キロ前後は飛行できるのが特徴。米軍嘉手納基地には10年以上前から約10機が配備され、01年からのアフガニスタン紛争にも派遣された。