米エクソンモービルが、過半数保有していた東燃ゼネラル石油の株式の大半を手放すのは、利幅の薄い精製・販売事業を縮小し、高い収益をあげる資源開発部門に注力する世界戦略の一環だ。
日本国内ではガソリンなど石油製品の需要が先細りの傾向にあり、エクソンの事業縮小で一層の業界再編や製油所の統廃合が進む可能性がある。
エクソンは欧米メジャーでもトップクラスの規模を誇る。世界各地で油田やガス田などの権益を確保して開発を行い、生産から精製、販売までを一貫して手がけている。
しかし、石油開発の「上流部門」に比べ、石油精製やガソリンスタンドなどの「下流部門」は収益性が低い。このため欧米メジャーは世界で、新たな資源開発に力を注いでいる。硬い岩盤に含まれる天然ガスの一種である「シェールガス」や少量の原油が混じった砂岩「オイルサンド」などの開発だ。
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で日本での天然ガスの需要が急増するなど、世界的にみてもガス生産が当面増えることなどが背景にある。
エクソンも、すでに米国内や東南アジアなどで精製・販売事業を縮小している。日本でも2004年、東燃ゼネラルを通じて保有していた石油元売りのキグナス石油の株式を売却。08年には同じく、沖縄県で製油所を運営する南西石油の株式をブラジル国営石油会社ペトロブラスに売却した。
日本の石油元売り各社でも、事業を縮小する動きが広がっている。景気低迷や人口減、低燃費車の普及で石油製品の需要が減少しているため、製油能力が過剰になりつつあるためだ。
国内には現在、元売り各社が持つ製油所が27か所あり、原油処理能力は11年9月末時点で日量約450万バレルある。しかし、石油製品の実際の処理は10年の平均日量が約360万バレルと供給能力の77%にとどまる。資源エネルギー庁によると、14年には09年実績に比べ需要が3割以上減少する見通しだ。
エクソンが日本の事業を縮小するのは、「エネルギー供給構造高度化法」も影響している。これは石油処理能力の効率化を求めるもので、東燃ゼネラルも余剰な処理能力の削減が避けられない。他の元売り各社でも製油所の閉鎖や縮小が相次いでおり、今後は生き残りをかけて一層の業界再編が進む可能性もある。
米国の石油大手エクソンモービルと子会社の東燃ゼネラル石油は30日会見し、東燃がエクソンから自社株式の取得など資本関係の変更について説明した。エクソンの東燃に対する議決権比率は約22%に低下する。東燃は日本の石油精製・販売事業について経営の自由度を増し、意思決定を迅速化する。
会見したエクソンのシャーマン・グラス・バイスプレジデントは「日本のプレゼンスは維持する。株の売却については検討していない」などと述べ、今後も東燃株の保有を続けることを明言した。「エッソ」「モービル」など国内のガソリンスタンドのブランドは「少なくとも10年間」は使用を認め、石油精製、石油化学分野での技術サポート、原油調達や製品輸出での協力関係は維持する。
ただ、今回の見直しは需要の減少が続く日本市場にエクソンが距離を置こうとする表れともみられ、業界内では日本からの完全撤退の可能性もささやかれている。
(2012年1月30日 読売新聞「エクソン、資源開発に注力…東燃ゼネラル株売却」より)
(2012.1.30 MSN産経ニュース「米エクソン、日本撤退の布石? 東燃ゼネラル株の保有比率22%に縮小」より)