第2次安倍内閣で最初となる2013年版の防衛白書の概要が明らかになった。中国について「周辺海空域で活動を急速に拡大、活発化させ、我が国を含む国際社会にとって懸念事項」と強調。安倍内閣として中国への懸念を明確に示した。7月上旬に小野寺五典防衛相が閣議で報告する。
白書では、昨年の尖閣諸島国有化以来の中国軍や海洋監視機関の活動について「領海侵入や領空侵犯、さらに不測の事態を招きかねない危険な行動がみられる」と説明。1月に東シナ海で自衛隊の護衛艦が中国軍艦に射撃用レーダーを照射されたことを例示した。
北朝鮮の昨年12月の弾道ミサイル発射をふまえ「技術が進展し、射程は米本土の中西部に到達しうる」と指摘。今年2月の核実験とあわせ「我が国への重大な脅威」と述べ、金正恩体制について「軍事に依存する状況は今後も継続すると考えられる」とした。
こうした情勢に対応するため、日米共同での訓練や警戒監視の拡大など防衛協力強化を強調し、6月の離島防衛訓練も紹介。米軍機オスプレイについて「(昨年の)沖縄配備により、在日米軍全体の抑止力が強化され、地域の平和と安定に大きく寄与」と記した。
■沖縄タイムス社社説[防衛白書]いつまで続く過重負担
防衛省が公表した2013年版防衛白書は、海洋進出を活発化する中国への警戒感が色濃くにじんでいる。
昨年9月の日本政府による「尖閣国有化」以来、中国公船の領海侵入が急増し、日常化した。白書は「不測の事態を招きかねない危険な行動を伴い、極めて遺憾」と強い調子で懸念を表明している。
日中両国の関係は冷え切っている。中国に対する日本の警戒感や不信感は何に由来するのだろうか。
白書が指摘するのは中国の軍事力の「透明性の不足」であり、「国際法秩序とは相いれない独自の主張に基づく対応を示している」ことである。その結果「日本を含む地域・国際社会にとっての懸念事項」になっていると白書は指摘する。
周辺諸国の懸念や警戒心を解くためにも、中国は軍事費の透明性を高め、国際社会に向かってその内容を積極的に説明する必要がある。同時に日本側も軍拡競争を招かないための信頼関係の構築に積極的に取り組まなければならない。
白書では安倍政権が集団的自衛権の行使に向け議論を開始したことや、ガイドラインの見直し、敵基地を攻撃する能力を自衛隊に持たせる議論が行われていることにも触れている。
これらの動きに私たちは、この政権が持つ危うさを感じざるを得ない。国会論議も不十分なまま、既成事実の積み重ねによって憲法の平和主義が脅かされるようなことがあってはならない。
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備については1節2ページをあて、配備の意義や安全性を強調している。
白書はオスプレイの機能がいかに優れているかを数字で示し、抑止力向上につながることを強調する。だがここには訓練にさらされる地元住民の視点はない。
安全性について「十分に確認された」とするが、日米で合意した約束事さえ守られていないのが現状だ。県が運用ルール違反を国に指摘、調査を求めた。これに対し、日米から非公式に「ルール違反はない」との回答が寄せられている。合意には「運用上必要な場合を除き」などの文言があり、運用上必要であれば違反にはあたらない、というのが米軍側の解釈だ。
追加配備にも言及しているが、仲井真弘多知事らは白書が公表された9日、国に見直しを求めている。
白書では、普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた公有水面埋め立ての申請、嘉手納基地より南の施設・区域の返還計画なども記している。しかし、これらは県内移設が前提で、目に見える形での負担軽減につながらず、半永久的に過重負担が続くことになる。
白書から見えてくるのは、日米の軍事一体化と基地機能の拠点集約化だ。
白書は、日本周辺の安全保障環境が「一層厳しさを増している」とし、抑止力の維持向上を強調するが、沖縄だけが負担を背負い続けるのは理不尽である。