高齢化で介護保険の給付費の膨張が続いている。厚生労働省が3日発表した2011年度の介護保険事業状況報告によると、税金と保険料で賄う公的な給付費は前年度比5.1%増の7兆6298億円で、過去最高を更新した。介護が必要だと認定された人は531万人で4.8%増。ともに保険制度が始まった00年度の2倍超に膨らんだ。
介護保険サービスは原則、65歳以上で市町村から要介護認定を受けた人が費用の1割を負担して利用する。公的な給付費と利用者負担を合わせた費用総額は前年度比5.1%増の8兆2253億円となった。
12年3月末の65歳以上人口は2978万人で、うち要介護認定者が占める割合は17.3%に上る。前年度を0.4ポイント上回った。00年度との比較では6.3ポイント上昇した。少子高齢化が進み、高齢者のうち75歳以上が49%までに増えるなかで、介護を利用する人とサービス提供にかかる費用の膨張が加速しつつある。
65歳以上の1人当たりの給付費(サービスを利用しない人も含む)を都道府県別にみると、上位は中国・四国や東北、九州が占め、下位は関東や東海が多い。最も多い沖縄県(約31万円)と最下位の埼玉県(約19万円)で約1.6倍の開きがある。
「施設の給付費が高いと、1人当たり金額も高まる」(厚労省)。金額上位の地方では特別養護老人ホームなどの施設の入所者が多いのに対し、施設そのものが不足する都市部が下位にとどまった可能性がある。
厚労省は「要介護認定者は当面増え続ける」とみており、介護給付費の増大のペースをいかに抑えるかが課題だ。認定者のうち、介護の必要度が高い要介護3〜5の区分の人は199万人(37.6%)で、残る要介護1、2の人や要支援者は相対的に低い。
政府の社会保障制度改革国民会議では、要支援者は見守りや配食など日常生活の支援の利用が多いため、介護給付の対象から外すべきだとの議論が出ている。今秋から本格化する介護保険制度改革の焦点になりそうだ。