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尼崎殺人死体遺棄事件 未解決事件 File.03/NHKスペシャル

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■未解決事件File.03「尼崎連続殺人死体遺棄事件」
2013年6月13日放送 0:40 - 2:10 NHK総合
NHKスペシャル

15年前の被害者が押し込められていた部屋へ
 15年前、おばあさんと息子たちが押し込められていた部屋がいまも残っている。狭い部屋で行動を監視され、家族間での虐待を強いられていた。1日中部屋の中に立たされ、食事も満足に与えられなかったという。


 兵庫県尼崎市を中心に、香川、岡山など各地で次々と明らかになった「殺人死体遺棄事件」。犯罪史上稀にみるこの事件は、首謀者とされる角田美代子元被告によって、15年という長い年月の間に、複数の家族がバラバラにされた挙げ句、暴力や虐待が繰り返され、分かっているだけでも7人が死亡、3人が行方不明となっている。さらに、この10人以外にも関係者の中には不審死や自殺などが相次いでいるが、時間が経ち過ぎて検証できず、事件化が難しくなっているケースも少なくない。しかも、「全てを知っていた」はずの角田元被告は逮捕後の昨年12月に自殺。事件の全容解明に大きな壁が立ちはだかっている・・・。

 これほど多くの家族が巻き込まれながら、なぜ15年以上もの間、見逃されてきたのか。取材チームは、事件初期に起きたあるケースを通じて、角田元被告が、ささいなきっかけを理由に家族を取り込み、社会と断絶させた上で、財産を巻き上げ、家族同士で暴力をふるわせるその過程の一部始終をつかんだ。その一方で、社会の側にも“落とし穴”があったことが明らかになってきている。事件に巻き込まれた被害者やその周辺には、何度も逃亡を繰り返したり、SOSのサインを繰り返し発したりした者も少なくなかった。しかしそのサインは社会や警察に見過ごされ、結果、多くの命が奪われてしまったのだ。二度と同じような事件を繰り返さないために、何が必要なのか。番組では、稀代の事件が突きつける課題を、ドキュメンタリーや被害者証言による再現ドラマなど多角的なアプローチで徹底検証する。


 近年の未解決事件を取材と再現映像で描こうとするドキュメンタリードラマ。

 第一弾のグリコ・森永事件は、劇場型犯罪によって動揺する社会を描いた。(この事件で、警察という組織の改編が要請された。まず広域犯罪への対応力がないこと、動機捜査の限界を露呈したことなどである。これは今も改善されてはいない。)

 第二弾のオウム真理教事件は、新たな社会へ逃れようとした人々の混迷と暴走を描いた。(この事件は日本版ポルポトといっていい。ポルポトはカンボジアという土壌に社会主義という普遍思想を無批判に受容した。その結果、あのような残虐な組織ができてしまった。カンボジアでは今以てその痛手が癒えない。彼らが行うことは、まず自らの伝統的思想を表に引き出し。それに基づく法律を明文化し、それに沿って人と人、人と社会を律していくことである。オウムは日本の自然生成説という思想の土壌にアメリカ型社会契約説という思想を枝付しようとした。自然生成説では社会は生物と自然との関係と同じものだから、人はそこから離れることができないのだが、社会契約説では社会は人工的組織だから、生物と自然との関係から離れ、新たな社会を構築できるとなる。この思想を日本に無批判に受容すれば、人工的組織である”オウム”となり、もう一方の社会と並列するはずなのだが、日本は社会契約説に基づいていないのでオウムを認めることができない。そのためオウムは社会を破壊することで自らの組織を成り立たせる以外にないとする結論に至るしかない。この事件が日本人に残した課題は、これからの日本が自然生成説のままで行くのか、それとも社会は人工的組織とするという思想を批判的に受容して行くのかということであっても、自然生成説を絶対的思想として、それに反する思想をテロリストの思想として断定し、思想弾圧を行うことではないだろう。)

 第三弾の尼崎死体遺棄事件は、逃げ場のないくびきを社会が生んでしまった経緯を描く。(この事件では、再び警察の怠慢が露呈された。)

 番組では、主犯の角田が最初に起こしたと考えられる原型的な事件にフォーカスを当てていた。その前段階として、角田が擬似家族を欲するようになった過去も描かれた。

 もともと、心理的な圧力で家庭がのっとられる事件は、フィクションでは少なくない。有名なものは安倍公房『闖入者』、マンガならば『魔太郎がくる!!』の「不気味な侵略者」や『魔少年ビーティー』の「そばかすの不気味少年事件の巻」といった作品がある。尼崎事件の手口は、そうしたフィクションとほとんど同じだ。わずかな罪悪感を被害者へうえつけて、それをとっかかりに会話の主導権をにぎり、内部に入ってから逃げ道をすこしずつつぶし、ついには家庭を崩壊させてしまう。

 フィクションと異なるのは、まったくの部外者が善意につけこんだわけではないことである。少なくとも最初の事件においては、角田と被害者家族(門脇家と横地家)に親族関係があった。角田の祖母は門脇家の出である。この祖母はいわゆる出戻りらしい。この代の門脇家は三人兄弟で、もうひとりの女性は横地家に嫁いでいる。角田の祖母の葬式を執り行い、喪主を務めたのは祖母の弟だったが、角田は告別式に列席、その場で冠婚葬祭における礼儀という因縁をつけ、事件ははじまる。家族の隠していた借金、どの家庭が義母を介護するか、そうした一般的な社会のくさびが被害者家族を分断させ、逃げ道を失わせた。

 もちろん主犯が家族の分断をあおりたてた結果ではある。しかし、ただ親類関係を賞揚すればいいとか、部外者を排除すればいいとか、そうした考えでは解決できなかったことはたしかだ。むしろ既存の共同体を前提視したからこそ発生した事件といえるだろう。二年ほど逃げることに成功した女性が、家出人として警察から主犯に連絡されたことでつれもどされた出来事からも、それは明らかだ。

 もちろん、すべての共同体が全否定されたわけではない。地域共同体が助けをさしのべようとした瞬間や、逃げることを助けた友人関係も描かれた。

 重要なのは、ひとつの共同体が個々人の権利や幸福を阻害するようになった時の、その共同体の内と外にいる者のふるまいだろう。

 それにしても警察の対応の不備は目に余った。確かに、原則として事件が起こってからでないと警察は動けない。しかし民事不介入というルールは存在しない。それの法的根拠はない。ただ刑事法と民事法とがあるというだけのことである。

 今回の事件の結果、香川県警と兵庫県警は些細に思える住民同士のトラブルであっても注視していく体制を整えることにしたらしたらしい。裏返せば、その二県のほかの警察ではそうした取り組みを行う必要がないということになる。警察庁は警察としても、また全国の警察に対しても、そうした取り組みの強化を通達してはいない。

 また、これは外部的批判になるかも知れないが被害者の行動にも不可解な点は多かった。外部的批判といってのは、たとえば火事の現場をニュースで見て「なぜ、あの高さから飛び降りるんだ。死ぬに決まっているじゃない」という風な見方のことである。実際、火事の現場に自らが居て、その熱さに耐えかね、それから逃れるために生死を顧みる思考力すらできない状態、といったことを想像できないのであれば、あるいはそうした事実を指摘されないのであれば、外部批判は批判として通用するだろう。

 この事件を外部批判すると、なぜ大の大人が数人もいて、隙のある時間もあったのに、お互い連携して閉鎖空間を突破しようとしなかったのか? 逃げた被害者はまず警察に駆け込むべきだと思うが、2年以上もひっそりと暮らし続けていたのは何故なのか? 免許更新所で拉致されそうになったとき、諦めないで大声で叫んで事を大きくできなかったのか? 協力者を自発的に探そうという行為があまり見受けられない、警察に訴えたが取り合ってもらえない場合、各種メディアにも訴えることが出来たはずだ、角田らはどうやって被害者から積極的な思考を奪ったのだろうか、などが挙げられるだろう。

 マンガ世代は1960年ごろから登場しただろうか。マンガを読んだからといって馬鹿にはならない。それどころか知識を伝達するにはイラストや記号など、いわばマンガ的手法及びマンガを用いた方が効果がある。だからマンガ好きの東大生が多く、読書好きの東大生が少なくなっても不思議なことではない。ただマンガはコマを追う読み物である。だから外面的経過を読みとる能力は高くなる。一方、自己の内面的経過を読みとる能力は育たない。それを育てるのは活字、特に小説を読むしかない。自己の内面的経過を読みとれる人は同時に他者の心を読み取る能力にも長けているものである。つまり想像力が豊かになる。そうした想像力のある人であってはじめて『住民同士のトラブルであっても注視していく』ことで、そこに犯罪があるのか否かを読みとれるはずである。今、社会には他者を知るための想像力の欠けた人達が溢れているという。そうした社会の中から警察官も採用される。そのため、警察官が特に社会とは無縁のような形で、想像力にある人達だとは限らないし、そうでああっても別に不思議ではない。社会が乱れているときは、その社会の精神構造に対応しているすべての組織の内部に乱れた行為があるのが普通である。こうした現実を考えると、警察の取り組みはそれほどの効果は期待できないのではないだろうか。
























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