千葉県市原市。野菜畑の上に無数の鉛色の板が並ぶ。畑の上に組まれたパイプに一定の間隔で置かれているのは太陽光パネル。農地に注ぐ太陽の光を農業と発電で分け合う。日本初のソーラーシェアリングだ。
■農家の副収入
750平方メートルの畑から30キロワットの電力を「収穫」でき、年150万円のペースで収入を得る。地盤沈下が進む農業。安定した副収入は貴重だ。畑を管理する高沢真さん(50)は「農村の振興策になる」と喜ぶ。
後押ししたのは3月末の規制緩和。農地での太陽光発電は原則禁止だった。農林水産省は、作物を栽培している農地の上部空間にパネルを置く場合に限り、発電を認める通知を出した。
歓迎すべき話だけど、どこかしっくりこない。敷地いっぱいにパネルを敷きつめることはできない。作物に日が当たらなければ育たないからだ。
はたと気がついた。作物に気を使いながら畑の上で発電しなくても、全国で40万ヘクタールに及ぶ耕作放棄地があるではないか。
一筋縄にはいかない。農水省は「発電するならまず耕して」との姿勢。「農地は農業に使う」という農地法の大原則があるからだ。
2011年7月。横浜市の企業、おひさま農場は山梨県北杜市で20年放置された耕作放棄地に太陽光パネルを設置した。初期投資は800万円。8月に東京電力と売電契約を結び、8年で投資を回収する事業が動き出した……はずだった。
2カ月後、市の農業委員会から突然の呼び出し。「売電のために農地を使うのは認められない。撤去してほしい」。同社代表の中滝明男さん(51)は一部を耕せば発電できると踏んでいた。「勉強不足だった」と語る。今も荒れ地に骨組みだけが残る。
放棄地といえども農地。荒れ放題なら発電するほうがましなのに、作物なしの有効活用は許されない。
群馬県太田市は昨秋、変電所の関連施設が邪魔になって使いにくい農地に太陽光パネルを敷けるようにする特区の案を政府に申請した。農水省の答えは「NO」。「特区といえども優良な農地は農業に」。現場に行くと膝の高さほどの雑草が生い茂る荒れ地。地元のタクシー運転手は「10年近く、ずっとこうだよ」と教えてくれた。
■法案メド立たず
放棄地での発電を拒む農水省にも、再生可能エネルギーの普及に一役買いたいという思いはある。放棄地のうち耕すのが難しい17万ヘクタールは農地からの転用を進め、メガソーラー(大規模太陽光発電所)を呼び込む。こんな法案をまとめた。昨年の衆院解散で廃案になったが、自民党内で再び検討されている。
もっとも放棄地を一般の農地と交換し、点在している放棄地を集約することが前提になる。たくさんの持ち主の所有権を一つにまとめることが簡単にできるだろうか。そもそも議員には「外から来た発電業者に土地をとられたら地元の振興にならない」との声もあり、国会提出のめども立たない。
命の源、食料を供給する農地は大切だが、「名ばかり農地」は何も生まない。持ち主が手放し、企業など新たな担い手に耕してもらうのが理想。難しいなら、まずは農家の副収入になる発電くらい認めてはどうか。放棄地をただ抱え込み、農の再生を「放棄」するようなことにならないように――。
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農水省は「農地は農業に使う」というのが農地法の大原則らしい。全国で40万ヘクタールに及ぶ耕作放棄地があっても発電・充電はできない。農地での太陽光発電は原則禁止だったが、農林水産省は3月末の規制緩和に後押しされ、作物を栽培している農地の上部空間にパネルを置く場合に限り、発電を認める通知を出した。敷地いっぱいにパネルを敷きつめることはできない。作物に日が当たらなければ育たない。作物に気を使いながら畑の上で発電してくれらしい。
放棄地での発電を拒む農水省にも、再生可能エネルギーの普及に一役買いたいという思いはある。放棄地のうち耕すのが難しい17万ヘクタールは農地からの転用を進め、メガソーラー(大規模太陽光発電所)を呼び込む。こんな法案をまとめた。もっとも放棄地を一般の農地と交換し、点在している放棄地を集約することが前提になる。たくさんの持ち主の所有権を一つにまとめることが簡単にできるだろうか。
集約化を進めている自治体でも、現状は30%ほどらしい。法案ができたとしても、自治体担当者によれば「集約化に必要なのは職員と地主との信頼関係。法案ができたらか”はい。そうですか”と土地を手放す地主が増えるとは思えない。地道にやっていくしかないと思っている」とうことだから、10年先になるのか20年先になるのか?
東日本大震災で高台の土地への移住に関連して、土地取得に反対したのは自民党だった。理由は土地取得には時間がかかる。30年はかかるということだったはずだ。だったら農地の集約化においてもそうみなければ論理的におかしい。法案を可決すれば集約化がスムーズになるとするなら、移住のときにも、その論理がでたはずだは・・・?