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数学が苦手な人と得意な人では考え方が違う

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 数学が苦手な人の多くは、自分には才能がないと思い込みがち。でも、それは間違い。「アプローチ法さえ知っていれば、問題は解ける」と、おとなにも人気の数学塾塾長・永野裕之さんは説く。ポイントは「考え方」。数学が得意な人が実践する、問題を解くための「6つのアプローチ」を紹介。日常生活にも役立つものばかりだ。

「数学が得意な人と苦手な人との大きな違いは、才能ではなく、問題を俯瞰して捉えられるか否かです」。こう話すのは、永野数学塾の塾長・永野裕之さん。

 なぜなら、どんなに難解に見える数学の応用問題も、基本問題の組み合わせから成り立っているからだ。つまり難解な問題も、俯瞰して見れば、いくつかの容易な基本問題に分解できるのだ。複雑に絡み合った基本問題を解きほぐすには、問題へのアプローチ法(考え方)を知っておくことが有効な手段となる。「数学が得意な人ほど、問題を解きほぐし『そもそも』の部分に立ち返るのがうまい」と永野さんは指摘する。

 ここでは日常生活にも役立つ6つの問題に対するアプローチを紹介する。このアプローチを覚えておけば、未知の問題を前にひるむことがなくなるはずだ。その上で問題を俯瞰して考えることが、難解な問題を解く第一歩となる。 


・数学が得意な人→問題を俯瞰できる
・数学が苦手な人→問題の壁の前で立ち止まっている


◆日常生活にも役立つ6つのアプローチ

1.因果関係を押さえる(必要・十分を考える)

 論理的思考のためには明快な因果関係が必要なように、数学の問題を解く上でも、因果関係を明らかにしていくことは重要だ。

 そこで実践したいのが、常に必要条件と十分条件を意識すること。下の図のようにAならばB(A→B)であるといえても、BならばAとはいえない関係のことをAはBであるための十分条件、BはAであるための必要条件と呼ぶ。一方、A→Bと、B→Aの両方が成り立つときには、AとBは互いに必要十分条件であり、AとBは同じことをいっている(同値である)と分かる。「このような因果関係を正確に押さえられれば、関係性が明解になるだけでなく、数式の同値変形にも応用することができます」(永野さん)。



2.視覚化する

 言葉を連ねるだけではイメージが伝わらないときに、図や絵を描いて説明することで伝わりやすくなることがある。「同様に、数学の問題を解くときにも、言葉や数式だけの情報よりも、視覚化すると情報量が圧倒的に増え、問題の全体像が見通しやすくなります」。上の問題を見れば、言葉だけでは少々難解な関係性が、図によって明快になったのが分かるだろう。

 図だけでなく、グラフで表す方法も有効だ。例えば為替。数字だけで日々の推移を示されるよりも、グラフで視覚化すれば、変化の過程が浮き彫りにされ、多くの情報が読み取れるようになる。「数式や数列だけでは分かりづらいときは、試しにグラフ化してみる、という手を覚えておきましょう」。

 

3.帰納的に考える

 数学の最終目的は、一般化(あらゆる場面に通じるように立式すること)にある。右図のように個々(部分)に当てはまる事柄から一般的な事柄を推論する方法を、帰納法という。帰納的なアプローチの一つが、数式に数字を当てはめることだ。例えば、「X人でYgの肉を食べた」と聞いてもイメージしづらいが、「4人で1200gの肉を食べた」と聞けば途端にイメージしやすくなるだろう。「一足飛びに一般化するのは難しい。難解な問題に対しては、まずは具体的な数字を当てはめる手が有効なことがある。そこに何らかの関係性があれば、『ここには法則があるのでは…』と思い立ち、一般的な法則や定理についてのヒントを得られることがあります」。



4.逆を考える

 正攻法で問題に取り組んでみても、どうしても答えが見つからなかった経験はないだろうか。そんなときには、別の視点から考えてみると、意外にすんなり解けることがある。「とはいえ、別の視点を効果的に生かすのも簡単ではありません。そこで“別の視点”のなかでも、最も基本的なものとして試したいのが、逆の視点です」。

 例えば右の問題。グレーの部分の面積を直接求めることは不可能だが、全体から白い部分の面積を引くという逆転の発想を取り入れたら、容易に解が導き出せる。「手に負えないと感じたまま考え続けても、答えは出ません。時には反対から物事を考え、解答への近道を探す練習は、日常の問題解決にも役立ちます」。


 
5.対称性を見つける

 対称とは、あるものとあるものとが対応して、釣り合いが取れている状態のことをいう。「なんとなく捉えづらい数学の問題が、対称性を発見することで、一挙に答えを導き出せるようになることは少なくありません」。

 右の問題では、最初の段階では見えていないBの対称点B′が補助線を引くことで見つかった。そのことによってlの線の下側にまで視野が広がり、スムーズに問題が解決できるようになった。「これは、問題で見えているものを『ある全体の一部にすぎない』と捉えることで、情報量が増えたからです。このように、対称性を探し、隠れていた全体をあぶり出して答えを導き出す方法は、難解な問題に対しても非常に有用です」。



6.ゴールからスタートする

 数学が苦手な人の多くがつまずく証明の問題。どのような切り口で始めたらよいか皆目見当がつかない場合、「ゴールの1行前」を考えるアプローチが効果的だ。

 「◯>◯のときに、△>△であることを証明しなさい」というように、証明問題は常に結論が最初に提示されている。ゴールが既に分かっているのだから、そのゴールから1行ずつ遡り、スタートをたどっていく、という具合だ。

「ちょうど、迷路を逆からたどるイメージですね。結論の△>△を証明するためには、この式の1行前に何がいえるとよいか。さらにその前の1行ではこんなことがいえているはずだ……と、1行前を順に考えていくと、おのずとスタートにたどり着きます」。



























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