既報のとおり、1月25日8時26分から13時8分までの間、東京都の一部地域でNTTドコモのFOMAの音声・パケット通信サービスが利用しづらい状況が発生した。通信障害により最大252万人に影響があったとしている。
ドコモは1月26日に記者会見し、通信障害を謝罪するとともに、事象の原因および今後の対策を説明した。
Androidスマートフォンでは、端末を操作していない状態でも、OSの機能により28分ごとにパケット交換機との間で接続・解放のための制御信号が発生するが、ドコモによればVoIPやチャットなどのコミュニケーションアプリが普及したことで、この制御信号が急増しているという。
また現行のパケット交換機(以下、現行機)は、ネットにアクセスする時のみ接続するiモード端末(フィーチャーフォン)向けの設備であり“処理能力”を重視して設計されている。しかし、スマートフォンはネットに常時接続されていることから、ドコモでは新たに“同時接続数”を重視した新型のパケット交換機を用意した。
スマートフォンの通信は、無線基地局を介して無線制御装置につながり、さらにパケット交換機につながる仕組みとなっている。ドコモは、1月23日に無線制御装置23台を収容した現行機4台を新型に切り替えた。この時点では、順調に運用できていたため、1月25日未明から37台の無線制御装置を収容した残り7台の現行機を新型に切り替えた。
新型は現行機よりも高性能なことから、ドコモでは現行機11台を新型3台へ切り替えた。現行機(11台合計)の能力は同時接続数が88万台、1時間あたりの信号量は2750万。新型(3台合計)の能力は同時接続数が180万台、信号量は1410万となり信号量は大きく低下するが、ドコモではトラフィックを処理できると判断。しかし、実際の信号量は1650万となり、ネットワークが輻輳状態となった。
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同日の会見に臨んだNTTドコモ取締役常務執行役員の岩崎文夫氏は、「ドコモとしてトラフィックに対しての見極めが甘かった。大変申し訳ないと思っている。今回に先立ち、spモードでも通信障害を起こしており、これまでの度重なる障害についても申し訳ないと思っている」と謝罪。1月27日午後にドコモ代表取締役社長の山田隆持氏によって改めて説明が行われるとした。
今後の対策としては、2月中旬に全国のパケット交換機の処理能力の一斉総点検を実施。2月中旬以降に再点検の結果を踏まえ、必要に応じてパケット交換機を増設していく。さらに8月中旬にパケット交換機のリソース配分を最適化し、さらなる処理能力の向上を図るとした。また、世界の通信キャリアと協調し、アプリが送信する制御信号の抑制対策も行うとしている。
(2012/01/26 CNET Japan「「見極めが甘かった」と通信障害でドコモが謝罪--改めて社長から説明も」より)
★輻輳【crowding】
ものが一ヶ所に集中して混雑している状態のこと。IT分野では、電話回線やインターネット回線において利用者のアクセスが特定の宛先に集中することにより、通常行えるはずの通話・通信ができなくなる状況を指す。俗に「回線がパンクする」と表現される状態。
輻輳が生じる主な原因は大地震や強い台風など大災害が発生した際に、災害発生地における住民の安否確認や、人気のチケットや製品を予約をする際の予約開始日などに予約が集中することで回線が処理できる許容量をオーバーするためである。携帯電話では、年末年始のあいさつや、コンサートや花火大会、祭りなど大勢の人数が集まるイベント、大都市のラッシュアワー時、天候の急変時など一般電話に比べてトラフィックの変動が激しく輻輳を発生する危険性が高い。
輻輳が発生している状況で電話をかけると、「お客様のおかけになった電話は大変混みあってかかりにくくなっております」などの音声メッセージが流れて回線に接続されない状態におかれる。携帯電話の場合は、「しばらくお待ちください」といったメッセージが携帯の画面に表示される。インターネットではブラウザに接続できない旨のメッセージが表示される。たいていの場合は、輻輳が発生する以前のまだ余裕のある段階で上記メッセージを流してアクセスを制限し、機器の故障などを回避する対策がとられている。
インターネットではアクセス先に接続できないと、再度接続確認、接続作業を自動で試みる機能を備えているため、輻輳の状況をさらに悪化させてしまう可能性がある。この悪循環により輻輳の状態が最悪化することを「輻輳崩壊」と呼ぶ。この事態を避けるために通信機器はスロースタートや輻輳回避などの様々な機能を備えている。