シリアの内戦が飛び火する格好で隣国レバノンの緊張が高まっている。同国のイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの指導者は25日、アサド政権との共闘を正式表明。その翌日、首都ベイルート近くのシーア派居住地区にロケット弾が着弾した。ヒズボラへによるシリア内戦介入への報復との見方も出ている。
レバノン国内では親アサド政権のシーア派と反アサド政権のスンニ派が反目している。シリアを巡る対立の構図を映すかたちで激しさを増すレバノンの宗教対立。衝突が地方部から首都に広がり、イランによるヒズボラ支援強化といった要素が加われば、イスラエルを含めた地域情勢は一段と流動化しかねない。
事態が緊迫するきっかけとなったのはヒズボラの指導者ナスララ師が25日に発表した声明だ。「いかなる犠牲を払ってでも勝利する」とシリア内戦への介入を初めて正式に認めた。ヒズボラはすでにシリアに数千人規模の兵士を送り込んでいるとされる。
翌26日にはベイルートのシーア派系住民が住む地区に撃ち込まれたロケット弾で4人が負傷。この攻撃にシリア反体制派が関与したかは不明だが、レバノン北部トリポリ周辺ではシリアのアサド大統領が属するシーア派系のアラウィ派と同国反体制派の多数を占めるスンニ派住民が断続的に衝突し、27日までに25人が死亡した。
レバノンでは、2012年5月にトリポリでシーア派系住民とスンニ派系住民が衝突し、少なくとも5人が死亡。その後も断続的に衝突が続き、死傷者が発生している。
同年10月にはベイルートで自動車爆弾を使ったテロ事件が起き、治安警察で情報部門を統括するウィサム・ハッサン氏など8人が死亡した。ハッサン氏はシリアのアサド政権やヒズボラに関する捜査を担当しており、同氏を狙った暗殺事件との見方が大勢だ。