バレエの公演には、昼の公演と夜の公演で異なる呼び方があります。この二つの言葉の違いを石島みどりさんが観客目線とダンサー目線で解説しました。この二つの違いを理解すると、いま以上にバレエを楽しく有意義に見ることが出来るようになります。
※石島みどり
DancingFUN勤務。幼少期よりモダン・バレエを始め、中村友武バレエ・スタジオにて長年にわたりクラシック・バレエ、キャラ。クテール、ジャズ・ダンスを学ぶ。
バレエの公演には、昼の公演と夜の公演で呼び方が違うのをご存知でしょうか?
観劇用語で夜の公演をソワレ、昼の公演をマチネと言います。どちらもフランス語。この二つの公演の違いは何でしょうか? 今回はその違いについて少し解説してみたいと思います。この違いがわかると、きっとバレエの観劇が一回り楽しいものになります。
■ソワレとマチネ
1. ソワレ (夜の公演)
2. マチネ (昼の公演)
どちらも聞きなれない言葉かもしれません。でも大丈夫。今からそれぞれの違いを紐解いていきます。
1. ソワレ(夜の公演)
バレエ観劇の場面などが、テレビで放送されるときに目にする着飾った紳士淑女の姿。特にヨーロッパなどでは観劇をする際にフォーマルドレスを着てエレガントに装うのがマナーとされています。幕間にはシャンパンを片手に歓談したり。本当に優雅な時間を楽しんだりしていますね。
フォーマルドレスを着用するのはソワレでの一コマ。ヨーロッパではバレエやオペラでしっかりドレスコードを守る習慣があります。でもこれは、良い席で観劇する場合でのこと。安い席ではあまり神経質になる必要はないかも知れません。
今ではビジネス帰りに観劇する人も多いことから、ビジネススーツでバレエを観ている方も多くいらっしゃいますね。これは日本でも海外でも同じ現象のようです。
2. マチネ(昼の公演)
マチネは、主婦や学生、定年を迎えられた方が昼間の自由な時間に観劇するのにもってこいの公演です。チケット料金もソワレに比べて安めの設定となっています。
私が学生時代に旅行したデンマークでのマチネ観劇での出来事をご紹介します。小学生の団体がいたり、主婦グループが沢山居たり、やはりソワレとは違った雰囲気でした。何よりも驚いたのが、私が購入した学生券が一階席の一番前だったこと。チケット売り場で理由を尋ねたら、「若い人に近くでバレエを感じてもらいたいから」という答えが返ってきました。バレエ文化の懐の深さを知ったエピソードです。実は一階席一番の前というのは良い席ではないんですね。舞台全体を見ることは出来ないし、舞台より下に座ることになるので、首は痛いし。
一番良い席は二階両端のボックス席。一度はここで観てみたいものです。
今までは観る側の立場からお話ししました。次は踊る側から見てみましょう。
ダンサーにとってソワレとマチネではどちらが踊りやすいかご存じですか?多くのダンサーから返ってくる答えは「ソワレ」です。
これにはちょっとした訳があります。股関節の開きが、昼と夜とで違うというのをご存じでしょうか。人間の股関節は朝起きたときが一番閉じていて、就寝前が一番開きやすいという特徴を持っています。股関節が開くということは脚のターンアウトがしやすいということ。ですので、ダンサーは夜の方がバレエの動きがしやすいのです。
また、前日の公演の影響で夜中の2時3時に就寝することが多いダンサーにとって、昼はまだ体が眠っている時間です。その昼に踊るというのは怪我をする可能性も高くなります。だからいやがるのですね。
いかがでしたか?
ソワレとマチネ。ドレスの違い、客層の違い、チケット料金の違い、ダンサーの動きやすさの違い。マチネは昼2時頃、ソワレは夜7時半頃開演です。ライフスタイルに合わせて、そしてどのダンサーを観るかによって観比べてみてください。新しい発見があると思いますよ。