讃岐うどんのチェーン店「丸亀製麺」を運営するトリドール(神戸市)が、すべての店舗をパート店長にする方針を改めて示し、ネット上で論議になっている。
手打ちうどんがワンコインで食べられるというのが、丸亀製麺の売りだ。ここ5年で売り上げを3倍に伸ばし、現在は全国で722店も展開するほど急成長した。
■カビ騒ぎもあって、ネット上で心配の声
人手がいるため、店員の9割がパートで、全国に1万6000人もいる。そして、トリドールは2013年5月20日、店長までパート化を進めると会見で明言したのだ。パート化は、すでに12年1月15日に報じられ、現在は81店にパート店長がいるが、今後も順次増やしていくというわけだ。
丸亀製麺では、静岡県内の店舗で13年4月7日、ざるうどんのざる裏側にカビが生えていたと苦情があった。その原因は、ざるを洗浄後に水分が残ったままの状態で保管したためで、トリドールは、ネット上で騒ぎになるまで1か月も公表しなかった。
それだけに、店長パート化のニュースが流れると、ネット上では、パートに責任を押しつけるのではないか、給与などの待遇が伴わなければまともにやる人はいない、などと疑問の声が相次いだ。
そこで、トリドールの広報担当者に聞くと、「ネット上の声はこちらでも把握しており、誤解がたくさん生まれていると考えています」と困惑げに話した。
「嫌がるパートの方を無理やり店長にして、責任を押しつけるという気はありません。リーダーシップのあるパートの方はたくさんいらっしゃいますが、これまで店長にはなれませんでした。これは実態にそぐいませんので、モチベーションアップのためにも店長になってもらおうということです」
■雇用が不安定になるのは否めない
パート店長には、待遇の改善も図ると、トリドールの広報担当者は説明する。
「パートの時給に、2割に近い線で手当を上乗せします。週30時間以上働く人には、健康保険や介護保険、厚生年金にも入ってもらいます。店長になった方には、教育の機会も作っていますよ。人件費を抑制するわけではなく、パートの方を格上げするということです」
また、店舗での接客にも、メリットがあるという。
「社員の店長は、2、3店をかけ持ちしている人も多く、全国に転勤があります。しかし、パートの方は、常に店におられますし、地域密着のサービスもできます。店長の上司には、5〜10店を受け持つ社員のマネージャーがおりますので、社員も責任を負うことになります」
店長が休む場合は、代理の人を手配する体制にするとも言う。
なお、ざるにカビが見つかった店舗は、パート店長ではないという。ネット上の心配の声に対しては、広報担当者は、「パートにやりがいを持ってもらうことで、そういうことが起こらないようにしたいと思います」と説明した。
もっとも、一般論として、パートは、社員と違って、雇用が不安定になるのは否めない。
丸亀製麺では、世界各国でも店舗を出し始めているが、ユニクロの柳井正社長が年収100万円もありうるとした世界同一賃金なども考えているのか。この点については、「海外はまだ手探り状態で、そんな予定はありません」と言っている。