アメリカ南部、オクラホマ州で発生した巨大な竜巻は、広い範囲に渡って住宅や道路を激しく破壊し、捜索活動は難航していて、発生からまる1日がたっても被害の全容が分かっていません。
アメリカ国立気象局によりますと、オクラホマ州のオクラホマシティー郊外で発生した巨大な竜巻は、瞬間的に風速およそ90メートルの風が吹き、27キロにわたって移動し、幅は2キロに及んだということです。
また、竜巻の強さは、6段階ある国際的な尺度では、「住宅が跡形もなく吹き飛ばされるなどの被害が出る」とされる最上位に当たると分析しています。
この竜巻により、広い範囲の建物に壊滅的な被害がもたらされ、州当局はこれまでに子ども9人を含む24人の死亡を確認し、237人がけがをしたと発表しています。
警察や消防は、行方不明者の捜索を夜を徹して行うとともに、避難所を回って行方不明になっている人がいないか確認を続けていますが、道路や住宅が激しく破壊されているため捜索活動は難航していて、発生からまる1日以上がたっても、行方不明者の数を含め、被害の全容は分かっていません。
一方、州の防災担当者は会見で、竜巻の直撃を受けた地元の2つの小学校について、竜巻から避難するための避難施設が設置されていなかったことを明らかにしました。
避難施設は、過去のデータからより危険性が高いと判断された学校から優先的に設置されているということで、今後、学校での竜巻対策を巡る議論が高まりそうです。
米南部オクラホマ州などを襲った竜巻は、直径1・6キロにも及ぶ巨大なものと推定されている。なぜ米国でこうした巨大な竜巻が発生するのか。
竜巻は、積乱雲に伴う強い上昇気流により発生する激しい渦巻きのこと。日本でも昨年5月、茨城県つくば市を国内最強クラスのF3(約5秒間の平均風速70〜92メートル)が襲った。
気象庁によると、米国では年平均で約1300個観測されており、年平均17個の日本と比べ約80倍にのぼる。米中西部の上空には、ロッキー山脈を越えて乾燥した偏西風があり、上空にいくに従い風向きが時計回りに変化することが多く、積乱雲が回転しやすくなるという。オクラホマ州付近は特に、北極からの寒気団とカリブ海からの暖気団が衝突する竜巻の頻発地域で、スーパーセルといわれる巨大な積乱雲が発生しやすい場所として知られている。
米国では年間当たり平均で55人が竜巻で犠牲になっている。最も人的被害が大きかったのは、1925年3月18日、ミズーリ州などで695人が死亡した竜巻だ。近年は、温暖化に伴い海面水温が上昇するため、大気中の水蒸気が増えて竜巻が発生しやすくなっているという。
竜巻は通常、直径が数十〜数百メートルで、多くは10分以下で消滅する。今回の米国の竜巻は2日間で計28個発生したとされるが、気象研究所の山内洋主任研究官は「気象条件が同じであれば広い米国で、数十個の竜巻が同時発生することは珍しくない」と指摘。その上で「季節の変わり目である5〜6月に特に大きな竜巻が発生しやすいが、竜巻は大きくなればなるほど力は弱くなる。これだけ巨大で強力な竜巻は珍しい」と話している。
「子どもが亡くなったのは気の毒で悲しい」。米オクラホマ州で小学校が倒壊し、多数の子どもらが死傷した大規模な竜巻被害。昨年五月六日の竜巻で大きな被害を受けたつくば市立北条小学校の大熊祐子校長は二十一日、取材に応じ、被害に心を痛めながらも「担任教諭を通じてあらためて竜巻への注意や身の守り方を伝えたい」と気を引き締める。
昨年、つくば市周辺を襲った竜巻は同校付近を通過し、校舎の二、三階を中心に窓ガラス約百枚が壊れた。大型連休の最終日だったため、学校の敷地内に児童や教員はおらず、自宅でも搬送されるほどのけがをした児童はいなかった。
同校は今月十四日に全児童約二百人が参加し、竜巻に備えた訓練を初めて実施した。天候が悪化し竜巻発生の恐れが出てきたら、教室の窓ガラスやカーテンを閉めて防災ずきんを着用し、昨年被害が少なかった一階の廊下に全員避難する手順を確認した。
ただ、大熊校長は「竜巻は突然襲ってくるので、訓練のように逃げる時間はないかもしれない。とりあえず窓ガラスから離れて身をかがめるなど、とっさに身を守る訓練も必要かもしれない」と不安を打ち明ける。
米国で広がる被害に「家庭にもシェルターがあるなど、外国と日本とは事情が違うかもしれないが、自然災害への準備は難しいと思う」と声を落とした。