朝日新聞の2013年5月11日夕刊に、こんな見出しが躍った。東京タワーのふもとに建てられている「南極物語」でもおなじみのタロ・ジロたち樺太犬の像が、「東京五輪招致」のために撤去されるというのだ。「来るかもわからない五輪のために、タロ・ジロが追い出されるなんて!」と多くの人がこの話題に怒り、ネット上では撤去阻止を求める署名運動も起こっている。一方で東京タワー側にも言い分があるようだ。果たしてこの騒動の行く末は――?
問題となっている像は、第1次南極観測隊(1957〜58年)に参加した樺太犬15頭を記念し、59年に日本動物愛護協会がタワー敷地内に設置した。犬たちのうち、奇跡的に生還したタロ・ジロの2頭を除く13頭は南極の地で死去したと見られており、その慰霊の意味も込めての建造だ。渋谷のハチ公像でも知られる安藤士さんが手がけた像は、58年に完成したタワーの観光スポットの1つとして、半世紀以上にわたり親しまれてきた。
しかし報道によれば5月9日、タワーを運営する日本電波塔(東京・港区)が15日に像を撤去すると動物愛護協会に伝えてきた。12年夏にも移転話自体はあったものの、このときは期限が示されていなかった、と記事は述べており、これがもし本当ならかなり性急な話に思える。そしてそんな急な撤去が必要になった理由は、「2020年の東京五輪招致を応援するため、像の場所を使って招致のシンボルマークを花で描くことになったから」だというのだ。朝日のほか、「東京タワーのタロ、ジロが東京五輪に追い出される」(日刊ゲンダイ)、「タロ、ジロ像どこへ行く」(東京新聞)と複数紙がこの話題を報じた。
ネット上では批判の嵐が吹き荒れ、さらには署名活動を始める人も出た。ウェブサイト「change.org」を通じて行われているもので、「南極観測隊に参加したタロ、ジロらの樺太犬の銅像を保存してください」と題したこの活動には、40人近くが署名を寄せている。
また東京タワーにも「なんでそんなことをするんだ!」と苦情の電話などが相次いでいるという。
一方東京タワー側の担当者は、「五輪招致ありき」で撤去が決まったわけではないと語る。「目的はあくまで、以前から計画していた花壇などの植栽整備のためです。時期も、現在進めているアナログ放送設備の撤去や塔体補強などの改修作業に合わせることでお客様への影響を少なくするためで、『五輪のために』というわけではありません」
「五輪招致花壇」については、「たまたま時期が合ったため、社内で一案として検討していた、という段階」。また12年夏の時点で移転には双方合意し、4月にも『5月末まで』との話を動物愛護協会に伝えており、そこまで急というわけではないと語る。
動物愛護協会側も「これまで親しんでくれた人に名残を惜しんでもらうためには、もう少し早く日程を知りたかった」としつつ、「移転自体は12年夏の時点で承諾していた」と認める。
また幸い、移転先についてはすでにメドがつきつつあるといい、「まだ名前は言えませんが、これまでどおり一般の方にも公開で見ていただける場所になる予定です」とのことだ。「撤去反対」派も一安心といったところか。
なお高額な撤去費用については、今後募金など広く支援を呼びかける予定だという。
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タロ・ジロたち樺太犬の像の移転先は渋谷のハチ公像の隣がいいかも知れない。ともに人間の忠義を尽くした犬たち…そういえば猫の像はない。猫は人間に忠義を尽くさないからだろうか。でも人間に人気がある。犬以上に愛されているかも知れない。人に愛されたり、人気者になるのに、忠義は必要ないのだろう。歴史上の人物でも、主人に仕えず勝手に動き回っていた坂本竜馬は人気がある。