トヨタ自動車は8日、2014年3月期の連結純利益(米国会計基準)が前期比42%増の1兆3700億円になる見通しと発表した。リーマン・ショック前の最高益(08年3月期の1兆7179億円)の8割の水準まで回復する。円高修正が4000億円の営業増益要因になるほか、1600億円の原価低減努力などが寄与する。想定為替レートは1ドル=90円、1ユーロ=120円。同日午後、都内で会見した豊田章男社長は東日本大震災など多くの困難からの急速な業績回復を受けて「やっと前を向いていけるというわくわく感を感じている」と語った。主なやりとりは以下の通り。
――前期決算の評価は。
豊田社長「前期は5年ぶりに単独決算で黒字になれたこと。仕入れ先、販売店、従業員などみんなの努力と執念のたまものだ。ただ本当に持続的成長ができる真の競争力が付いたかというと、スタートラインに立てただけ。やっと前を向いていけるというわくわく感を感じている」
――今期の想定為替レートがやや保守的だが、今期の業績見通しに対する考え方は。
小平信因(こだいらのぶより) 副社長「前期の営業増益(9652億円)のうち円安による効果は1500億円だけ。増益の多くは全社一丸の営業努力によるものだ。今期の業績見通しは、販売台数の増加、為替(円安)の影響を織り込む一方、市況の動向を踏まえた原材料価格の増加、研究費などの負担増も織り込んでいる。収益改善分については既にメドが付いたものだけを織り込んでいる」
――急ピッチで円安が進んでいるが、国内生産300万台規模という方針はどうするか。
豊田社長「トヨタは日本で生まれたグローバル企業。トヨタがトヨタであり得るためには、ある程度の国内生産基盤が必要で、それが約300万台と説明してきた。この考え方に一切変化はない。円高や円安など短期的な為替の動向に左右されない体質にしたいという方針にも、変化はない。生産を国内と海外に分ける考えはない。あくまでグローバル・トヨタとして競争力のある国内生産が必要だということだ」
――業績回復で上がる利益をどこに振り向けるのか。
豊田社長「もっといいクルマ作りに投入する、その一言に尽きる。それを支える人材、会社の仕組みなど色々なものだ。持続的成長ができるところに資金を投入していきたい」
小平副社長「必要な資金は効率的、積極的に使う。ITインフラの改善、整備にもしっかり投資する。技術面でも環境安全分野の技術開発など先行投資も含めて戦略的に投入する」
――世界各地の販売状況は。
小平副社長「国内販売の滑り出しは順調だ。自工会の見通しよりも(トヨタは)もう少し上に行くかなと思っている。景況感が上向いているので受注も非常に堅調だ。米国は雇用が増え住宅需要が増えるなど経済が好調で(車)市場も上向いている。『アバロン』など新型車効果で販売は堅調だ。中国は経済の緩やかな回復が見られ、昨年を上回る水準を見込んでいる」
――設備投資額が今期は573億円増える。新工場の設置は抑制する方針ではなかったのか。
小平副社長「新たな工場建設は既に決定しているものを除いて考えていない。今回の設備投資は円ベースでは増えるが円安になっているのが主な理由。外貨ベースで見ると前期とほぼ変わらない」
――前期まで日本の製造業は「6重苦」の状況だった。国内でモノづくりをするリスクを今、どう考えるか。
豊田社長「6重苦にここ数年、相当苦労してきたのは事実だ。そんななかで石にかじりついてでも日本の雇用を守るため、原価低減、固定費のコントロールを全社一丸でやってきた。そして今、アベノミクスの下でフォローの風が吹きつつある。今後は真の競争力、持続的成長ができる雇用、そして自動車産業の基盤を作り上げていきたい」