爆笑問題の太田光さんがラジオで、安倍晋三首相に怒りを爆発させた。
太田さんは、安倍首相に「ネットの連中」(太田さん)をあおるような言動が見られると主張する。ゲストとして出演していた大橋巨泉さんも交え、安倍首相へのかなり厳しい批判が相次いだ。
太田さんはお笑いだけでなく、時事問題についてもたびたび過激な発言を行うことで知られている。
安倍首相についての話題は、2013年4月28日放送の「爆笑問題の日曜サンデー」(TBSラジオ)の終盤で飛び出した。
太田さんは、「あの人は昨日もニコニコ動画(のイベント)に出ていたけれど、あまりにも『ネットの総理です』というのを言いすぎ」と首相のネット偏重に疑問を呈した。そして、
「フェイスブックやってて、本当はそれこそ議員に向かって言うようなことを、インターネットをやっている人たちに言ってあおるんですよ。そして攻撃させるんです」
太田さんが挙げた例は、安倍首相が自民党総裁に就任した2012年10月、「とくダネ!」(フジ系)で安倍首相の第1次政権時代の辞任を「お腹が痛くなって辞めた」と表現したことに対しフェイスブックで、発言は自身だけではなく同じ病を患う人への攻撃として反論した出来事だ。ネットでは猛烈なフジ批判が盛り上がり、キャスターの小倉智昭さんが番組中で謝罪することになった。
ただしこの件では、小倉さんの謝罪は首相がフェイスブックで取り上げる前のことなので、「ネット住民をあおった」とは言いがたい。とはいえ11月には「朝ズバッ!」(TBS系)でほぼ同様のケースがあり、こちらは安倍FBをきっかけに批判が盛り上がり、TBSが謝罪に追い込まれている。
いずれにせよ太田さんはこうした事例を元に、
「(首相は)ネットの連中がCX(フジ)や番組のスポンサーに抗議をするのを見越して言ってるわけですよ!」
と憤慨する。そもそも「とくダネ!」の発言が病気への「差別」というなら、ネット側からのフジ攻撃にこそ「きっとものすごい差別的な表現がいっぱいある」。そうした点に目をつぶり、自らの批判者への攻撃に利用することを太田さんは「卑怯」と語る。
安倍首相が、閣僚の靖国神社参拝をめぐる中国・韓国からの批判に「わが閣僚はどんな脅しにも屈しない」と述べたことにも、太田さんは「あまりにも幼稚だし、ヒステリックだし、子どもだよ」と手厳しい。
もっとも少し意外にも、太田さんは靖国神社への参拝やA級戦犯の合祀自体には、「その人たち(A級戦犯)が悪いと決めたのは、(勝者による)東京裁判。自分の親が国を守ろうとしてやったことには、そのときの事情があったんだと思います」と「理解」を示した。どちらかというと太田さんとしては、首相が「屈しない」の一言で議論を拒否するような姿勢を取ったことを問題視しており、「熱意を持って(なぜ靖国に行くのかを)中国・韓国に説明しようとしなければならない」と、首相に注文をつけた。
「敗戦に衝撃を受けて以来の反体制」と自認する巨泉さんはさらに厳しく、「これほど頭が悪いと思わなかった」と切り捨て、中韓との対立は米国との関係も冷え込ませるとして、「屈しない」発言を批判した。ただし太田さんの「靖国肯定論」には、「国を守ろうとして死んだ奴なんてほとんどいない」と反発する一幕もあった。
番組の内容は当初はそれほど話題になっていなかったが、5月に入って一部を切り出したものが動画サイトに投稿され、議論を巻き起こした。ネット上では「太田のほうが幼稚でヒステリック」などと反発する声も多いが、「正直この太田の発言は正論」と賛意を示す人も出ている。
太田さんは4月30日には、村上春樹さんやその読者に「中身がゼロ」とかみ付いて話題になった。過去には、護憲派の立場から『憲法九条を世界遺産に』という書籍(中沢新一さんと共著)も刊行している。