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テレビいつ見る? リアルタイム視聴減少‐録画視聴、CM効果低減…見たくなる作品の展開必要

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■番組「リアルタイム視聴」減少、SNSと連動の試みも

 テレビ放送のデジタル化で提供されるようになった電子番組表(EPG)や大容量の録画機器により、個人でも大量の番組録画が簡単になった。これにより、放送時にテレビ番組を見る「リアルタイム視聴」が減少。CM収入を財源とする民放を悩ませている。どうすれば放送時に視聴者に番組を見てもらえるのか。各局の様々な試みを紹介する。

 ここ数年、高機能携帯電話(スマートフォン=スマホ)が急速に普及し、簡易投稿サイトのツイッターや、会員制交流サイトのフェイスブックなど、インターネットで仲間同士が交流するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用者が増えている。

 ツイッターでは、ロンドン五輪期間中、陸上のウサイン・ボルト選手の200メートル優勝時などに書き込みが急増したとされ、スマホ片手にテレビの生中継を観戦する人が多かったことをうかがわせる。

 そのロンドン五輪真っ盛りの7月31日夜。ツイッター上に奇妙な盛り上がりが見られた。五輪中継のため休止となったテレビ東京系の経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」(月〜金曜後11・00)が、あたかも放送されているかのような感想コメントが飛び交った。

 ツイッターでは「ハッシュタグ」と呼ばれる検索語を設定すると、そのテーマに関する書き込みだけを表示することができる。この機能を利用し、ふだんWBSを見ながら感想などを話し合っている番組ファンたちが「仮想実況」を行っていたのだった。

 WBSでは、フェイスブックの公式ページやツイッターで、番組の出演者やスタッフが、放送内容の予告や取材の裏話をきめ細かく発信している。番組SNSを管理する同局ニュースセンターの山本名美副参事は「SNSで視聴者との関係が深まったことを実感できる。番組への意見も直接届くようにもなり、励みになっている」と話す。

 SNSを通じて番組に視聴者の意見を取り入れる試みも目立つ。BSフジの討論番組「ソーシャルTV ザ・コンパス」(土曜後9・00)は、フェイスブックで各回テーマへの意見を募ったり、生放送中のテレビ画面上にツイッター上のコメントを出したりと、SNSとの連携を強く意識した番組だ。コメントはスタッフが選択するが、画面には約40秒にわたって表示している。戸塚晶久プロデューサーは「SNSと付き合うからには、単に垂れ流すのではなく、ちゃんと向き合う必要がある。参加していることを実感できると、番組を見てもらう動機付けになる」と話す。

 一方、日本テレビは3月から、フェイスブックと連動した新しい視聴サービス「JoinTV(ジョインティービー)」を始めた。

 フェイスブックでは、他の会員を「友達」として登録すると、互いの最新動向が通知される。JoinTVでは、自分がその番組を見ていることが「友達」に通知されたり、放送中の番組のデータ放送画面に、同じ番組を見ている「友達」が顔写真付きで表示されたりする。

 別の場所にいながら一緒に番組を見ている感覚が楽しめるという狙いで、同局メディアマネジメント部の安藤聖泰主任は「友達同士で自由に情報がやり取りできるSNSの本質を生かした試み」と自負する。

 期待しているのはフェイスブックが持つ波及力だ。フェイスブックでは、自分が気に入ったもの、面白いものを仲間内に広める機能が充実している。「SNSの口コミ的な波及力が、番組の放送時視聴のきっかけになる」と安藤主任は話す。

 ただし、JoinTVが利用できるのは、まだ特定の番組放送時だけ。7月20日に映画「サマーウォーズ」、8月13〜17日に情報番組「PON!」(月〜金曜前10・25)など、月1回ペースで実施している。利用するには、テレビ受像機をインターネットに接続し、フェイスブック会員の「友達」同士がそれぞれJoinTVに事前登録するなど、さまざまな条件が必要なため、まだまだ利用者は少ないのが実情だ。

 各局とも、SNS活用の大きな狙いは、視聴者をリアルタイム視聴に呼び戻すことだが、他局のSNS担当者も「まだ視聴率に影響するほどではない」と漏らしている。

 一方、冒頭に紹介したWBSでは、番組内で具体的にネット発の意見を紹介しているわけではない。しかし、ネット上での積極的な情報発信が、番組ファンたちの連帯感を作り上げ、「仮想実況」につながった。人と人とがつながるSNSの輪の中に、テレビ局が積極的に加わっていくことで、局と視聴者との距離感が縮まり、視聴者が仲間意識を持つ。遠回りなようだが、それもリアルタイム視聴へのひとつの道なのかもしれない。


■VODサービス各局同調、放送時視聴への誘導が狙い

 放送済みの番組を専用テレビやスマートフォン(スマホ)上でいつでも見られる。それを売り物に、在京民放キー局5社と電通が4月、ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス「もっとTV」を始めた。CM収入の基となる放送時の視聴(リアルタイム視聴)を拡大したい民放局にとって、それと逆行するようなサービスのようにも見える。しかし、電通の担当者はこう語る。「過去の番組をVODで見てもらうことを通じて、リアルタイム視聴に引きこんでいきたい」。つまり、逆転の発想ということだ。

 各テレビ局は、パソコンやスマホ向けにVODサービスを独自に展開している。もっとTVは、各局のサービスを束ねたもので、専用のテレビや対応するスマホの画面上から、過去の番組を購入して、一定期間視聴することができる。7月からはNHKも参入し、見られる番組は1万本以上になった。なぜこのサービスがリアルタイム視聴を促すことになるのか。

 例えば、放送中の連続ドラマの初回を見逃しても、簡単に呼び出して視聴することができる。特に、もっとTVの強みは、テレビや録画機器の対応機種のリモコンに専用ボタンを設け、使い勝手を良くした点だ。このサービスを通じて、手軽に番組に触れる機会を持ってもらえば、その後の放送時に見てもらえるというわけだ。

 このほかにも、各局はVODサービスへの取り組みを強化している。フジテレビの「フジテレビオンデマンド」など、単年度黒字に転換するところも出てきている。ケーブルテレビなどが行うVODの中にも、各局のサービスが盛り込まれている。

 もっとTVは、各局が足並みをそろえて、いつでも好きな番組を見られる環境を整えたことになる。ただ、視聴者への浸透度は今ひとつだ。PR不足に加え、テレビの対応機器がパナソニック製の一部機種に限られているのがネックとなっているという。ある民放テレビ関係者は「各局が参加しているサービスなので、もっと浸透してもらわないと」と漏らす。

 一方、無料の民放番組に慣れてきた視聴者にとって、対価を支払ってまでVODを利用するメリットがあるのだろうか。ユーチューブなどインターネット上の無料動画配信サービスでは、放送済みのテレビ番組が大量に流れている。多くは違法だが、利用する人は少なくない。

 ただ、番組数がレンタル店以上に充実してきたことはVODの魅力だろう。店を往復する手間が省けて便利といえる。この点、有料視聴の浸透に手応えを感じる声も高まっている。

 スマホ向けに、国内外のテレビ番組、映画など計5万本以上の動画を配信しているビデオマーケット(東京都港区)の高橋利樹社長は「若い世代は、ネットを通じて、見たいものに対価を支払うことへの抵抗感がない」と分析する。

 同社の今年上半期の動画視聴ランキングによると、映画を含めたすべての番組中、連続ドラマ「SPEC」(TBS系)が3位、その特別編は2位に入った。また、昨年10月から放送され、最終回で視聴率40・0%(ビデオリサーチ、関東地区)を獲得した連続ドラマ「家政婦のミタ」(日本テレビ系)が6位となるなど、有料でもテレビ番組が十分視聴者に受け入れられていることが分かる。

 高橋社長は「視聴者はテレビへの興味は失っていない。テレビ番組に触れる機会を増やせば、放送時に番組を見る人は増えるはず。送り手、受け手双方にとって利益になる」と強調する。VODをうまく活用することで、テレビの楽しみ方は広がるだろう。


■録画視聴、CM効果低減…見たくなる作品の展開必要

 機器の普及で、録画視聴は着実に増えている。NHK放送文化研究所の調査によると、平日に録画視聴する人の割合は、2010年に11%に達し、10年前より4ポイント増となった。ただ、録画した番組を再生する際、多くの視聴者はCMを飛ばしがち。これは、スポンサーや広告業界にとって悩ましい問題だ。

 中島純一・同志社女子大教授(メディア・コミュニケーション論)は「好きな時に好きな番組を見られる時代、番組の途中にCMを流す方法はなじまない。バラエティーなどでよく見られる、興味をあおっておいて強引にCMを割り込ませる演出手法は、CM飛ばしに拍車をかけるだろう」と指摘。その上で「画面の一部に広告を流し続けるインターネットのバナー広告のような、新たな提示方法に取り組む時に来ているのではないか」と語る。

 だが、「CMによって得られる収入を柱とするテレビ局が長年培った手法を変えるのは容易でない」(民放キー局幹部)という声は根強い。録画視聴が広まる中、いかに視聴者をCMに引きつけるか。広告主の模索は始まっている。

 7月25日、通信会社のソフトバンクモバイルは、通信がつながりやすい「プラチナバンド」の運用開始に伴い、新聞各紙に人気グループSMAPが登場する新CMの予告広告を掲載。そのCMを同日夜、全キー局で一斉に放送した。

 さらに同社の人気CMシリーズ「白戸家」は、サントリーの缶コーヒー「BOSS」と連携した作品を制作するなど、様々な展開を工夫している。見たくなるCM、換言すれば録画視聴にも堪えられるCMを目指している。ソフトバンクの栗坂達郎マーケティング本部長は語る。「人は見たいものは飛ばさないし、見たくないものは飛ばす。当社のCMは相対的に飛ばされないはず」

 今見ることの意義を強く打ち出し、1回限りなど限定的な放送をするCMもある。セレクトショップのユナイテッドアローズは、恋愛映画のようなCMを3月2日深夜に地上波とBSでそれぞれ1回だけ放送。また、シューズメーカーのニューバランスジャパンは、全40話の物語仕立てのCMを1日1回1話ずつ放送して話題を集めた。

 家族の暮らしを影絵で表現した「LED10年カレンダー」が話題となった東芝の松本健一郎・国内広告担当部長も「CMは一つの文化。心に残る作品を作る必要がある」と断言する。

 ただ、短期間で広告効果を出す必要のあるCMの場合、いくら優れた作品を制作しても、録画視聴では効果が薄い。見るタイミングが放送時から大幅に遅れることが増えれば、CMによっては、出し方を変えなくてはいけないだろう。

 カップヌードルのCMなどが好評の日清食品ホールディングスの宮田博史・宣伝統括部課長は「作品として優れたCMを作るのは基本だが、一方で放送と同時に見てもらえる番組を、厳しく見極めることが求められるだろう」と話す。

 電通の「日本の広告費」によると、2011年のテレビ広告費は、前年比99・5%の1兆7237億円。東日本大震災の影響で前半は落ち込んだが、後半に上向いた。奥律哉・電通総研研究主席は「今年前半も通信、自動車などを中心に、堅調に推移している」と分析する。テレビCMへの期待は依然高い。

 インターネットが発達した今、ネットをきっかけに話題となるCMが目立つようになってきた。東日本大震災の影響でほとんど放送されなかったJR九州の九州新幹線全線開業CMが動画投稿サイトで盛り上がりを見せたのは、その好例だろう。新たな追い風が存在するのは事実。視聴環境が大きく変わる中、興味を持たれるCM展開はますます重要になってきそうだ。

























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