資産運用会社の役員の男性と妻の行方が分からなくなった事件で、警視庁は数人の男らが夫婦の遺体を埼玉県久喜市に埋めたとして死体遺棄の疑いで逮捕状を取り、このうち40代の男1人の身柄を沖縄県宮古島市内で確保しました。
この事件は先月、資産運用会社の役員を務めている霜見誠さん(51)と妻の美重さん(48)が東京・銀座のマンションを出たあと行方が分からなくなったもので、28日、埼玉県久喜市のさら地に男女の遺体が埋められているのが見つかりました。1人は夫の誠さんと確認され、もう1人は妻の美重さんとみられるということです。
これまでの調べによりますと、夫婦は先月7日、架空のパーティーに誘い出され、迎えに来た車に乗ったあと事件に巻き込まれたとみられています。警視庁はこの車が久喜市の現場近くに止まっているのを見つけ、さら地を掘り起こしたところ男女2人の遺体が見つかったということです。
警視庁は男ら数人が夫婦の遺体を埋めたとして死体遺棄の疑いで逮捕状を取り、このうち40代の男1人を29日、沖縄県の宮古島市内で確保しました。警視庁はほかにも数人が宮古島市などに逃げているとみて行方を捜査しています。
スイスに在住する霜見さん夫婦が一時、帰国したのは去年の11月下旬で、東京・銀座に所有するマンションに滞在していました。夫婦は先月7日、「知り合いから男性歌手が出演するパーティーに招待されたので栃木県日光市に行く」と会社の同僚に伝え、この日の夕方5時ごろ、愛犬と共にマンョンから出かける姿が防犯カメラに映っていました。しかし、パーティーが開かれた形跡はなく、2人は行方が分からなくなりました。夫婦は1週間後にはスイスに戻る予定で、航空券も購入していたということです。
行方が分からなくなったあと、JR東京駅ではマスク姿の男が夫婦のクレジットカードを使って新幹線の回数券およそ300万円分を購入しようとし、窓口の担当者がカード会社に照会しようとすると立ち去ったということです。さらに、夫婦の財布などが都内の質店に持ち込まれて換金されていたことも分かり、警視庁は事件に巻き込まれたとみて捜査していました。その結果、銀座のマンションから夫婦を乗せたとみられる車の所有者が埼玉県久喜市に土地を所有していることが分かり、近くから車も見つかたということです。このため、警視庁がさら地になっている土地を掘り起こしたところ、28日、深さ2メートル程の地中から男女2人の遺体が見つかったということです。1人は夫の誠さんと確認され、もう1人も妻の美重さんとみられるということで、警視庁が確認を急いでいます。
遺体が発見された現場のすぐ近くに住む70代の男性は「空き地の回りのついたては先月、作業服やスーツ姿の男性数人が作業をして1日か2日くらいであっという間に出来上がった。さらに近所の家の2階から見えないように上部をシートで覆っていた。様子がおかしいので土地の売買を仲介していた不動産会社に問い合わせるとすぐに40代の男性が私の自宅に来て『土地の調査をしています』と説明をして帰った」と話していました。
また、近くに住む70歳の女性は「先月、ついたての中に黒い大きなワンボックスカーが止まっているのを見て様子がおかしいなと思いました。中の様子は見えず、きのう、遺体の捜索が始まったと聞いて驚きました」と話していました。
霜見さん夫婦は東京の銀座や赤坂、それに千葉市などにマンションの部屋を複数所有する資産家だったということです。友人などによりますと、2人は車と犬が趣味で、フェラーリなどの高級外車を所有し、トイプードルなどの愛犬をかわいがっていました。また、都内にある会員制のボートクラブによく訪れていたほか、モナコでもボートを楽しむことがあり、趣味が多彩だったということです。
夫の霜見さんが勤めていた証券会社の元上司などによりますと、霜見さんは宮崎県高千穂町の出身で、熊本県内の大学を卒業したあと東京に本社がある証券会社に入社しました。証券会社では個人客への営業を担当し、その後、国際部に配属になってヨーロッパに赴任。スイスで顧客の開拓に当たりました。愛嬌があって顧客に好かれ、営業成績がよかったということです。そして、入社しておよそ10年後には先輩社員と共に独立して都内に事務所を構え、海外銘柄の株などを国内の客に売る仕事を始めましたが、客に何百万円もの損失を出すこともあったということです。4年ほど前にはスイスの隣のリヒテンシュタインに本社がある資産運用会社に移り、役員を務め、生活しているスイスと日本を行き来していたということです。
宮崎県高千穂町に住む誠さんの父親(76)は「娘から『身元が分かった』という連絡を受けましたが、何と答えていいか分かりません。ただただ抱きしめてやりたい。それぐらいしか言えません。小さいときから頑張り屋で、仕事ぶりを聞いて精一杯やっているなと思っていました。犯人には人の命をとって何の利益があるのかって言いたい」と話していました。
スイス在住の金融会社役員霜見誠さん(51)と、妻美重さん(48)とみられる遺体が埼玉県久喜市の空き地で見つかった事件で、警視庁捜査1課は29日、死体遺棄の疑いで、住所不定、職業不詳桑原隆明容疑者(41)を逃亡先の沖縄・宮古島で逮捕した。ほかに霜見さんの知人の会社役員(43)の逮捕状を取り、宮古島にいるとみて行方を捜査。事件に関わった人物がほかにもいた可能性があるとみて調べている。
司法解剖の結果、死因はいずれもひものようなもので首を絞められたことによる窒息死で、死後1〜2カ月とみられる。逮捕容疑は昨年12月7日ごろ、久喜市内で2人の遺体を遺棄した疑い。