迷いのない相撲を見せた。「角界の父」と慕った元横綱大鵬の納谷幸喜さんが亡くなって一夜明けたこの日の取組で、白鵬は簡単に魁聖を土俵に転がした。「1日で少し楽になった。気持ちよく相撲がとれた」。ほっと一息ついた。
体格で勝る相手に上手を与えず、立ち合いすぐに左前まわしを引く。抱きかかえるように右四つの体勢となると、即座に左の上手投げ。わずか2秒9で軍配が上がった。
納谷さんとは17日に言葉を交わしたばかりだった。前日は取組後に、遺体が安置された大嶽部屋を訪問。過去最多32回の優勝を誇る昭和の名横綱からは、ことあるごとに言葉を掛けられ、刺激をもらってきただけにショックは大きく「いろいろ考えました」と本音を漏らした。就寝前には少し酒を口にしたという。それでも土俵上ではしっかりと前を向き、満員の観客の前で力強い相撲を見せた。危なげない内容で相撲を取り続けており、北の湖理事長(元横綱)は「(全勝の)日馬富士も横一線と思っているのではないか」と評価する。
今場所は白鵬にとって、図らずも特別な思いのこもる場所となった。それを自覚するかのように「(納谷さんは)やっぱり国の宝ですからね。悲しいことだけど、しっかりそれを受け継ぎたい」。決意の言葉も聞かれた。
横綱日馬富士は臥牙丸を冷静に引き落とし、8戦全勝で勝ち越しを決めて単独トップを守った。
大関陣は稀勢の里が小結松鳳山を寄り切って2敗をキープ。琴欧洲は小結栃煌山を押し出し、琴奨菊は豊ノ島を突き落として、ともに5勝目を挙げた。鶴竜は関脇豪栄道に押し出されて3敗に後退。豪栄道と大関復帰を目指す関脇把瑠都は5勝3敗とした。
日馬富士を1敗で白鵬と平幕宝富士が追い、4人が2敗で続く。