Quantcast
Channel: Boo-HeeのHoppingブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2229

六本木集団襲撃事件、いびつな絆ー少年時代のつながりがゆがんだ形で温存された大人たち

$
0
0

■大人になりきれぬ集団「関東連合」

 東京・六本木の集団暴行死事件で20〜30代のOBら8人が逮捕された暴走族「関東連合」。その特徴を一言で表すと、「少年時代のつながりがゆがんだ形で温存された、大人になりきれなかった大人たち」となるだろう。昭和48年に東京都世田谷区や杉並区の暴走族の連合体として結成され、平成15年に解散。OBらは元横綱朝青龍や歌舞伎俳優の市川海老蔵さんなど、六本木周辺で発生した有名人をめぐる事件やトラブルで、たびたび登場してきた。

 暴力団と違い、組織としての実体がないにもかかわらず、電話一本でOBらが瞬く間に集まり、集団で襲撃に及ぶといういびつな「結束力」を生んだ背景には、彼らの世代の“特異性”があるようだ。

 関東連合で一時期リーダーを務め、今回逮捕された石元太一容疑者(31)の著書『不良録』によると、メンバーは現役当時、金属バットなどで武装し、対立グループの襲撃を繰り返していたという。

 1対1ではなく、集団で襲いかかり、時には相手を拉致して執拗に痛めつけ、精神的にも肉体的にも屈服させる。逮捕されたOBらの多くは引退して既に10年以上の歳月が経過しているが、金属バットを使い集団で暴行するその手口は、少年時代と全く同じだ。

 今回の襲撃を主導したとして逮捕状が出ている見立真一容疑者(33)は、引退後も現役時代の上下関係を保ち、暴走族時代からの対立グループと六本木周辺で抗争を継続してきた。殺害された藤本さんは、対立グループのリーダーに似ていたために、人違いで襲われたとみられている。

 芸能関係や飲食店経営などの自営業者が多く、振り込め詐欺などの違法行為に手を染める者もいる関東連合OBグループの根底には「仲間以外を容易に信じない」という排他性がある。

 若者の世代論などを研究するサントリー文化財団上席フェローの佐藤友美子さんは、グループが属する昭和50年代生まれの世代について「中高生のころに携帯電話などが普及し、不特定多数の他人とかかわるプロセスを経ずに育った。いわば『ロストプロセス世代』だ」と分析する。

 ロストプロセス世代は地元意識が強く、友人との「仲間内の論理」を何よりも優先する一方、他人への関心が極端に薄いという。仲間外れにされることを恐れ、人と違うことができず、「集団で同じことをする同質性」が特徴だ。

 周囲から孤立するほどに、仲間との絆にすがり、先鋭化していった関東連合OBの姿は、まさにロストプロセス世代の典型だ。「抗争を続けることこそ、仲間をつなぎとめる大事な要素なのだろう」。佐藤さんは、こう続けた。

 暴走族時代の「いびつな絆」を温存したまま大人になり、凶悪事件を引き起こした関東連合のOBたち。首都・東京の繁華街で暗躍する彼らの「闇」に迫る。


■時代が生んだモンスター

「『半グレ』なるものが暴力団に取って代わるという見方は、われわれはしていない。一過性のものにすぎないのではないか」

 警視庁幹部はこう語る。「半グレ」は「半分グレている」の略語で、既存の暴力団ではないが暴力的な犯罪を行う集団を意味する。六本木襲撃事件で逮捕された暴走族「関東連合」のOBグループに象徴される。

 改正暴力団対策法や暴力団排除条例の影響で、暴力団が表だった活動を控える代わりに台頭してきたとの見方もあるが、OBには現役の暴力団員も少なくない。ただ、既存の「組」への忠誠心は必ずしも強いとはいえず、「場面ごとに堅気と暴力団の顔を使い分けている」(捜査関係者)。

 暴力団という既存の「悪」と、持ちつ持たれつの関係を保ちつつ、仲間の存在感を拡大させようとする意識にこそ、彼らの「闇」の深さがうかがえる。

 そもそも関東連合のメンバーは、都内でも世田谷区や杉並区など比較的裕福な家庭が多く、教育熱心な地域で少年時代を過ごしている。貧困や差別など、生い立ちを理由に暴力団に足を踏み入れる必然性は低い。

 見立真一容疑者(33)が統率するのは昭和50年代生まれが中心の50人程度。多くが飲食業や不動産業などの正業を持つ。彼らの上の世代が渋谷や六本木などでクラブを経営し、若者向けのイベントを企画。遊び場をビジネスの場に変えた。

 こうした手法を引き継いだ現在のグループには、芸能界とのパイプもある。市川海老蔵さん暴行事件の現場に同席していた元リーダー、石元太一容疑者(31)の著書『不良録』では、過去に対立グループとの抗争で一般男性を暴行死させた事件で、芸能関係者の車を使用したことを打ち明けている。

 IT関連で富を築いた同世代の「ヒルズ族」も多く誕生。関東連合OBらは夜の街で、こうした実業家らとも交友関係を築き上げ、凶暴性だけでなく人脈の面でも、ほかのグループと一線を画すようになった。

 石元容疑者らが現役の暴走族だった平成10年前後は、全国的に少年事件が凶悪化したピークの時期と重なる。警察庁によると、12年に殺人や傷害致死などの容疑で逮捕された少年は201人で、うち7割で暴走族などが関係していた。

 警視庁は関東連合のOBグループの存在は把握しつつも、「すでに暴走族としての実体がない」(捜査関係者)ため、組織としては事実上野放しにしてきた。

 だが、海老蔵さん事件を機に本格的な実態解明に着手。組織犯罪対策特別捜査隊に専従班を設けて、メンバー構成などの洗い出しを進めていた。その結果、今回の襲撃事件でも実行犯の特定につながった。

「身元を確認しないまま集団で藤本亮介さんを殺害するなんて、普通じゃない。少年時代を引きずったまま社会に野放しにされた彼らは、時代が生んだモンスターとしかいいようがない」。警視庁関係者は、こうつぶやいた。


■ヤキ入れ恐怖心植え付ける “鉄”の上下関係

 正月気分がまだ抜けきらない今月上旬、六本木襲撃事件を捜査する警視庁麻布署捜査本部に、暴走族「関東連合」(解散)の関係者から「近いうちに、メンバーをまとめて出頭させる」という連絡が入った。

 言葉通りに10日、凶器準備集合容疑で逮捕状が出ていた男5人が、逃亡先の韓国から同じ便で羽田空港に到着。元リーダーの石元太一容疑者(31)ら国内にいた3人とともに、8人が逮捕された。翌11日には、さらに国内の7人が出頭し、逮捕者は計15人に。

 捜査幹部は「出頭の決断まで横並びとは。間違った絆と結束力だ」とあきれる。ただ、グループを統率していた主犯格の見立真一容疑者(33)は、いまだにフィリピンに潜伏しているとされ、ほかの2人も行方をくらませたままだ。

「いくつかある関東連合のOBグループで最も過激なのが見立容疑者のグループだったが、これでカリスマ性も失われるだろう」と捜査関係者は語る。

 見立容疑者は石元容疑者の3学年上のリーダーで、集団で抗争相手を金属バットで襲う手口を確立。後輩にも、ことあるごとにヤキ(制裁)を入れて恐怖心を植え付け、グループを束ねてきた。

 石元容疑者は著書『不良録』の中で、現役時代の心理状態を「集団心理と同調圧力」「警察に捕まったときに、初めてゆっくり眠れた。(中略)先輩からヤキを入れられることもない」などと表現している。

 見立容疑者を中心とした“鉄”の上下関係を成人後も保ち続けたOBグループ。関係者によると、今回逮捕されたメンバーの中には「絶対に捕まる」と襲撃への参加を渋った者もいたが、この時点では見立容疑者による「同調圧力」の呪縛から抜け出せなかった。

 捜査の焦点は今後、殺人容疑での立件に移るが、ハードルも高い。凶器が刃物などに比べて殺傷能力が低い金属バットで、覆面をしたまま殴っているため、誰が致命傷を与えたかを特定するのが困難だからだ。

 ただ、捜査関係者は「関東連合は、過去に何度も相手を金属バットで殴って死亡させている。こうした事実を踏まえれば、『殺すつもりはなかった』では通らない」と力を込める。

 襲撃事件のほかにも、石元容疑者らが関与する振り込め詐欺などの違法行為や暴力団員となった一部OBとのつながりなど、解明すべき「闇」は根深い。警視庁は事件に絡み、六本木でクラブ経営などを手がけ、OBグループの礎を築いたとされる40代の大物OBからも事情を聴くなど、グループの資金源についても追及の手を緩めない。

 暴走族からは足を洗い、暴力団でもないことから、事実上野放し状態だった関東連合は、襲撃事件で警察を本気にさせてしまった。

「今のOBグループが、10年後に存続していることはない。完全に悪事から足を洗うか、暴力団に吸収されるか。二つに一つだ」と警視庁幹部は断言した。


























Viewing all articles
Browse latest Browse all 2229

Trending Articles