サウジアラビアなどペルシャ湾岸の6か国で作るGCC=湾岸協力会議は、軍事面での連携を深めるため、各国の部隊による合同司令部を新たに設置する方針で一致し、核開発を続けるイランとの対決姿勢を鮮明にしました。
バーレーンの首都マナマで25日、サウジアラビアやUAE=アラブ首長国連邦など、GCC=湾岸協力会議に参加する6か国による首脳会議が開かれました。
この中で各国は、協力関係の強化に向け新たな地域共同体の発足を目指すことを確認したうえで、軍事面での連携を深めるため各国の部隊による合同司令部を新たに設置する方針で一致しました。
会議後の記者会見でバーレーンのハリド外相は「イランの脅威は深刻だ。核開発を推し進め、われわれの国内問題にも介入している」と述べ、一連の対応はイランを念頭に置いたものだと明らかにし対決姿勢を鮮明にしました。
湾岸諸国の多くは、イスラム教スンニ派が主体ですが、バーレーンやサウジアラビアではシーア派住民による反政府運動が続いており、各国政府はシーア派が多数を占めるイランが扇動していると批判を強めています。
一方、首脳会議に合わせてクウェートは来月、シリアの難民などを支援する会合を開催すると発表し、湾岸諸国が協力してイランと同盟関係にあるシリアのアサド政権の退陣を求める方針も確認しました。
会議では「アラブの春」後のイスラム原理主義勢力の台頭や散発する暴動にイランが関与しているという認識で一致。共同声明で加盟国の軍事協力で対応する必要性を強調し、共同声明で、統合軍事司令部の創設を検討する方針を示した。
統合司令部の創設は具体像の調整などに時間がかかるともいわれる。構想はイランへの牽制や加盟国の政情安定を狙うものだが、過度な軍事連携が進めば逆に地域情勢の火種となりかねず、国際社会の警戒感を招く可能性もある。
会議閉幕時に発表した共同声明は、イランが加盟国バーレーンなどの政情に継続的に介入し、反政府デモを激化させていると非難。「地域の緊張を高め、治安と安定性を脅かす行動・政策を即時停止する」よう求めた。
そのうえで「統合軍事司令部の創設を支持する」と明記した。司令部は各国の陸海空軍が共同で行動する際の「部隊編成、作戦計画」の立案と「指揮」にあたるものとし、これから詳細を検討する。
GCCは「半島の盾」の名の下に2003年のイラク戦争などの際、加盟国内に合同部隊を配備、活動した例がある。だが合同でつくる軍事司令部は各国の主張や体面も絡んでこれまで設置されなかった。
それが今回、統合司令部設置で合意した背景にはGCC側の危機感の高まりがある。ここへきてGCC指導層でイランの核の脅威への警戒感が一層強まる一方「アラブの春」の影響を受けたイスラム系組織が台頭することへの懸念が拡大。軍事面で共通の意思決定をする仕組みを探る意識が強まったようだ。専門家には統合司令部は「非常時に限り臨時設置」という性格の組織になるとの見方も出ている。
首脳会議の声明は内戦状態が続くシリア情勢にも言及。流血の事態が収束しないことに「深い悲しみ」を表明した。民主的な政権への早期移行を求めると同時に、国際社会の支援も求めた。